ときの備忘録

美貌録、としたいところだがあまりに顰蹙をかいそうなので、物忘れがひどくなってきた現状にあわせてこのタイトル。

感謝のかたち

2009-04-11 | 砂時計
節子さんがやたらツイている。
去年の年末あたりから、なんだかんだ懸賞やら福引きによく当たるのだ。
最近では、なんとネスレドルチェグストまで当ててしまった。
当の本人は、それがどういうものなのかもよく分からぬまま、最近調子の悪いコーヒーメーカーの代わりになればいいだろう、というノリで応募した懸賞らしい。
届いてみて、まずその大きさにビックリ。
さらに、普通のコーヒーメーカーとは違う構造であることにビックリ。
さらに、さらに、コーヒーを淹れるためにそれ専用のカセットが必要であることにビックリ。
そしてさらに、さらに、さらに、そのカセットの一杯分の単価が50円「も」かかることにビックリ、したのだそうだ。
ランニングコストのことを考えると、おいそれとは使えないことを考えた節子さんは、せっかく当たったマシーンをどうしたものか、と考えた。
引っ越ししたばかりの息子さんたちに、プレゼントすることも考えた。
ところが、自然食に凝っているお嫁さん二号は、コーヒーは身体に悪いから、と家の中から一切排除してしまっているそうで、コーヒーマシーンなどはもってのほか、となるだろうと、贈ることはあきらめた。
かといって、ネットオークションもしたことのない節子さんには、ハードルが高すぎる。

そこで、ふと考えた節子さん。
このコーヒーマシーンが当たったのは、ひょっとしたらコーヒー好きだったご主人が当てたのではないのか?と。
生前、コーヒーが大好きだったご主人は、毎日お昼休みに喫茶店でコーヒーを飲んでいた。
その習慣は会社を辞めてからも変えられず、家族に内緒で毎日どこかの喫茶店でコーヒーを飲んでいた。
それをある日、息子さんに目撃され、お母さんである節子さんにバラされてしまった。
すべてに置いて、節約をモットーとする節子さんは、思わずご主人に言ったそうだ。
「なにもわざわざ喫茶店でコーヒーを飲まなくても、家で飲めばいいじゃない。」と。
自分の勝手で早期退職をしたご主人は、ささやかな楽しみを咎められていると思ったのか、口ごもって反論したそうだ。
「家で飲むコーヒーと、店で飲む珈琲は違うんだ。」

思わず、責め口調で問い詰めてしまったことを悔やんでいた節子さんは、毎日仏壇にレギュラーコーヒーをお供えしている。
だが、今回当たったコーヒーマシーンは、ひょっとしたら美味しい珈琲を飲みたい、という亡きご主人の思惑なのではないか、という気がしたのだそうだ。
なので、毎朝、とはいかないまでもご主人のための一杯を、ドルチェグストで淹れてあげよう、と思い直したのだとか・・

先日、危うく事故に遭いそうになったとき、からくも難を逃れた節子さん。
本人は、ご主人が守ってくれたのでは、という気がしたらしい。
本来、お姑さんの面倒をみるはずだった跡取りのお嫁さんが、離れてしまい、看るはずの無かった節子さんが、愚痴りながらもお姑さんの面倒を看ている。
ひょっとしたら、空の上からご主人が、節子さんに
「申し訳ない・・」と手を合わせているのかも。

昨日、金婚式を迎えられた天皇陛下は、皇后陛下に感謝状を、とおっしゃられた。
声を詰まらせながら、奥様である皇后陛下への感謝の気持ちをおっしゃる陛下のお姿は、どんな主義主張をもつものにも素直に心に響かせるものがあった。
節子さんが、ツイているその裏には、ご主人の節子さんに対する感謝がこめられているのかもしれない。

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2 コメント

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Unknown (アプリコット)
2009-04-12 08:14:29
こちらで節子さんのお話をよみ続けてどれくらい経ったでしょうか。
もうすっかり自分の知人のような気がしていましたが、今回のお話を読んで心にとても響きました。
節約のお話はおいといて(苦笑)節子さんのご主人への思いや周囲への感謝の気持ちは、私の周囲に居る人からは聞くことがないですし、私自身もそういう面が欠けている人間だなぁと実感させられます。
これまでの人生経験の賜物なのかも知れませんね。
上手く表現できなくてもどかしいのですが、意識できただけでも記事を読んだ意味があった気がします。
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嬉しい! (CITROEN)
2009-04-12 17:43:28
さすが、アプリコットさん。私の意図を汲み取っていただけて嬉しいです!
確かに、金銭的な部分や、教養的部分にちょっといらつくこともある節子さんなのですが、アプリコットさんがおっしゃるとおり、私も周りに居る人からそういうことを聞くことはないし、自分自身にも欠けていることで、反省したり考えさせられたりすることがよくあります。

奥さんが、身の回りに構わないことや、教養を身につけようとしないこと、亭主関白でいることに平気だったご主人のことを、私は密かに軽蔑していたところがありました。
でも、それは節子さんの口から見える部分だけであって、本当は節子さんが言うように、彼女を見守り感謝していたのかもしれないなぁ、という気がしてきています。
いろいろな夫婦の形がありますね。
いずれにせよ、お互いを大事に思い、尊重していく姿勢が大切なのだなぁ、って思いました。
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