goo blog サービス終了のお知らせ 

世界一面白いミュージカルの作り方

早稲田発小劇場系ミュージカルプロデュースユニットTipTapのブログです。
HP≫www.tiptap.jp

ミュージカル部門 演出賞 振り付け賞

2013-05-13 01:57:22 | トニー賞
今日はミュージカル部門の演出賞からお伝えします。

今年のノミネートは

Scott Ellis 「The Mystery of Edwin Drood」

Jerry Mitchell 「Kinky Boots」

Diane Paulus 「Pippin」

Matthew Warchus 「Matilda」

演出賞は新作、リヴァイヴァル関係なく選出されます。
もうここまで来ると作品の紹介はだいたい済んでるので
早々と他の賞を眺めてみます。



[Drama Desk Award Outstanding Director of a Musical]

Andy Blankenbuehler 「Bring It On: The Musical」

Rachel Chavkin 「Natasha, Pierre & The Great Comet of 1812」

John Doyle 「Passion」

Diane Paulus 「Pippin」

Emma Rice 「The Wild Bride」

Alex Timbers 「Here Lies Love」

Matthew Warchus 「Matilda」

「Kinky~」「The Mystery~」が外れてます。
「Passion」の John Doyle は「スィーニー・トッド」でトニー賞を獲得してます。
以降ソンドハイム作品を多く手がける巨匠です。
「The Wild Bride」の Emma Rice は[theatre company Kneehigh]というイギリスの劇団の
芸術監督でブルックリンの St. Ann's Warehouse という劇場に招聘された作品です。
この作品は本当にアーティスティックで面白かった。きちんと評価されてて嬉しいです。
「Here Lies Love」の Alex Timbers は今かなり売れて来てる演出家です。
「Peter and the Starcatcher」や「bloody bloody andrew jackson」などを演出してます。
今年は夏に上演されるセントラルパークのミュージカルの演出を担当します。



もう一つ

[Outer Critics Circle Award Outstanding Director of a Musical]

Warren Carlyle 「Chaplin」

Scott Ellis   「The Mystery of Edwin Drood」

Jerry Mitchell  「Kinky Boots」

Diane Paulus   「Pippin」

Alex Timbers   「Here Lies Love」

なんと「Matilda」の代わりに「Chaplin」が入ってます。
確かに「Chaplin」は演出的にはかなり頑張っていた気はするけど
「Matilda」が外れるとは・・・
Diane Paulus はどの賞にもノミネート。有力ですね。



さてそれではノミネートされた方々を紹介していきます。





Scott Ellis 「The Mystery of Edwin Drood」

Roundabout Theatre というブロードウェイで最も大きなカンパニーの
アソシエート・芸術監督という肩書きの方です。とにかく重鎮ってことですね。
舞台の仕事はもちろん最近は「30 Rocks」というテレビドラマなどを監督として
手がけていてエミー賞を獲得しています。
ただトニー賞に関して言えばノミネートは5回もされてるけどまだ獲得には至ってない。
代表作は「Curtains」「Twelve Angry Man」「She Loves Me「1776」などなど。
コメディー作品にかなり定評のある演出家です。
ちょっとお洒落なんだけどしっかりおふざけしてくれる。でもどぎつい程の下品さはない。
特に今回のノミネート作品「The Mystery~」は彼の持ち味がかなり活かされた仕上がりでした。
全体的に劇中劇のスタイルを上手く観客に馴染ませ物語を常に俯瞰して見せる事で
細かいところから丁寧に笑いを作り上げて行くことができています。
キャラクターの滑稽さもしっかり色づけできていて
犯人探しをしっかり観客が楽しめていました。
ミュージカルコメディーを上品に面白く作りあげることはなかなか難しいんですが
その難しさにあえてしっかり向き合って上手く仕上げてます。
確かに評価されるのは理解できますが特に素晴らしいというよりも
丁寧な仕事ができる演出家だという印象です。
評価はされるけど受賞には至らないのにもうなずける。
さあ今回はどうでしょうか。




Jerry Mitchell 「Kinky Boots」

振り付け家としてのキャリアの方が長い方ですね。
「La Cage aux Folles」では振り付けでトニー賞を獲得してます。
とにかくゲイ物に強いイメージです。本人が公言しているわけですからね。
振り付けとしての代表作は
「You're a Good Man, Charlie Brown」「The Full Monty」「Hairspray」
「Catch Me if You Can」「Dirty Rotten Scoundreis」「Gypsy」などなど。
元々はダンサーとしてキャリアを始めた人なので当然のキャリアです。
演出家としては「Legally Blonde」でデビュー。
オンブロードウェイ作品の演出は今回が2回目。
とは言え彼にはもってこいの作品です。相性が悪いわけがない。
ポップな振り付けが持ち味の彼ですから当然振り付けも自ら担当してます。
振り付け賞でもノミネートされてます。
今回の作品ではもうとにかくショウアップに心血を注いだという割り切りが
作品をエンターテイメントとしてばっちり成立させていました。
ドラマとしては希薄になってしまいましたがそもそもそういう物を求めてないんだ!
という主張が見えて来るような気がしました。
彼のカラーにぴたりとはまった作品でとてもみやすく盛り上がっています。
振り付け家であるためかやはりミザンスはわかりやすく
無駄なくはっきりしてる印象です。
緻密さというよりはインパクトをしっかり与えることができていました。
とにかくパワフル。ドラマを作らせたらまだまだなのかもしれませんが
今回の作品に関しては素晴らしい仕上げ方だと思います。
演出家としてこれからまだまだ期待の方です。
ただ、やはり振り付けの要素の方が目立ちます。
演出賞としては・・・もう一歩な気がしますが。





