ときの備忘録

美貌録、としたいところだがあまりに顰蹙をかいそうなので、物忘れがひどくなってきた現状にあわせてこのタイトル。

母と息子

2007-09-12 | 砂時計
ドラマも映画も観ることはなかった。
ようやく図書館の予約が回ってきて読み始めた「東京タワー」
リリーフランキーという国籍不明のPNや、出版元が幻冬舎とどっこいそっこいの感がぬぐえない扶桑社ということもあって、わざわざ買って読むほどの本ではないのじゃないか、と勝手に決め込んでいた。
だが。
読んでみると、たしかに面白い。
年代的に、私と4つ5つくらいしか変わらないひとなので、そこここにあふれる昭和史が、頭の中に画像を結ぶ。
「チクロ、不二家のパラソルチョコ」といった昭和40年代のキーワードも懐かしい。

本を読み進むうちに、重ね合わせるのは、夫と姑、そして私と息子。
姑は、かなり、あっさりしている。
物、人、に対する執着が少ないひとだ。
夫は一人っ子の一人息子であるが、そんなことは微塵も感じないほどの親子関係である。
だからといって冷たいのか、といえばお互いそういうわけでもない。
そんな二人を見ていると、この「オカンとボク」に重なる部分は多いのだ。

転じて、私と息子。
これまたどうしたことか、一人っ子の一人息子であるが、夫と姑の関係とはまた違う。
かといって、世の中でパターンイメージされるような、
「xxちゃん、あれはいらないの?これはどう?」
と、粘着テープの関係でもない。
それどころか、よその家よりももっと希薄な関係である。
精神年齢が幼い息子は、夫のいないところではいまだになんだかんだと私に絡みたがるが、私の方が受け付けない。
体毛が濃くなり、私よりも一回りも二回りも大きくなった体躯の息子に興味がなくなった、といえるかもしれない。
そんな私なので、このオカンのように真なる「無償の愛」を注げるのか、と問われれば、即座に「NO!」と言ってしまいそうである。
オカンは、どんなに息子が自堕落な生活をしていようが、それを黙って受け入れ続ける。
私には絶対無理。
来年、運良く合格し、晴れて大学生になったとして、息子が「ボク」のような生活をし始めたら、私は絶対許さない。
仕送りは即、ストップ。
下手すれば中退させて、家に呼び戻すかも知れない。
無条件で、息子のしたいことを、息子のしたいように、自己犠牲を払ってまでも私はできない。
文中にあるように、母親が年老いてしょぼくれるというのは、こどもにありったけのエネルギーや愛情を注ぎ込んだ証、というなら私は年老いてころころ太ってさえいるかもしれない。
私が病の床でどんなにのたうちまわろうが、息子は歯牙にもかけないだろう。
それは、天に向かってはいた唾が、自分に落ちてくるようなものなのだ。

本を読み感動しつつ、それでいてこの親子とは大きな隔たりを感じる自分と息子の距離なのであった。


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6 コメント

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全く知らなかった (CITROEN)
2007-09-20 21:20:57
のですよ、リリーさん。
この本が売れ始めて、ナンシー関さんとの対談を読んだりして、勉強しました(笑)

ほんと、こまさんが言うように
「男独特のくだらなさ」が素直に描かれていて、おかしかったですよね。
リリーさんの物の見方とか、いろいろと共感を覚える部分が多い本でした。
このオカンのような剛胆な母親にはなれないけれど、
息子からここまで愛されるというのは、母親冥利につきるでしょうね。
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Unknown (こま)
2007-09-20 19:54:13
面白かったですよね~
リリーさんてテレビのまんまって感じだし
男独特のくだらなさとか面白さが出ていました。
確か部屋の机の上にオカンがティッシュを置いてくれたとか、でも性欲がないから使わなかったとか・笑
面白かったです。
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わかる、わかるよ! (CITROEN)
2007-09-14 21:55:03
Rocoさん、その気持ちわかるよー。
理想でもあるよね、あのオカンは。
あの本が、ひとを感動させるのは、たぶんハチャメチャな人生を送っていそうなひとが書いた究極のマザコン本だからじゃないかな。

確かにねー、私たちからあとの世代って、「愉しみ」を知ってるからね、自己犠牲の上に成り立たせる母の愛、ってのはあり得ん!ね。
Rocoさんも、いまさらジャニ抜きの生活なんて考えられんでしょ!(爆)
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そうねえ (Roco)
2007-09-14 20:24:06
私もあのオカンとは違うタイプだと思う・・・
だけど、
あこがれもあるんだよねえ。これこそ母!みたいな。
読んだとき号泣だったし。

だけど、時代背景もあるんじゃない?
自分は身を削ってでも子供に精一杯をする、って。
今はそのころより豊かだしさ、母達もそれなりの贅沢を知ってしまったし。
私も遊びほうけている息子、中退させる派です・・
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ようこそ! (CITROEN)
2007-09-13 18:47:04
matさん、初めまして。
男性の書き込みは初めてなので、ちょっと怪しい筋の方かしら?と身構えてしまいました。
が!
カッコイイブログをお持ちなんですね。
風景の切り取り方や、詩のような文章に引き込まれて、一気に拝見させていただきました。

東京は私にとって、とっても遠い縁のない街ですが、matさんのブログを通して、身近な街に感じられそうです。
私のブログは狭い世界での、ちまちましたものしかアップできませんが、よろしかったらまた遊びにお越しください。
こちらこそ、どうぞ宜しくお願いいたします。
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はじめまして (mat)
2007-09-12 23:44:55
初めて拝見いたしました。
ランダムブログとやらで漂着するように拝見したブログはとても独特の雰囲気と興味深い視点で、思わず見入ってしまいました。
これからも拝見していきたいと思います。
どうぞよろしくお願いします。
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