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第一回、林業現場人(げんばじん)会議(10月5日開催)のまとめ。

2010年10月29日 13時21分02秒 | 日記
「林業現場人会議」レポート
I・J・Uターン者 森林・林業再生プランを語る

「杣径」編集担当(政野淳子)がまとめ。

10月5日、衆議院議員会館会議室にて「林業現場人会議」が開催された。
この会議は、小森胤樹さん(有限会社大原林産)がインターネット上の交流サイト「mixi」で誕生させた会議。「森林・林業再生プラン(以後、再生プラン)」の中間とりまとめを受け、渡辺真吾さん(緑化創造舎)、富岡達彦さん(下川町森林組合)ら会議のメンバーが呼びかけていわゆる「リアル会議」を実現した。北海道から岐阜まで16名(文末参照)が集い、林業ライターの赤堀楠雄さんを司会に意見交換を行った。メンバーの声がけで内閣府から国家戦略室の梶山恵司審議官も駆けつけた。

キャッチャーミットを作る
渡辺さんは、「森林組合改革、民間事業体育成、川下の流通確立、路網整備の基準作り、施行プランナーやフォレスターの導入などの方向性には賛同するが、それを『何のために』行うのかという点と、『どのように実効性を担保するか』という点が今までの議論からは見えにくかった。さまざまな違和感を持つ現場人たちが、国任せ、有識者任せにするのではなく、各地域から論点を持ち合って議論することにしようと集まった」と述べる。
また、富岡さんは、「再生プランは、全国の人工林1000万ha間伐で、5000万立法の木材を搬出し、木材自給率を50%にする。新成長戦略として、経済活性化と雇用の拡大を目指す。森林の集約化・団地化を図り、森林経営を持続可能な資源管理へと誘導する。そのために、全国の森林を44大流域、158中流域・各地方小流域という管理を行い、適正管理を図るために「フォレスター・プランナー」を配置するものだ」ととらえ、「この再生プランをどう有効に使うかと考えた方が得策。森林の役割と山村の活性化を考え、地域の活力を上げていくことが、大きな球である再生プランを受け止めるキャッチャーミットになるはず」と意義を述べた。
現場人の多くは、「I」「J」「U」ターン者で、「業界団体や経営者、有識者から(再生プランへ)の提言は随所で行われきたが、現場サイドから、仕事を休んで自腹で行う、この勝手さ加減がとても有意義(笑)」と肩の力が抜けている。
しかし、「日本の国土の約20%を占める人工林が植林後50年の時期を経て、資源が蓄積され、その森林を健全に保つためには、森林蓄積から間伐による4000万立米の材木の搬出が可能であり必要でもある。その現状を踏まえ、経営的に遅れた林業をある種のビジネスチャンスともとらえて構造的に大鉈を振るおう、という趣旨のもの」(渡辺さん)と正面からとらえている。個々の現場人達からは以下のようなさまざまな論点が提示された。

【再生プランのとらえ方】
・ 林業が難しいのは地域には多様性があることで、それを政策としてまとめ、柔軟性を持たせるのは難しい。改正点はどんどん出てくる。どうせならいい球を受け取りたいから提案をしよう。
・ 民有林は人間関係の上に成り立っている。はいこれまでよ、と再生プランにスライドさせることはできない。地域にあった形に組み替え、持続可能な山村地域と資源循環を、国がやろうとしていることとマッチさせていく必要がある。

【地域の視点】
・ 林業を復興したいが、林業だけの復興は田舎ではありえない。
・ 団地化という場合、地域の人から信頼を得ないと山は任せてもらえない。顔が見えるからこそ施業を任されるのが地域。見くびるべからず。
・ 補助体系を大規模集約化の面積で一律に区切ると、地域の人材、リソースがやる気があっても成り立たなくなおそれが過分にある。どこかで線引きは必要だが、たとえば数百haの規模が必須条件とすれば、数十haの集約化施業地は補助金上0カウントとなり、小規模でもやる気のある人たちは退場するしかなくなる。
・ 保育、育林でどう雇用につなげるかなど、いろいろなことをやれる人が地域に貯まっていくことが重要。
・ 集約化、プランナー、フォレスターと言われる前から、地域で自発的に取り組んできた側面がある。国が明確に縛り過ぎると、民間の活力が削がれて窮屈になるおそれがある。
・ 地域がよくならなければ森林だけよくなるということはありえない。

【自伐林家の視点】
・ 効率化の姿勢が強いが、林業は「地域で生活する人材」を育てる意義もある。特に小規模の自伐林家が林業経営できる仕組みが必要ではないか。兼業林家の形で経営を度外視しながら地域の山を守ってきた、小規模自伐林家が成り立たなくなる制度は許せない。
・ 林野庁は近隣を集約化してくださいという考え、県からも小規模、中規模の林家は集約化をしてくださいと説明がある。しかし、自伐林家は地域を形成している人たち。兼業では集約化なんてやっている暇はない。それを制度で殺してしまうのはあってはならない。