Diane Paulus 「Pippin」

もはやリヴァイヴァル作品と言えばの方ですね。
肩書きとしてはハーバード大学の「American Repertory Theater」の芸術監督を務めています。
この団体はハーバードの演劇科のカリキュラムとしてスタートして今では
オンブロードウェイで毎年の様に作品を上演する注目の団体です。
彼女の代表作は「The Donkey Show」「Hair」「Porgy and Bess」
最近はシルクドソレイユの演出なども手がけてます。
新しい解釈や新しい要素を取り入れてのリヴァイヴァルが特徴で
原作をかなり改変することで有名です。
「Hair」はベストリヴァイヴァル賞を獲得してますが演出賞は未だに獲得してません。
因にご結婚されていて旦那様は Randy Weiner さん。
この方はOffでカルト的な人気作 Sleep No More の演出家です。
夫婦揃って演出家ってどんな感じなんでしょうね。
今回の作品では Les 7 Doigts de la Main というモントリオールのサーカス集団の
クリエイターとのコラボレーションを行い、
原作の旅芸人一座をサーカスに置き換えて上演しています。
座長であるリーディングアクターという初演時は男性が行っていた役に
女性をキャスティングするなどまたまた新しい解釈で
彼女のカラーがしっかりと出ています。
個人的には作品の深みがやや消えてしまったという残念さはありますが
上質なエンターテイメント作品としてきちんと仕上がっていて
作品が元々持つ完成度の高さも相まってあまり非の打ちはありません。
はっきりいって好みの問題ですね。
この作品のテーマをもっと伝えたいと思うか、この2時間半魔法の世界に誘うのか。
後者を選択してとにかく観客に驚きを与えスリリングに熱狂させることができている。
一つの成功の形だとおもいます。
今年はかなり受賞のチャンスはあるんじゃないでしょうか。
確かに素晴らしい感覚の持ち主だと思います。





Matthew Warchus 「Matilda」

出身のイギリスでは古典劇からミュージカル、オペラまでなんでもこなす方です。
「Matilda」ではオリヴィエ賞を獲得してます。「Road of the Ring」なんかもこのかたです。
ブロードウェイでは
「Ghost」「Follies」「The Norman Conquests」「 God of Carnage」などが有名です。
「 God of Carnage」ではプレイ部門の演出賞を獲得してます。
因に「Matilda」で助演女優賞にノミネートされてる Lauren Ward が奥様だそうです。
とにかく緻密に隙のない仕上がり。
これは振り付けと美術の要素が多大にはありますが
なんといってもこの暖かみのある世界観の中で
しっかり夢を見せてくれるバランス感覚が素晴らしい。
子供向けの作品としてではなく
誰もが子供の目線になって楽しめるように工夫されています。
馬鹿馬鹿しいコメディー部分もしっかり計算されていて
いきなりぶつけずきちんと地ならしをしてくれていて
観客に良い意味で期待をさせてくれます。
子供の世界に観客を引き込んで行く事がコンセプトとしてはっきりしていて
それが本当に上手く利いている。
近年希に見る完成度の高さは目を見張るものがある。
隙がなく綿密に作り上げておいてコミカルなチープさで息抜きをさせる。
上手いですね。とにかくバランス感覚がいい人なんだと思います。
更に言えばややシュールな尖った部分もあえてコミカルにぶつけることで
じわじわとアイロニーが染みて来ます。
こういう感覚はなんともイギリス人らしいです。
ただ緻密に作り上げるだけではなくしっかり息抜きさせるバランス感覚。
アメリカとイギリスのハイブリッドという印象です。
個人的には作品の完成度からいってかなりのアドヴァンテージがあると思いますが
既に獲得経験がある方です。ミュージカル部門でも獲得なるでしょうか。



Diane Paulus と Matthew Warchus の一騎打ちだと思います。
予想としては Matthew Warchus にとって欲しいけど Diane Paulus なのかなあ。
そんな気がします。








引き続き振り付け賞について
まずはノミネートを確認。

Andy Blankenbuehler  「Bring It On: The Musical」

Peter Darling   「Matilda」

Jerry Mitchell   「 Kinky Boots」

Chet Walker     「Pippin」

これはうなずけるノミネート。今年を代表するナンバーが浮かびます。

他の賞を眺めます。




[Drama Desk Award Outstanding Choreography]

Andy Blankenbuehler  「Bring It On: The Musical」

Warren Carlyle    「A Christmas Story: The Musical」

Peter Darling      「Matilda」

Josh Rhodes     「Rodgers + Hammerstein's Cinderella」

Sergio Trujillo     「Hands on a Hardbody」

Chet Walker and Gypsy Snider    「Pippin」

「Kinky~」の Jerry が抜けてます。これは意外。更にOFF作品が一つもありません。
やはりダンスメインの作品はOFFでは難しいわけですね。
「Pippin」はサーカスクリエイターの Gypsy Snider もノミネート。
「Hands on a Hardbody」の Sergio Trujillo は振り付け界では今かなりの売れっ子。
「Jerset Boys」「Next to Normal」「Memphis」「The Addams Family」などなど。
とは言え今回の作品の仕上がりはいまいちでした。




お次は

[Outer Critics Circle Award Outstanding Choreographer]

