流行廃り

プチ同窓会だった。
高校の3年の時に同じクラスだったクラスメート6人で集う。
気の置けないメンバーなので、しゃべっていても本当に気楽。
会場に選んだのは、お気に入りの海辺のカフェ。
隠れ家のような雰囲気が好きで、誰かと会う、となるといつもここを選んでしまう。

中年のおばさんの集まりなので、わいわいがやがや、周りからすればはた迷惑なお客だったに違いないだろう。
だが、お店のスタッフの対応は、にこやかで感じの悪いものではなかった。
ただ一人を除いては。

年の頃で20代前半。
すらっと背が高く、アニメからでてきたかのような中性的な雰囲気をまとった美人の女の子。
何が気にくわないのか、むすっとしている。
何かをサービスしたり、汚れたお皿を片付けたりする際も、むすっとして不機嫌な顔をしている。
そういう顔立ちなのかもしれないが、なんだか本当に「感じが悪い」なぁ。
と、みんなでささやきあう。
お店の中は、老若男女、入れ替わり立ち替わり次々とお客さんが出入りするが、その不機嫌美女スタッフの表情はずっと変わらない。
むすっとメニューをつきだし、むすっとオーダーをうけてカウンターに戻る。
せっかくの美人が台無しだなぁ。

そんな話を、会社で節子さんにしていると。
「へぇ。そりゃ、接客業としては根本的な態度がなってないわね。」
と、同意してくれたが、さらに言葉が続く。
「でもさ、それって、その子が自分もそうされても平気ってことなんじゃないのかな？つまり、自分がお客さんの立場で、そういう態度で接客されても全然何とも思わないし、別に不快でもなんでもないから、自分が接客する立場になってもそういう態度をとるんじゃないかな。」
なるほど。
ま、過剰な営業スマイルはかえって不快感を与えることもある。
どうしましょうか、こうしましょうか、とお節介を焼かれすぎても鬱陶しい。
そういう意味で、彼女の接客態度というのは、必要最低限の業務をこなしているだけのことで、なんら責められたりすることはないのかもしれない。

でも。
くつろぎを売りにして、快適な空間を提供するはずのカフェで、その接客態度はやっぱりＮＧなんじゃないかな。
ほかのお客さんたちは何も感じないんだろうか。
それとも、こういうおしゃれな人の集まる高感度カフェでは、こんなスタッフのほうがスマートでカッコイイということになるんだろうか。
接客方法にも、流行廃りがあって、今の時代「おもてなし」のココロっていうのをこういう場所に求めるのはダサイってことなのかしらん。
なら、ベルトコンベアーで回る寿司のように運ぶか、ロボットにでも運んでもらっても同じじゃないの。
なんだか、体温の感じられないサービスって寒々しい、とオバサンは感じてしまうのだった。