【それぞれの現状、懸念】
・ 再生プランでは「利用期に達している」と書かれているが、まだ達していないか、利用期を過ぎてしまった。資源が充実しているという実感は薄い。広葉樹は多く、針葉樹もすべての樹種がある。令級もバラバラ、目指す森林の姿ではあるが、見事にお金にならない。その中で一本一本の木を山から出す林業技術は必要だと考える。
・ 施業集約、路網整備は進めるが、高性能林業機械で安く大量に供給することによる山への負荷への危惧がある。
・ 機械化して搬出能力を上げて効率化することだけを考えると、逆に雇用が減る。地域は木材資源だけを供給し、地域資源が収奪されて終わる結果にはならないか。諏訪地域は日本人口で言えば500分の1都市。日本の木材消費1億立米で自給率50%と換算すると5000万立米。200日で搬出すると10社50人で一人あたり年間1立米の計算。
・ 小規模林業事業体の経営にとって、民有林の施業受託面積は狭く、国有林では入札で落札が困難。地元に暮らす人間が地元の山を守っていくことが大事だと考えるが、中には土木業者が予定価格の50%60%で落として、外人を連れてきて安く施業するところが現れ、店じまいを迫られる事業体もある。
・ 人工林はすべてカラマツでブル集材、それより上は切り捨て間伐で補助金を受け隙間産業的にやっている。公共事業はくじ引きのようなもので、森林組合は、財産区、国有林でやっている。民有林(の事業体)は、集約化せず小さな面積で一個一個虫食い状態でやっている。急激に制度が変わると、来年から仕事がなくなる可能性がある。
・ 川下側からの視線「森林の工業化」。木材の大量安定供給・木材価格の据え置き・川上側へのコスト削減要求だけでは、再生プランにはなりえない。また、川下の小規模工場も淘汰される危険性を孕む。儲かるのは補助が入る川下の大規模工場だけとならないか。

【フォレスター、プランナーを誰が担うか】
・ フォレスターの役割を誰が担えるか。AGや市町村職員では、現行の延長では限界がある。フォレスター制度が始まれば、地域を周知している事業体等が、フォレスターを全力で支えなければ、地域の山は後退する。県や市町村の運用方法が鍵。またフォレスターの「質」に地域林業は影響を受ける。どこの地域もいいフォレスターが欲しい。癒着なども生じる可能性があるかもしれない。
・ 現場から組合を作りなおし、プランナーを森林組合が担い、地域で探るしかない。
・ 施業プランと施業の実行を分けて欲しくない。たとえば森林組合が施業プランで民間が施業の実行だとゾーニングありきになって欲しくない。組合以外にも門戸を閉ざさず、自発的にやりたい人がやるのが一番いい。
・ 手法や金を国が出し、市町村が窓口、目的と共通理念を作るのは地域か。
・ 地場の森林事情に精通している現場人を底上げして、フォレスター・プランナーを養成して行くことが、近道ではないか。

【森林組合との関係】
・ 民間事業体は、同じ条件での競争にならず、ただの下請けになる恐れがある。
・ 森林組合を広域化したらあっというまに空洞化した。
・ 単なる事業体になっている。町有林を全部請け負っている。
・ 労働環境を見ると、作業人は子ども二人で12万なんて最低賃金労働。補助金が入る以上は透明化しないと。班長レベルが押さえている場合もある。
・ 森林組合が不在となれば、放っておけば山師の世界になる。自由経済と森林のバランスをどう取るか。決算期間の長い仕事に相応しい制度設計に作り直す必要がある。
・ 民間事業体がやらないところ(不採算、危険、赤字)を賄っている現実もある。
・ 森林所有者の協同組合としての活性化は急務だが、組合員ではない所有者も再生プランからこぼれおちないように思慮が必要。森林組合が既得権益にぶら下がることがない仕組みが不可欠。国は補助金制度の適正化と、会計検査の簡素化が必要。

【提案】
・ 放置林には何らかの形で、ペナルティ又は適正管理のインセンティブが必要ではないか。
・ 森林を整備する上で一番時間と労力がかかるのは、境界確認と集約化。土地によっては数反単位の集約化は、少ない人数のアプローチではやりきれない。やりやすいところ以外は手付かずとなる恐れがある。
・ 集約化には国有林の存在を外して考えてはならない。地域小流域の森林集約・団地化には国有林も含まれる。とりわけ北海道は国有林天国。
・ 適正な森林管理のために年間4000立米の伐採が必要(可能)だというが、どのくらいの年月の話なのかが見えない。どの地点で植林等の育林を考えていくのか、森林をどのように更新していくのかについて、再生プランでは触れられていない。
・ 造林はどうするのか、植栽更新か天然下種更新か、育林保育はどうするのかまでを包含して再生プランに盛り込まれないと、日本経済の一時しのぎ政策によって、日本の森林はまたもや収奪されて、荒廃を招く懸念がある。

