「メジャーの打法」~ブログ編

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メジャーの打法

2008年11月06日 | 打法

 黒人の打法について、以下のことを主張する。

黒人の打法は白人、カリビアンとは異なる特殊なもので、腸腰筋による後ろ側股関節屈曲で特徴づけることができる


 もちろんこれは一般論であって、腸腰筋を使わない打者もいる(マッコビーやジャクソンについて前言を翻すつもりはない)。使う使わないの比率は正直のところわからない。それでも迷わずこのように主張できるのはメイズの解釈を改めたからだ。


 これでやっとMLBの打撃技術についてかたる資格を得たと思う。このことを理解して初めて打撃技術史の全景を立体的に描きだすことができる。

 カリブの参入はMLBに激烈な競争をもたらした。アメリカ野球はあえてカリブの打法であるB型を受容することによって攻勢をむかえ、侵食を押しとどめたかに見えた。ところが同時に、このB型至上主義という諸刃の剣が黒人を一方の主役の座から引きずりおろしたのだ。白人だけでオールスターのホームラン・ダービーが競われ、T・ハンターが「黒人青少年の野球離れが進んでいる」と嘆くことになった。この異常な事態に至った経緯を上の仮説で説明できる。黒人は白人主導の打撃論の変遷になんとか折り合いをつけ、優越性をたもってきた。しかし、B型時代に入ってそれがかなわなくなったのだ。


 さらに、この主張が『メジャーの打法』最大のテーマとなった。ここ7、8年にわたって考えてきたことはすべてこのことを言うためだった。
 
 これまで独自に打法を分類することによってあの大変革を論じてきた。しかし、そんなものは子供の勉強であって、アメリカでは歴史的事実であり、もはや常識となっていることだろう。プロの指導者ならA型、B型の違いも当然認識しているはずだ。アトリーとマウアーの違いがわからずにメジャーのコーチがつとまるわけがない。
 黒人の動作様式についてかたるところから大人の時間がはじまる。実際に使っているはずの黒人選手も含めて、腸腰筋に対する認識はないのではないか? 打撃動作における白人と黒人の違いを明確に把握していれば、このような憂うべき事態に立ち至らなかったはずだ。21世紀の打撃論はここからスタートしなけらばならない。避けてとおることは許されない。


 MLBの打撃をかたる上で決定的に重要でありながら、この仮説には曖昧な点もおおい。すでに述べたように絶対則ではなく適用が限定的であることに加えて、そもそもこの動作が、キネマティックな情報からでは容易に判断できない、デリケートなものだからだ。さらに実践的検証によって、つまり、バットを振って自分のからだで確かめることをとおして、確信を深める必要があるだろう。



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