Warren Carlyle 「Chaplin」

Peter Darling    「Matilda the Musical」

Jerry Mitchell     「Kinky Boots」

Josh Rhodes     「Cinderella」

Chet Walker      「Pippin」

「Bring It On」が抜けちゃいました。
Warren Carlyle は「Chaplin」と「A Christmas Story: The Musical」で振り付け。
今年はひっぱりだこでしたね。
元はダンサーでスーザン・ストローマンのアシスタントしてキャリアを重ねてた方。
「Chaplin」「Finian's Rainbow」では演出も担当。
確かにコミカルに上手くまとまった振りの印象。
ダイナミックさやインパクトというより小技でニュアンスを伝える感じ。
「Cinderella」の Josh Rhodesは振り付けとしては今回がブロードウェイデビュー。
ダイナミックなイメージの振りが多かった気がします。これからが期待ですね。



Peter DarlingとChet Walker の一騎打ちの様相です。
ノミネートされた方々を紹介していきます。





Andy Blankenbuehler   「Bring It On: The Musical」

代表作は「In the Heights」でトニー賞。他には「 9 to 5」など。
ダンサーとしてキャリアを始めて「Bring It On」では 演出家デビュー。
「In the Heights」「9 to 5」共に本当にアグレッシブでキレのある振りが印象的。
熱気のある情熱的な振りという感じですかね。
今回の作品ではもろチアダンスがメインなので
ちょっと彼の持ち味が全面に押し出せなかった気もします。
彼の作品を観て思うのはちょっとした転換やつなぎの振りが本当に上手い。
当然メインのナンバーも迫力があってパワフルなんですが
細かいシークエンスが無駄にかっこ良くて機能的なんです。
ロッカーやベンチを利用した振りなどなかなかアイディアも面白かった。
むしろユニゾンの振りというよりは個人個人の熱量で見せる振りが得意なイメージなので
チアの振りの恐ろしい程の揃いっぷりは凄かった。
アクロバットの多様な使い方はもうスリリングで華やか。
物凄く完成度は高いんだけど振り付けとしての面白みがちょっと見せにくい作品なのが残念。
まあ受賞経験ありですからね。今回はどうなのかなあ。






Peter Darling   「Matilda」

もうこの人は彼のスタイルがはっきりと認知されていると言ってもいいですね。
映画の「リトル・ダンサー」で鮮烈な印象を焼き付けた彼。
独特のポージングの連続のような滑稽な振りはとても特徴的です。
「Billy Elliot」でトニー賞、オリヴィエ賞を獲得しています。
「Matilda」でもオリヴィエ賞を獲得。
他にも「Road on the Ring」や新作の「Charlie and the Chocolate Factory」を手がけてます。
今回の作品も彼のスタイルが全面に押し出された
とてもスタイリッシュで面白い振りばかり。
とにかく振りの良さが際立った作品と言ってもいいです。
ブランコのシーン、学校の正門でのアルファベットのシーン
授業での机を使っての生徒達のシーンなどなど
振りがしっかりと印象に残るシーンがいくつもありました。
発想力と構成力に優れた人なんだと思います。
ナンバーの中での盛り上げ方ユニゾンの使い方、一つ一つの動きの新しさ。
彼らしい斬新な仕上がりで素晴らしかった。
個人的には彼以外には考えられない。






Jerry Mitchell   「 Kinky Boots」

演出賞のところで記載してるのであまり書く事はないのですが
わかりやすい、のりやすい、キャッチーでポップな振り。
というのが彼の印象です。
難易度の高さや技巧的な部分で魅せるのではなく
全体的に絵として華やかにのりよく魅せることが上手な人。
今回はとにかくベルトコンベアーがコンセプトだったようで
視覚的になかなか面白い見せ方ができていました。
ただなんとも押しまくった印象なので
アーティスティックな雰囲気はいっさいなく
お祭り騒ぎといった感じです。
振りとして面白いかと言われると疑問かな。






Chet Walker     「Pippin」

「Fosse」という作品のクリエイターで振り付け家として有名です。
とにかくフォッシースタイルの継承者というイメージでしょうか。
当然ダンサーとしてのキャリアを重ね
数々のフォッシー作品に出演した経験を元に
名実共にフォッシーの弟子である Ann Reinking と共に
「Fosse」という作品を作り上げたわけです。
今回の作品もオリジナルはフォッシーが演出振り付けだったわけで
フォッシースタイルの振りがオリジナルの雰囲気を感じさせます。
サーカスとのコラボレーションということで様々な制約のなか
フォシッシースタイルのナンバーは
とても活き活きと躍動感に溢れていて冷たい熱さが伝わって来ました。
全体的に毒の少ない仕上がりの作品に
フォッシースタイルの振りが鋭さやシニカルさを醸し出せていて良かった。




やはり Chet Walker かPeter Darlingかという感じ。
フォッシースタイルかピータースタイルか。
もはやスタイルの戦いと言ってもいいかもしれません。
ただ斬新さや作品に対する貢献度、完成度から考えると
Peter Darling に軍配があがるのではないでしょうか。

さて今日は Outer Critics Circle Award の発表です。
どんな結果が出てるのでしょう。楽しみです。





ベストスコア・ベストブック

2013-05-12 00:49:37 | トニー賞
今日はミュージカルのベストスコアとベストブック部門について。
ストレートプレイの場合は脚本賞ではなく作品賞しかないのですが
ミュージカルにはなぜかスコアと脚本賞があるのです。


