名将と言われる顧問の先生、その功績たるや、戦績もさることながら、教え子の皆が尊敬と感謝の念を抱き、人生の師と仰ぐ人格者。
そんな偉大な先生の後任になってしまったら、、、
次男くんが野球部でお世話になったA先生との出会いが中学2年の時、担任のB先生は学校一恐いと名高い体育教師かつ生徒指導の学年主任、先生が廊下を歩けば、教授の回診かの如く生徒が廊下の両サイドに寄って一礼する(実際にはそんな事はなく、私の勝手なイメージです)、そんな雰囲気を醸し出している存在感抜群の先生でした。
そんな皆が恐るB先生、何の部活の顧問かと言うと、ほぼ初心者であろう生徒が集まる陸上部。
これが地区大会ではほぼ表彰台を独占し、卒業後は陸上強豪校に進学すると、インターハイで名を連ねるようになるのですから、本当に不思議で、一体どんな指導をしているのか周りの陸上部も興味津々です。
次男くんがそんな強面先生のクラスで緊張の日々を送っていた頃、あーちゃん小学6年生にて、所属していたスポーツクラブの推薦で小学生陸上大会に出場する事になりました。
それまで毎年リレー選手ではあったものの、陸上競技とは全く無縁です。
エントリーしたのは100mと走り幅跳びの2種目。
やったことないのに大丈夫か?
半信半疑で予選を見守ると、なんと2種目とも決勝に残ってしまいました。
あーちゃん、100m走り終わって戻ってくると、
「ママ、みんなスパイクで走ってた。スニーカーはあーちゃんだけやった」
…あ、、スパイク…
陸上部素人の私は、なんの疑いもなくいつも履いてるいつもの靴で参加させていました。
ノーマルシューズで県大会の決勝に残るあなた何者??
決勝は翌週。
スパイク、どうする?買う?
スポーツショップで野球のスパイクなら何度も見てきたけど、陸上のスパイクコーナーなんて完全スルーしてたからなぁ。。。
陸上やってる知り合いもいないし。
「中学になったら陸上部入るけん、スパイク買って~。。。」
「えっ?あーちゃん陸上部入るの?それ決定?もう変わらない?」
超負けず嫌い故に、勝ちたいから適当に言ってるんじゃないの?と思わなくもなかったのですが、お兄ちゃん達中学校の運動会で目の当たりにする陸上部のごぼう抜き圧倒的強さ。この運動会の花形というべきリレーで自分も歓声を浴びたい!度々そう話していました。
意志は堅そう。
という事で、店員さんにいろいろ説明を受けて購入。
でも、ただスパイク履いて走れば良いというだけではない事は、決勝に残ったメンバーのユニフォームから見ても分かりました。皆陸上クラブに所属しているチームのカラフルな専用ユニフォームなのですから。
片やあーちゃん、体操服とスニーカー
県大会の初舞台で少しでも良い成績を残してあげたい…そう思った矢先に 閃いた!
「次男くん、お願いがあるんだけど…。。。」
「えーーーー、嫌やし。先生に話しかけるのめちゃくちゃ緊張するし、気安く声かけられる雰囲気の時なかなか無いんよ」
「なんで?担任でしょ?毎日顔合わせるやん?」
「お母さんは知らんけんそんな事言えるったい。新人戦前やし、えーーー、無理無理無理!絶対無理!」
と、拒否られはしましたが、そんなビビりでどうする!と母の圧の方が勝り、陸上部の名将に1日体験入部を懇願させていただきました。
そんな厚かましいお願いする保護者、いないよね、次男くんよく言えた!と今振り返ると、、です。
先生もよく引き受けてくださいました。
そして仕事を早退して新品のスパイクを手に中学校のグランドに向かう。
野球部で見慣れているグランドも、今日は陸上部目線で活動エリアを探し、
慣れないな、とソワソワしているところへ野球部のA先生に見つかり、かくかくしかじか説明。あーちゃんもペコっと挨拶をし、いざ陸上部の元へ!
B先生に手ほどきを受け、ひとまず慣らしで先輩達と一緒にダッシュしてみる。
横二列に並んでウォーミングアップです。
数本ダッシュしたらそろそろタイム計ろうか、とタイムキーパー係の先輩がゴールラインにスタンバイ。
クラウチングスタートでいざ!
