すいーと雑記帳

とっこの独り言

またアフガンの「花と龍」・・中村哲さん講演2005年12月10日

2019-12-11 17:31:40 | 日録・雑感など

12月11日 WED  21℃

2005年12月10日に京都で行われた中村哲医師の講演を聞いた後の感想です。

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また「アフガンの花と龍」
2005年12月22日

12月10日、京都で毎年恒例となった「中村哲医師講演会」がありました。米軍によるアフガン報復攻撃の年、2001年冬に始まって今年で5回目になります。

中村哲さんの講演は、ご自分でもおっしゃっている通り、まさに「金太郎飴」、いつでもどこでも同じ顔。5回目ともなれば、話の大筋はもう耳にタコなのです。(質疑応答が一番面白い!) それなのに哲さんの講演は聞きに行かずにはおれない、毎回どこかに新しい発見、新しい感動があるので行って損をしたと思ったことが無い、それどころか素晴らしく元気が出る、世界の隅々まで急に見えてくるみたい、自分がどう生きたらいいのかまでわかるような気がする・・・摩訶不思議なものなのです。

今回、大感激したのは、「水路に沿って茂る柳並木」のスライド写真でした。

前々回(2003年)の講演で、大干ばつに苦しむ農村を救うためにインダス川支流のクナール川から水を引く水路建設を始められたこと、その護岸工事にコンクリートではなく、網の目のように根をしっかり張る柳の並木を植える計画だ、との話を聞きました。その時、私は「へえ、まるで夢のような話やなあ」と思い、報告にもそのように書きました。

なんと、その夢の一部が早くも実現した写真を見たのです! アフガニスタン東部山村で、予定14kmの用水路のうち9kmが仕上がり、すでに600ヘクタールの農地の灌漑が達成されたとの報告の中で見せてもらった写真です。本当に青々と豊かに茂った柳並木が、ゆったり流れる水路の岸辺に続いているではありませんか!すごい! 夢って実現するもんなんだ!!(な~んちゃってる私は実際には何もしてません、ただその光景を夢みながら細々とカンパをしているだけで・・。)

その水路工事の模様を中村さんは講演でも話されましたし、以下のように書いてもおられます。

「地元民、現地職員、日本からの有志が一体となり、文字通り泥まみれ、汗まみれで行われ、目前で砂漠化した田畑がよみがえってゆくのは、誰にとっても大きな喜びでした。

一木一草もなかった所に、生命が躍動する。帰ってきた難民たちの家々が水路沿いに立ち並び、子供たちや家畜が仲良く水浴びをし、主婦が洗濯をします。鳥やトンボが舞い、アメンボが水面を歩く。小魚が群れて泳ぎ、水辺には自然の水草と、4,5メートル以上にも成長した柳並木が陽に映えて鮮やかです。

一同大いに励まされ、工事は急速に進展しました。植樹は水辺に柳の木約5万本以上、確実に根をおろしています。・・(中略)・・

対照的に、米軍ヘリコプターや装甲車がけたたましく通過するのも日常になってしまいました。学校や道路建設などの「復興資金」をめぐって、醜いことがたくさん起きていることも見聞きしました。暴力とカネが虚構を以って世を圧する世界にあり、実のある自然の恩恵を以って対するのは、心ある者にとって一つの希望でもあります。

『ぼんやり眺めればただの荒野、涙をもって眺めれば流民の群、気力をもって見れば竹槍』(田中正造)ではありませんが、人災によって砂漠化した荒野の緑化を実現することによって日本の良心の気力を示し、事実を世に訴え続けたいと思っています。」(ペシャワール会・会報86号より)
講演の最後にいつものように、アフガニスタンの子供たちがニコニコ笑っているいい写真を見せてもらいました。貧しく、粗末な服を着て、遊び道具も何もなさそうなのに、何であんなにいい顔をしているのだろう、といつも不思議に思います。どの子も心底楽しくて仕方がない、という顔をしています。哲さんに言わせたら、「本来子どもというのはニコニコ楽しそうにしているもので、暗い不安げな顔をしている方がおかしい」と。まさにその通りです。


中村哲さん、いつも同じようなダークスーツに地味なネクタイで、ボ~ッとした印象の小柄なこのオジサンが、ヒョコヒョコと出てきて訥々と毎回同じことを言う、それがこんなに人の心を動かし力を与え、同じ日本人であることに誇りすら覚えさせる、その存在感というのはすごいものがあります。不思議な魅力です。

気概こそ溢れているけれど、冗談半分に堂々と「三無主義(無思想、無節操、無駄)!」を掲げておられるだけあって、説教臭いエラそうなことは一切言わない、正義漢面・慈善家面をしない、21年間ただただ黙々と愚直なまでにアフガニスタンで続けてこられた地道な活動に根ざして発言される、その眼力の鋭さはたいしたものです。大干ばつを引き起こしている地球温暖化問題から、アメリカの世界戦略、日本が今世界からどのように見られているか、平和の大切さ、憲法「改正」問題、教育問題、人間の豊かさとは何か、人間が最後まで大切にしなければならないのは何か等々・・・いろんなことの本質を、定点からスパッと正しく見抜いて語られる、という感じです。

その話を聞いていると、現在の日本がいかにとんでもなく危ういことになっているか、あらためて思い知らされると同時に、田中正造翁の「竹槍」は無理でも、あきらめずに、せめて「自分の手の届く範囲」くらいは何とかせなあかんかな、と思わせられます。

私と同じ1946年生まれの、この「アフガニスタンの花と龍」は、やはり凄い人です。中村哲さんにはどうしても元気で長生きしてもらわねば、と思います。「ペシャワール会」という強力な応援団はあるし、現地ワーカーの方々の大尽力はあるにしても、医療、病院経営、用水路建設、灌漑、農業技術援助、すべての活動は、この人の信念と胆力に負うところ絶大でしょうから・・・。

今後もアフガニスタンの地から日本をしっかり見据えて、半ば塞がったわれわれの眼をパッチリこじ開けてもらいたいものです。
                     (再掲以上)
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今日、福岡で中村哲さんの告別式が行われるそうです。ご自分でおっしゃっていたように「あと20年は活動を続けて」いただきたかったし、またお話を聞きたかった。返す返すも残念です。
カブールの空港で、アフガニスタン大統領自らが先生のご遺体を納めたお棺を担いでおられる映像を見ました。哲さんがアフガンで成し遂げられた仕事の大きさを象徴することでした。翻って日本の首相はじめ政府要人の動きは皆無に近い。情けないことだと思います。
哲先生、故郷でゆっくりなさってください。本当に有難うございました。

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