まずはスコア(作曲・作詞)部門から。

「A Christmas Story」  
作詞・作曲 Benji Pasek and Justin Paul

「Hands on a Hardbody」  
作曲 Trey Anastasio and Amanda Green
作詞 Amanda Green

「Kinky Boots」  
作詞・作曲 Cyndi Lauper

「Matilda」  
作詞・作曲 Tim Minchin

作品賞から「Bring It On」が抜けて「Hands on a Hardbody」が入った形ですね。
新作の層の薄さが伺えます。

他の賞もみてみましょう。



[Drama Desk Award Out standing Music]

「Hands on a Hardbody 」  
Trey Anastasio and Amanda Green
 
「Here Lies Love」     
David Byrne and Fatboy Slim

「Giant 」     
Michael John LaChiusa

「Natasha, Pierre & The Great Comet of 1812」     
Dave Malloy

「A Christmas Story」    
Benji Pasek and Justin Paul

「The Other Josh Cohen」    
David Rossmer and Steve Rosen

Drama Desk賞では作詞と作曲で別部門。まずは作曲から。
「Kinky Boots」と「Matilda」が抜けてます。
やはりOff作品の充実度が感じられます。今年はオフの方が実りが多かったようですね。


[Drama Desk Award Out standing Lyrics]

「Hands on a Hardbody」    
Amanda Green

「Bring It On: The Musical」    
Amanda Green and Lin-Manuel Miranda

「Giant」     
Michael John LaChiusa

「Natasha, Pierre & The Great Comet of 1812」     
Dave Malloy

「Matilda」     
Tim Minchin

「The Other Josh Cohen」     
David Rossmer and Steve Rosen

作詞部門では「Kinky Boots」と「A Christmas Story」が抜けてます。
「Bring It On」が滑り込んできました。
Amanda Green は2作品でノミネート。
やっぱりオフ作品が健闘してます。

新作のオンミュージカルは単純に本数が少ないので仕方ないかもしれないですね。
お次もオン、オフ入り乱れてます。




[Outer Critics Circle Award OUTSTANDING NEW SCORE]

「Chaplin: The Musical」    
作詞・作曲 Christopher Curtis

「Dogfight」    
作詞・作曲 Benji Pasek and Justin Paul

「Hands on a Hardbody」    
作曲 Trey Anastasio and Amanda Green
作詞 Amanda Green

「Here Lies Love」    
作曲 David Byrne and Fatboy Slim
作詞 David Byrne

「Kinky Boots」    
作詞・作曲 Cyndi Lauper

「Matilda」「A Christmas Story」が抜けてますが
「Dogfight」は「A Christmas Story」のコンビです。
「Chaplin」が入ってます。作品自体の評判はあまりよくなかったのですが健闘してますね。
「Here Lies Love」の David ByrneはTalking Headのメンバーとして有名でグラミーとオスカーを獲得してます。
Fatboy Slim もイギリスの超有名DJでグラミー受賞者です。
シンディーもグラミー受賞してますからなんだか豪華なノミネートですね。

この時点でどの賞にもノミネートされてるのは「Hands on a Hardbody」だけ。
これはかなり意外ですね。作品的にはかなり駄目な仕上がりで早々とクローズした作品。
確かにテキサス版コーラスラインという感じの音楽メインの作品でしたが・・・
高評価の所以がわかりません。

Drama League Awardにはスコア部門はないので作品紹介に移ります。





「A Christmas Story」    
作詞・作曲 Benji Pasek and Justin Paul

とてもキャッチーで暖かみのあるイメージ。
ファミリーミュージカルということでとても親しみやすく
耳に残る曲ばかり。コミカルでくだらない曲も多いけど下品にはならずまろやか。
とにかく耳に残るフレーズが沢山あってわかりやすかった。
この2人は今注目の若手。まだ20代。
オフでは「Dogfight」も手がけていてこちらはもっとロックでエッジが立った曲調でした。
結構なんでも器用にかける職業作曲家という印象ですね。
ミュージカル界を描いた「SMASH」にも曲を提供している期待の2人。
はずさないけど物凄くびっくりすることはない。
ベストスコアかと言われると疑問ですがこれからが期待の2人です。



「Hands on a Hardbody」    
作曲 Trey Anastasio and Amanda Green
作詞 Amanda Green

作品の評判はいまいちで仕上がりもいまいち、早々とクローズした作品ですが
コンサートのような作品なので音楽としては成立してたのかな。
ただミュージカルの楽曲というか単なるカントリーロックというイメージ。
一曲一曲がしっかり完結していてわかりやすい。
言って見れば普通にアルバムのようなもの。
Trey Anastasio はPhish というバンドのギタリストとして活躍していた方。
今期大活躍のAmanda Green ですがそこまで心に残る音楽ではなかった気がします。
どの賞にもノミネートされている程の楽曲だとは思えませんが・・・
どういう評価なんでしょうか。ちょっと疑問です。
でもこの人僕が好きな「High Fidelity」という作品でも曲を書いています。
それなりに活躍はしているけど評価はされていない印象ですね。

個人的にはまったく魅力を感じなかったので好みが合わなかっただけかもしれませんね。





「Kinky Boots」  
作詞・作曲 Cyndi Lauper

シンディー・ローパーのミュージカルデビュー作。
作品とよくはまった印象です。
彼女の持ち味であるあのポップなカラーが作品のカラーとばっちりあっていて
とてもキャッチーでノリのいい仕上がりでした。
ミュージカルを書くにあたってかなり勉強したと本人も語ってましたが
努力の成果が現れているように思えます。
ただ特別な新しさやひねりはなくどっぷりシンディーカラーで上手くまとまっているので
好みが合わない方にはいまいちかもですね。
とても元気になれるパワフルでストレートな曲ばかり。
個人的には彼女のデビュー作であり作品の勢いもあって
彼女が賞を獲得するような気がしますが・・・どうかな?




