兎が自ら歌った謡
「サンパヤテレケ」
lsepo yaieyukar, “Sampaya terke"
サンパヤ テレケ
ニつの谷,三つの谷を飛び越え飛び越え
遊びながら兄様のあとをしたって山へ行きました.
毎日毎日兄様のあとへ行って見ると
人間が弩(いしゆみ)を仕掛けて置いてあるとその弩を兄様が
こわしてしまう,それを私は笑うのを
常としていたのでこの日また
行って見たら,ちっとも
思いがけない
兄様が弩にかかって泣き叫んでいる.
私はビックリして,兄様のそばへ
飛んで行ったら兄様は
泣きながら云うことには,
「これ弟よ,今これから
お前は走って行って
私たちの村の後へ着いたら
兄様が弩にかかったよ---,フォホホーイと
大声でよぶのだよ.」
私はきいて
ハイ,ハイ,と返辞をして,それから
二つの谷,三つの谷を飛び越え飛び越え
遊びながら来て
私たちの村の村後へ着きました.
そこではじめて兄様が私を使いによこしたことを
思い出しました,私は大声で叫び声を挙げようとしたが,
兄様が何を言って私を使によこしてあったのか
すっかり私は忘れていました.そこに立ちつくして
思い出そうとしたがどうしてもだめだ.
それからまた
二つの谷を越え三つの谷を越え
後へ逆飛び逆躍びしながら
兄様のいる所へ来て
見ると誰もいない.
兄様の血だけがそこらに附いていた.
(ここまでで話は外へ飛ぶ)
ケトカ ウォイウォイ ケトカ,ケトカ ウォイ ケトカ
毎日毎日私は山へ行って
人間が弩を仕掛けてあるのをこわして
それを面白がるのが常であった所が
ある日また,前の所に弩が仕掛けて
あると,その側に小さい蓬(よもぎ)の弩が
仕掛けてある,
私はそれを見ると
「こんな物,何にする物だろう.」
と思っておかしいので
ちょとそれに触って見た,直ぐに逃げようと
したら,思いがけなく,
その弩にいやという程はまってしまった.
逃げようともがけば
もがくほど,強くしめられるのでどうする事も
出来ないので,私は泣いて
いると,私の側へ何だか
飛んで来たので見るとそれは私の弟
であった.私はよろこんで,私たちの一族のものに
この事を知らせる様に言いつけてやったが
それからいくら待っても何の音もない.
私は泣いていると,私の側へ人の影があらわれた.
見ると,神の様な美しい人間の若者
二コニコして,私を取って,
どこかへ持って行った.見ると
大きな家の中が神の宝物で
ーぱいになっている.
彼の若者は火を焚いて,
大きな鍋を火にかけて,掛けてある刀を引き抜いて
私のからだを皮のままブツブツに切って
鍋一ぱいに入れそれから鍋の下へ頭を突き入れ突き入れ
火を焚きつけ出した.
どうかして逃げたいので私は人間の若者の隙を
ねらうけれども,人間の若者はちっとも私から
眼をはなさない.
「鍋が煮え立って私が煮えてしまったら,なんにも
ならないつまらない死方,悪い死方をしなければ
ならない.」と
思って人間の若者の油断を
ねらってねらって,やっとの事
一片の肉に自分を化(かわ)らして
立ち上る湯気に身を交えて鍋の椽に
上り,左の座へ飛び下りると直ぐに
戸外へ飛び出した,泣きながら
飛んで息を切らして逃げて来て
私の家へ着いて
ほんとうにあぶないことであったと胸撫で下した.
後ふりかえって見ると,
ただの人間,ただの若者とばかり
思っていたのはオキキリムイ,神の様な強い方
なのでありました.
ただの人間が仕掛けた弩だと思って
毎日毎日悪戯をしたのをオキキリムイ
は大そう怒って蓬の小弩で
私を殺そうとしたのだが,私も
ただの身分の軽い神でもないのに,つまらない死方,
悪い死方をしたら,私の親類のもの共も,困り惑うであろう
事を不欄に思って下されて
おかげで,私が逃げても追いかけなかった
のでありました.
それから,前には,兎は
鹿ほども体の大きなものであったが,
この様な悪戯を私がしたために
オキキリムイの一つの肉片ほど小さくなったのです.
これからの私たちの仲間はみんなこの位の
からだになるのであろう.
これからの兎たちよ,決していたずらをしなさるな.
と,兎の首領が子供等を教えて死にました.
okayash ruwe ne.
Tewano okai autarihi,opittano,enepakno
okai kunii ne nangor.
Tewanookai lsepoutar,itekki irara yan.
ari lsepotono poutari pashkuma wa onne.
「十勝の活性化を考える会」会員 K
写真:「十勝の活性化を考える会」会員 S