【梶山審議官コメント】
現場人からの各論点に対し、梶山審議官は次のようなコメントを述べた。
・ 再生プランは、国の財源がなくなっている状況下で、将来につなげる森林管理に最小限必要な取組である。
・ 林業と地域の問題を現実には切り離せないが、政策としては切り離し、林業は地域の核となりうるという認識のもと、再生プランでは林業に特化する。
・ 森林組合は森林組合が森林簿を公開するだけではイコールフッティングにならない。集約化しなければ補助金を出さない。員外利用は計画を立ててのみ可能とした。
・ 自伐林家については大規模(数百ha以上)は自分の所有林のみで経営計画を立てられる。中規模、小規模については林野庁が共同化をと考えているが、個人的には悩ましい。
・ 木材自給率50%は4000m3という適正な森林管理に必要な量からの逆算。
・ 更新は、技術開発が必要な分野。植林か天然更新かは技術的に効率的な手法が見えていない今後の課題。
・ 小規模製材工場の必要性が言われているが経営努力が欠如。地域に必要との自覚があるなら、品質への対応、マーケティング努力が必要。
・ 林業が動けば周辺業種にも波及し雇用は増えるはずだ。

これに対し、「山を壊すことは許さないという思いは共有できたが、現場人側の意見が「地域生活者」の視点からの意見だったのに対し、梶山さんは分けて考え、その点が今回の再生プランに欠落している点だ」と渡辺さんは指摘。一方、富岡さんは「梶山さんはリアルな森林現場イメージを共有したいのではないか」と出席を評価した。意見交換を通し、現場人たちは会議での論点を次のように集約した。

【林業現場人会議まとめ】
・ 地域生活者の立ち居位置から林業は分離できない。それを踏まえた制度設計であるべきだ。
・ 制度変革を行うとき、その制度の網の目、線引きにより零れ落ちてしまうやる気のある個人や事業体を、切り捨てることは避けるべきだ。
・ どんな制度が国で決められようとも、それを受け止める地域のキャッチャーミットが機能しなければ無理で、林業現場人会議は、各地域でのキャッチャーミットを大きく、網の目を細かくするためにさまざまな試みを今後発信していきたい。
・ 国と地域は対立関係ではなく、補完関係の方向性をボトムから模索していきたい。
・ 中央に発信するだけではなく、むしろ地域で孤軍奮闘している現場人たちにいかにこういう勝手な取り組みが届くかを念頭において発信していきたい。

参加した林業現場人(順不同、敬称略)
●小池耕太郎 緑化創造舎 主任 長野県林業士
音楽やイベントで暮らしていこうと思っていたが、3年前に誘われるまま林業を始める。昨年は仲間の協力のもと、地元区有林を団地化し、今年から整備を開始。地元の山に価値を創出するためにも、山からの発想で地域に関わり、積極的に地域に巻き込まれて行こうと考えている。現在29歳。
●渡辺真吾 緑化創造舎 主任 長野県林業士
7年半前、アジアの旅先で出会った野口拓に誘われ、東京から長野県原村に移り、林業に参加。自分たちの信じる山造り、人造りの先に、地域の底力を呼び起こす、新しい価値観の創出があるのではないか、というような事を、汗を流し、地域にまみれながら探っている。現在34歳。
●富岡達彦 北海道下川町森林組合 森林管理業務部 森林保育管理班長(大径木伐木士・北海道知事認定高性能林業機械オペレーター)
北海道産炭地生まれ。閉山後(昭和47年)東京にて、日本国有鉄道・京王帝都電鉄(現、京王電鉄)で勤務。地球サミット以降、日本の森林事情に触れて97年に退職。下川町へ「J」ターン移住。現場一筋14年。今の時代に必要な林業とは?循環できる森林資源とどう付き合うか?持続可能な山村社会とはどんな仕組みか?現在進行形で悩みながら森林(ヤマ)に抱かれて活きる!と青臭いことを真面目に語る46歳。椴熊達の芸名で地域FMのDJも。
●小森胤樹 有限会社大原林産 専務
39歳 大阪府吹田市出身。関西大学大学院工学研究科卒。5年間、臨床検査機器メーカーにて糖尿病の診断薬の研究開発の仕事に従事。30を過ぎ、自分が本当に何をこの先、して行きたいのか考え、出した結論が日本の森林を守って行きたいということ。まず林業の現場で働き技術を身につけつつ、自分に何ができるのか、何をすべきなのか模索中。現場で働きはじめ9年目。
●佐野豊和 有限会社木成
4代に渡り持続可能な林業経営を続ける家業に合流し、3度目の冬を迎える。木成は林業の他、アウトドアツアーを主とする観光業、自ら育てた安全な野菜を使ったレストラン、駿河湾にて桜エビ漁という4部門から成る。森から農、川から海、流域の始まりから終わりまで各フィールドで、第一次産業を有機的に連携させ、21世紀型のビジネスモデルを体現し続けたい。
●鈴木浩之 川根本町 静岡県川根本町役場産業課林業室係長
平成19年から町林業行政を担当。川根本町FSC森林認証グループ「F-net大井川」事務局、林業および木材利用を担当。地場産業である「茶」(川根茶)と関係が深いスギ製の「茶箱」に思い入れがある。
●杉山要 要林産代表
●野口拓 緑化創造舎代表
その他、香山由人(企業組合山仕事創造舎 代表理事)、熊崎一也(信州樵工房代 表取締役)、浜田久美子(ライター)などオブザーバーを含む他5名が参加した。 

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