「Matilda」  
作詞・作曲 Tim Minchin

史上最多受賞のオリヴィエ賞受賞作品ですがなんと
楽曲賞だけは受賞していないのです。
確かに物凄く洗練されているわけではないですが
暖かさも尖った部分も兼ね備えたバランスの良い楽曲ばかりだと思いました。
やや荒削りな部分もありますがそのラフな部分が
コミカルな作風にはマッチしていたと思います。
そもそもこの人は作曲家というより本業はコメディアンなんです。
地元のイギリスではフリンジ等で一人ミュージカルコメディーショウなどで
かなり評価されています。俳優としても「ジーザス~」のUKツアーでユダとかやってます。
だからなのか音楽もさることながら歌詞に関して言えば
アルファベットを並べて歌う曲なんかは
言葉が得意でない僕が聞いてもうなってしまう出来映えでした。
ノミネート作品の中では一番新しい感じのする音楽です。
作品としての完成度もあるので本来ならこの作品に受賞してもらいたいところですが
何せここはアメリカ、トニー賞ですからね。
ウィットに富んだものよりもストレートに楽しめる物の方が評価されるんじゃないかなあ。



ということで僕の希望は「Matilda」ですが予想は「Kinky Boots」ということになります。
さてさてどうなることやら。
引き続きベストブックに移ります。




今回のミュージカル ベストブックノミネートは以下の4つ

「A Christmas Story」    
Joseph Robinette

「Kinky Boots」    
Harvey Fierstein

「Matilda」    
Dennis Kelly

「Cinderella」    
Douglas Carter Beane

面白いのは新作ではないのに「Cinderella」がノミネートされてます。
リヴァイヴァルとは言え脚本を一から書いているからですかね。
ベスト作品からは「Bring It On」がはずれてます。
とは言えどの作品も元が映画やテレビのものばかり。
完全なオリジナル作品は今回ゼロですね。

他の賞もちらみします。


[Drama Desk Award Outstanding Book of a Musical]

「Matilda」      
Dennis Kelly

「Giant」      
Sybille Pearson

「A Christmas Story」      
Joseph Robinette

「The Other Josh Cohen」      
David Rossmer and Steve Rosen

「Bring It On」      
Jeff Whitty
 
「Hands on a Hardbody」      
Doug Wright


「Kinky Boots」と「Cinderella」代わりに「Bring It On」と「Hands on~」が入ってます。
オフからは完全にオリジナル作品の「The Other Josh~」健闘してますね。
この作詞・作曲・脚本を手がける二人は自ら出演もしていて俳優として
「スパマロット」や「Peter and the Starcatcher」にも出演してます。何でも出来るんですね。
他は全て映画や小説がもとになってます。
「Bring It On」に関して言えば映画よりもかなり脚本がまとまっていて
青春コメディーとしてしっかり成立していました。
「Hands on~」ははっきり言って脚本のよさがわかりません。
Doug Wright と言えば「Grey Gardens」や「The Little Mermaid」で有名ですね。
ピューリッツア賞も受賞してる巨匠です。
テキサスの貧困層の儚い夢を描くというコンセプトが評価されてんでしょうか。
ただ作品としてはお粗末な仕上がりだったんだけどなあ。


もう一つ。

[Outer Critics Circle Award OUTSTANDING BOOK OF A MUSICAL]

「Cinderella」       
Douglas Carter Beane

「Chaplin」            
Christopher Curtis and Thomas Meehan

「Dogfight」       
Peter Duchan

「Kinky Boots」       
Harvey Fierstein

「Matilda」             
Dennis Kelly

「A Christmas Story」が抜けて代わりに「Chaplin」が入ってます。
「Chaplin」の Thomas Meehan は「Annie」「Producers」「Hairspray」でトニーを3つ獲得してます。
こうしてみると「Matilda」は全てにノミネートしてますね。
他の3つが追いかける感じです。
Drama League Award もこの部門なしなので紹介へ。






「A Christmas Story 」
Joseph Robinette

映画を元にした作品ですが映画の良さを上手く切り取って
劣化させずにエッセンスを残して舞台化されていて
映画ファンにも納得させる本に仕上がっています。
コメディーとしてしっかり成立させつつも暖かみのあるカラーは
とても好感を持てました。あまり無駄のないシンプルな脚本というイメージです。
Joseph Robinette はかなりキャリアの長い脚本家でいくつも本を書いてますが
ブロードウェイ作品は今回が初めてのようです。
どちらかというと職業脚本家というイメージの方ですね。
しっかり丁寧に脚本をまとめた感じ。
ただ脚本が格段に素晴らしいというよりは映画が素晴らしいという印象です。
むしろ演出的に作品を押し上げていた気がします。
演出はジョン・ランドー。さすがです。