ウォーミングアップの慣らしとは違い、今度は本気モードです。
そして。。。
あ、、、、
あーちゃん、、先輩を…抜いてしまった・・・
現場に妙な空気が流れます・・・
B監督「おぉ!いい走りやな~」
二本目、三本目はあーちゃんもへへ~んっ!速いでしょ!と得意げでしたが、
時は新人戦前。先輩方のモチベーションにも関わってくるので、
「B先生、大会前の貴重なお時間、調整いただきありがとうございました。
勘は掴めたようなので、この辺で・・・」
丁重にお礼を述べると、スタートフォームや走り方について軽くアドバイスを受け、
「来年待っとるからな!!」
想定をはるかに超える存在感抜群なB先生の門を叩いた以上、入部は必須となりました。
そして、迎えた4月。蓋を開けてみると、新入部員女子は3名。男子は4名。
陸上部は大変らしい…との噂が先行して、年々部員が減っていました。
夏の中体連が終わり、3年生が引退すると、顧問のB先生、持病が悪化し、治療に専念する為に入院されることになり、、、担任を持たず、部活も副顧問の先生メインで、なかなか直接指導を受けられるチャンスがないまま、とうとうB先生、顧問を外れる事になりました。
さぁ困った。
強くなれると信じて集まった部員たち。
副顧問の先生は元々サッカー経験者ゆえにサッカー部の顧問をしたかった、、という噂通り、部活の時の出立ちはまるでサッカー選手。
顧問がいないと練習はできないので、カバーし合える2人体制でなければなりません。
ようやく顧問が決まったので保護者会を開きます、そんな連絡をもらったのは、夏休みが終わり、2学期が始まる頃でした。
名将の後を任された先生、名将と言われる部を引き受けてくれた先生、どんな先生かしら?と保護者会の会場に入ると、、、
「陸上部は素人ですが、僕なりになんとか頑張ります」
その年の4月に赴任されてきたばかりの若いC先生は、社会の先生で、きっとほんとは野球部顧問が良かったんだろうなぁ、、と感じざるを得ないアーマーのアンダーシャツの上にトレーニングウェアを着てトーン低めに挨拶をされました。
それでも部の存続の為に、生徒の為に?顧問になっていただきありがとうございますと皆で必死に持ち上げて、、、
「ちゃんと真面目に練習している人を評価します」
最初の挨拶に加えて宣言されました。
顧問が変わると、次はどんな顧問なのか?どんな方針なのか?と最初は手探りで観察します。
そしてこれまでとの違いに戸惑い、前はこうだった、これまではこうしていた、と詰め寄る場面が多々あり、また顧問も前はそうだったかもしれないが、自分のやり方はこうなん
だ!と主張します。
これが、名将の後任となると、更に輪をかけて保護者をも巻き込む大問題に発展します。
こと、2年生の保護者にとっては、それこそ話がちがーう!という状況。
そんなこんなで幾度となく保護者会が開かれ、その都度紛糾し、C先生も随分悩まれているようでした。
顧問を辞めると言い出すのではないか?そんな事もよぎるようになり、私は当時野球部で同じ局面に遭遇し、その難局を乗り越えてこられたA先生に相談します。
1年生のあーちゃんの担任が、それこそA先生だったというのも偶然では無かったのかもしれません。
「A先生が野球部顧問になった頃の覚悟、そして築き上げてきた生徒との関係性、その辺りで一番C先生の気持ちに共感し、寄り添えるのは先生しかいないと思うんです。話聞いてあげてください。陸上部活動出来なくなるのは避けたいんです!」
そんな紆余曲折を経て、何とか部の存続は保たれつつ、副部長になったあーちゃん中2の夏。
競技場練習の為、車出しで対応した日、午前練にて迎えは他のお母さんが担当してくれました。
のんびりお昼ご飯の準備をしていたら、スマホが鳴り、
「もしもし?今さ、〇〇陸上競技場来てるんだけど、あの子らおらんのやけど!?」
えっ??どう言う事?
時間間違った?
誰かの車に乗って帰ったん?
……続く
体操服で参戦した結果
世界陸上も始まりましたね。
やはりリレーが楽しみです