赤いひと

その翌日である木曜日は、昨日の出来事の報告に忙しい私である。
そんな中、昨日面接にやってきた人の履歴書を見ていて、節子さんが素っ頓狂な声をあげた。
「私、このひと知ってる！！」と。
まぁ、狭い世の中なので、知っている人が面接に来たとて、そんなに珍しいことでもないのだが、確率的にはそんなに高い確率のことでもない。
昨日やってきたひとは、６０くらいの女性。
そういえば、面接時に節子さんが住んでいるxx町にすんでいたことがある、と言っていたなぁ、と思い出す。
そのことを節子さんに告げると
「そうやろう？絶対見たことあるもん。でも、それがどこでどう知り合った人だったのかが思い出せんわ・・」と苦々しそうに言う。
しばらく悶々としたのち、節子さんはあることを思いついた。
近所の友だちに確認してみることにしたのだ。
その友だちは、かなり記憶力がいいひとらしい。
メールで節子さんが尋ねると
＜ああ、あの赤いひとね。＞
と、返ってきた。
節子さんが、
「赤い人ってどんなひとやと思う？」と私に尋ねるので
「そりゃまあ、派手だとか、激しいとか、そういうタイプってことじゃないですか」とありきたりな答えをする。
昨日、来たときって派手な感じだった？かと問われたので、そういわれたらそんな感じもするし、普通といえば普通だし。と曖昧に答える私。
すると突如節子さんが
「あー！！思い出した！！こどもが低学年のころに子供会で会長さんをやってたひとや！」と叫ぶ。
「じゃ、赤いひとってどんな感じだったわけですか？」とすかさず聞けば
「とにかく派手で、高飛車にものを言うし、こどもも妙なお殿様意識が強くて、自分の所はお金持ちだから、おまえら、オレに付いてこい！みたいな偉そうなことをいうこどもたちだったわ。ああ、思い出した。あの感じの悪いひとね。ふむふむ・・」
とひとり納得した節子さんだったが。

この元会長だった奥さんを、節子さんのともだちは「赤いひと」と表現したが、色の持つイメージは千差万別。
私を知る人は、私を何色と表現するのか、ちょっと気になったりして・・・