「Kinky Boots」
Harvey Fierstein

こちらは逆に映画の良さを失くしてエンターテイメントに特化した印象。
イギリスの味のある重たく乾いた空気が醸し出す滑稽な可笑しさではなく
ストレートにアメリカンなジョークとドラッグクイーン押しで
ニューヨーカーに照準を合わせた仕上がり。
個人的には映画の質感がたまらなく好きだったので残念。
ただエンターテイメントとしての成立のさせかたは流石ですね。
作品全体のコンセプトがそうなんだからこれはこれでいいのでしょう。
好みではないですが評価に値する脚本に仕上がっていると思います。
Harvey Fierstein は「Torch Song Trilogy」でベストプレイ「La Cage aux Folles」でベストブック賞を獲得してます。
はっきり言ってこの手の作品は得意中の得意なわけですね。最近は「Newsies」も書いてます。
更に面白いのがこの人俳優としても素晴らしく活躍してます。「Torch Song Trilogy」では助演男優賞獲得。
「Hairspray」では主演男優賞を獲得してます。この4部門での獲得は史上2人しかいないそうです。
凄い才能ですね。因にこのかたエミー賞までとってます。
ただ好みと映画への愛情から今回はこの作品ではないと願っています。



「Matilda」
Dennis Kelly

この作品は少女が魔法を使って駄目な大人をやっつける話なんですが
原作や映画ではかなり簡単に魔法が使えるのにこの作品では
ほとんど使えません。劇中で2回ぐらいですね。
あえてそこに制約を与えて子供の知恵や思いやり、勇気にフォーカスしたところが
作品に深みを与えている気がしました。
更にマチルダが語る劇中劇の利用の仕方などなかなか上手くまとまってます。
とにかく子供から大人までわくわくできて元気を貰える作品に仕上がっていて
コメディーとしてとてもバランスがいい。
下品にもなりすぎず馬鹿馬鹿しい部分もしっかりある。
くだらなさが上手く伝わるさじ加減。とても上手く書けていると思います。
Dennis Kelly はイギリスで活躍する脚本家で小劇場作品を多く手がけているそうです。
舞台だけではなくテレビドラマの本も書いていて売れっ子作家ですね。
この作品でオリヴィエ賞を獲得してます。
個人的にはこの本に賞をあげたいなあ。




「Cinderella」
Douglas Carter Beane

元になったテレビ映画をみたことがないのでどの程度変わっているのかはわかりませんが
そもそもこの作品のコンセプトがあまりわからなかった。
コメディーとして見せたいのか子供向けのファミリーミュージカルとして見せたいのか
どうも中途半端な気がしてならない。
夢や希望でキラキラした作品を期待してみると
なんだか大人向けのややお馬鹿なコメディーだったみたいな印象だ。
特に2幕は無理矢理膨らませたような気までする。
このロジャーズとハマースタインのゆったりした上品な曲調と脚本の色が
ややミスマッチだった。脚本的にそこまで魅力を感じないしあがりだった気がする。
とはいえこれはディズにーのシンデレラのイメージが強すぎるからかもしれない。
でもあれだけ有名な成功作がある上でこのヴァージョンを上演するのだから
難しいの承知なのだろう。にしてはちょっと及ばずなきがした。
Douglas Carter Beane は 「Xanadu」「Sister Act」今期は「Nance」を書いてます。
ノミネートはされるけどまだ獲得経験なし。さてどうなることでしょう。



4本を並べてみると脚本の秀逸さでは「Matilda」が断トツな気がするんですがどうですかね。
僕の予想は「Matilda」です。
さて結果はどうなる事でしょう。

次は演出賞かな。


ベストリヴァイヴァルプレイ

2013-05-10 23:20:36 | トニー賞
さてペースを上げて行かないとなかなか消化できません。
まさに演劇賞シーズンまっ只中。
まずは5/13にOuter Critics Circle Awardの発表がありますからね。



今年のノミネーションは以下の4本。

Orphans

Who's Afraid of Virginia Woolf?

The Trip To Bountiful

Golden Boy


選考対象は13本。なかなか狭き門ですね。
もれた作品は以下

The Big Knife
Cat on aHot Tin Roof
Cyrano de Bergerac
An Enemy of the People
Glengary Glen Ross
Harvey
The Heiress
Macbeath
Picnic

「Grengary~」はアル・パチーノ
「Cat on ~」はスカーレット・ヨハンソン
「The Heiress」はジェシカ・チャスティン
なかなかスターの多い年ですね。
他の演劇賞もちら見してみましょう。



[Drama Desk Award Outstanding Revival of a Play]

Who's Afraid of Virginia Woolf?

Golden Boy

Good Person of Szechwan

The Piano Lesson

The Trip to Bountiful

Uncle Vanya


「Orphans」がもれてますね。
オフからは
「Good Person of Szechwan」ブレヒトの「セチュアンの善人」です。
暖かみのあるロックな作品でした。面白かった。
「The Piano Lesson」は黒人一家が亡くなった母親のピアノに振り回されるホームドラマ。
人種差別と家族の絆を描いた渋い作品でした。
「Uncle Vanya」は観れてないんですがチェーホフの「ワーニャおじさん」ですね。




[Outer Critics Circle Award OUTSTANDING REVIVAL OF A PLAY]

Golden Boy

Orphans

The Piano Lesson

The Trip to Bountiful

Who's Afraid of Virginia Woolf?

トニーとまったく同じノミネートラインナップ。
「The Piano Lesson」健闘してますね。
この作品アッシャーしてただで観たので思い入れあります。



[Drama League Award OUTSTANDING REVIVAL OF A BROADWAY OR OFF-BROADWAY PLAY]

As You Like It

Golden Boy

Macbeth

The Piano Lesson

The Trip to Bountiful

Who’s Afraid of Virginia Woolf?


こちらは「Orphans」が外れてますね。
代わりに「Macbeath」が滑り込み。
キャバレーのMC役で有名なアラン・カミングの1人マクベス。
演出は「Once」の Jhon Tiffany
スリリングで斬新で面白いけど何も今更感があったかも。
「As You Like It」はご存知「お気に召すまま」です。
これは見逃しております。


ここまでみると

Who's Afraid of Virginia Woolf?

