序章～リハーサル～其の弐

「TEST！TEST！」まだ開店前の薄暗い店内にスマイリーさんの声が響く。

いつものスタッフもまだ着替えも済んでおらず、夜な夜な遊びに来ている者に
とっては新鮮な雰囲気の大宮マッカーサー。

ドラムから順にミキサーセッティングをしていく。

いつもと違う機器類につまずくが、ここで特記すべきことはその音響の良さで
あろう。ベースを本格的に背負ってから３年、初めてベース音の醍醐味を味わ
えた気がする。あの響き感、高音域、また弾いてみたい。

普段の練習では耳鳴りがするファンキードラムも心地よく聞こえた。

私には緊張気味に見えたファンキーさんも徐々にノリ始め、ひとりでニヤついて
いたのを私は見逃さなかった。つくし氏のスネアでも良かったのかは不明だ。

リハ残り時間１０分で２曲半を合わせた後、楽屋へ向かう。

着替えを済ませ、次第に妙なテンションから自信が出てくる。
開き直っていたという方が近いだろうか。現にメリージェーンの不安は
楽譜をセットしただけで「何とかなるだろう」と、どこかへ行ってしまった。

開演１０分前、多くのオーディエンスが会場入りして来る。

楽屋のガラス窓から会場を眺め「いろんなことがあったがついにここまで来たか」
と振り返ると同時に演者モードにスイッチを切り替える。

そして・・

優しいSHOWHEYの眼が鋭く光り、サードが徐にボルサリーノを額にあてる。
既にフロアで存在感を放つスマイリーが微笑み、ポールポジションのCDEHが
５杯目を飲み干し、ファンキーのタイが羽ばたき始めそうな頃、いよいよ！

ステージへ・・・

次回、本章～オープニング～へ続く