The Trip To Bountiful

Golden Boy

は揺るがないですね。
個人的には「Golden Boy」と「Who's Afraid of Virginia Woolf?」の一騎打ちの様相。

ストレートプレイのリヴァイヴァルとなると
シェイクスピアからここ最近までと作品の幅が広いですね。
ゆうに400年以上もスパンがあるわけで同じ土俵で勝負してるってのが面白い。
近松門左衛門と井上ひさしが戦うようなもんですからね。
どう解釈してどう立体化するか。こちらも演出の見せ所。




「Orphans」
1983年初演の Lyle Kesslerのストレートプレイ。
後に映画化もされロンドンではオリヴィエ賞を獲得してます。

フィラデルフィアに暮らす孤児院出身の兄弟。
兄は弟を可愛がるあまり外出を禁じ
自分はチンピラ崩れの暴漢を行って生活をなんとかしている。
ある日襲った男から金をせびろうと家に連れ込むと
男はマフィアのボスだとわかり不思議な共同生活が始まる。
自分も孤児院出身の男は何かと二人の世話をやくのだけど
結局最後は抗争に巻き込まれ死んでしまう男。
生まれて初めて見つけた父親を失った二人の悲しみで幕がおります。

全体的にコミカルにポップに仕上げられていてテンポもよくわかりやすい。
だけどただそれだけな感じ。
疑似家族のような3人の生活に暖かさを感じるし
最後のシーンでの兄の悲痛な叫びには感動しましたが
オリジナルの脚本の解釈やイメージからあまり飛躍しない
まとまった作品という印象。

とは言えこのプロダクション、むしろよく幕が開いたなという感じですね。
当初兄役は「トランスフォーマー」や「ウォール・ストリート」の Shia LaBeouf だったんですが
マフィア役のアレック・ボールドウィンと馬が合わずに降板。
アレックは結構面倒な方なんですね。いろいろと私生活でも短気で扱いづらいと有名だそうです。
個人的には好きな俳優なんですけどね。
それで代わりに Ben Foster が演じる事になったわけです。凄いですねえ。初舞台みたいです。
弟役は Tom Sturridge
イギリスの若手俳優なんですが大好きな映画「パイレーツ・ロック」の主人公を演じていた彼です。
なんとこの3人を押さえて今回は主演男優賞にノミネート。なんだか意味深です。

演出は Daniel Sullivan
トニー賞受賞演出家ですが今期の「Glengary Glen Ross」はちょっと残念な仕上がり。
批評もかなり駄目でした。確かにあれはちょっと頂けなかったけど
こちらはきちんと仕事をしたという印象。
3人芝居で一杯飾り。何か盛り上がりのある作品ではないけど
こころに残る脚本。本は素晴らしい。
でも他の作品に比べると・・・よくまとまってるけど。
ベストではないですね。

今回のノミネートは
ベストリヴァイヴァル賞
主演男優賞 Tom Sturridge

計2部門。ちょっとさびしいですね。




「Who's Afraid of Virginia Woolf?」

1962年の初演のエドワード・オルビーのアメリカ演劇史を変えたと言われる作品。
トニー賞も獲得し、エリザベス・テイラーで映画化されオスカーを主演女優賞を含み5部門獲得。
因に初演はこっちに来て最初に通ってた学校の創立者ウタ・ハーゲンが主演女優を演じてました。
ウタと夫で演出家のハーバート・バーコフ夫妻を知るオルビーが
二人をモデルにして書き上げたという話もあるそうです。

さえない歴史教授の夫と学長の娘である妻。
人生の終わりが見えて来た二人の仲は冷えきっている。
父親主催のパーティーあとに後輩の生物学者夫婦が家を訪れる。
罵り合う二人の間に入る若い夫婦。
若い妻は泥酔、年老いた妻は悪態をつき若い教授を誘惑。
若者への嫉妬、現実のやり切れなさ、壊れた夫婦の絆。
年老いた夫婦をつなぎ止めていた想像上の息子。
その息子が死んだと告げる夫、悲嘆にくれる妻。
やるせない現実が突きつけられて幕がおりる。

とにかく信じられないくらいの暴言を吐きまくりお酒を飲みまくる老夫婦。
初演時はあまりの言葉の汚さに諸々問題がおきたとか。
確かに口喧嘩がもう延々続く訳です。
酒の勢いも手伝ってお互いを傷つけ合うんですが
なんだかこの二人が心の底から憎しみあってるわけじゃなく
お互いに罵り合うことで傷をなめ合ってるような気がしてならない。
成功を夢見て幸せを手に入れようと愛しあって結婚した夫婦の成れの果て。
現実はこんなもんだよと突きつけられた時
人生の意味、共に歩む相手に何を求めるのか。確かに深い作品です。
とにもかくにもこれだけ喋る芝居もなかなかない。
観てる方も本当に疲れます。

主演の大学教授を演じたのは Tracy Letts 
この人なんと2008年に「August: Osage County」という作品で
脚本家としてトニー賞とピューリッツアー賞を獲得しています。凄いですね。
今回は主演男優賞にもノミネート。
相手役は Amy Morton
こちらも女優以外に演出家としてかなり活躍している方。
やっぱり主演女優賞にノミネート。
この二人も含め今回のプロダクションは
シカゴの Steppenwolf Theater Company 
というかなり力のある劇団。
本当に素晴らしい俳優を沢山輩出していて
ブロードウェイにいくつも作品を持って来ています。
因に「Orphans」もこの劇団が初演です。

演出は Pam Mackinnon
2011年にピューリッツア賞を受賞した「Clyboume Park」でオビー賞を獲得してる方。
これだけの名優兼クリエイターとの仕事ってどうなんでしょうね。
想像すると大変そう。でも本当に上質にビビットにまとまってました。
セットの美しさもあいまって激しさと儚さがうまく共存していた気がします。
批評もかなり評判よく前評判ではベストをとりそうな勢い。
2004年のリヴァイヴァルもあったけどどうなのかなあ。

今期のノミネート

ベストリヴァイヴァル賞
主演男優賞
主演女優賞
助演女優賞
演出賞

計5作品のノミネート。かなり有力。




「The Trip To Bountiful」

1953年初演。Horton Foote の脚本。
初演時はトニーの主演女優賞獲得作品。
1985年には映画化されこちらも主演女優賞でオスカー獲得。

40年代のテキサス、ヒューストンを舞台に
年金暮らしの母親と暮らす息子夫婦。
貧しい家庭を支えているのは母親の年金。
病気を煩い寿命を感じ始めた年老いた母親は嫁とも上手く行かず
生きてるうちに一度生まれ故郷を訪れたいと年金小切手を握りしめて家出をする。
途中出征中の夫の帰りを待つ若い女性に会ったりしながら
辿り着いた故郷はすでに誰も住んでいない街になっていた。
迎えにきた息子夫婦に手を引かれ廃墟となった生家に後ろ髪を引かれながら幕が下りる。

今回は主人公一家を黒人家庭に設定を変えての上演。
これがなかなか一家の貧しさや母親の持ち前の陽気に説得力をもたせていた。
ただセットがなんだかすかすかしていて演出もこじんまりした印象。
劇場自体がソンドハイム・シアターというかなり大きなところなため
ちょっとちぐはぐな感じがしてしまって残念だった。
元々テレビ映画が最初の作品なのでシーン数が多く
演劇的にはちょっと作りづらいのかと思えた。
ただ脚本の素晴らしさや主演女優の熱演でかなり好印象の作品。

主演は Cicely Tyson 79歳。
2幕もののほぼ出ずっぱり。しかも凄くパワフル。
途中歌って踊ります。
この方は黒人女性として初めてエミー賞を獲得した大女優。
レジェンドなんですね。もちろん主演女優賞にノミネート。
義理の娘を演じるのは ヴァネッサ・ウィリアムズ。
この人もまた凄い。黒人女性初のミスアメリカです。
歌手としてもポカホンタスの主題歌でグラミー賞を獲得してます。
映画、テレビ、ミュージカルと活躍する人気女優ですね。
とにかく意地悪なお嫁さんが似合ってた。

演出は Michael Wilson
Horton Footeの作品をかなり上演しています。
どうやらライフワークのように二人で作品を作っているようです。
にしてもそこまで演出的にはぴたっと来なかった気がします。
別に悪目立ちする部分はないんだけどちょっと古臭いというか
普通という感じですかね。セットの問題もあったのかもしれませんね。

脚本や台詞にはぐっと来るし主演女優も素晴らしかったけど作品的に見ると
そこまでのできではないのかなあ。
設定を変えた部分はかなり評価されるけれどそれ以外は
俳優と脚本の力で成立している作品なきがします。
及ばない作品ではないでしょうか


今期のノミネート

ベストリヴァイヴァル賞

主演女優賞
助演女優賞 Condola Rashad
音響賞

計4部門ノミネート。
助演はヴァネッサじゃなくて若奥様の方。この夏にルヴォー演出のロミジュリでジュリエットやる方です。




「Golden Boy」

1937年初演。脚本は Clifford Odets
1939年には映画化。
1964年にはミュージカル化までされてます。
Clifford Odets の作品は今期は「Big Knife」がありましたね。
アメリカの古典演劇を代表する脚本家です。

ヴァイオリニストを夢見る主人公が生活の為にボクシングを始め
チャンピオンにのしあがり冨と名声を手に入れるが
代償に指を壊し音楽の道を諦め、更に試合で相手を殺してしまう。
自暴自棄になり心惹かれるマネージャーの愛人と共に
車を走らせ最後は事故死してしまう。
残された音楽の道に進んで欲しかった父親。
若い青年の人生があっという間に消えていく儚さが描かれる。

この作品には思い入れがありまして
こちらでお世話になっている日本人の美術家 鈴木幹子さんが
美術助手をされていて舞台稽古を覗かせてもらったのです。
本当に美しいセットなんですよこれが。
プレビュー初日とオープンしてからの2回も観てますからね。
結構作品の理解は深いかと思われます。
白黒映画のあの乾いた美しさが立体化されたような仕上がり。
決して押し付けがましくなく内側の躍動感がしっかり伝わって来る。
上質で美しく密度の高い作品です。
当時のNew Yorkの雰囲気、イタリア移民達の暮らし
人間の欲深さ、弱さ、現実の厳しさなどなど
随所に細かく見えて来る。
リンカーン・センターの製作で出演者も沢山いてかなり豪華です。

基本的に父親と息子ものに弱いのでかなり好きな作品です。
とにかく父親のあの切なさといったら。
芸術か成功か。
幸せを掴むために何かを犠牲にして
結局何も手に入らずただ失ってしまう悲劇。
まず脚本はかなり好み。

演出は Bartlett Sher
オペラ、ミュージカル、ストレートプレイと幅広く活躍する注目の演出家。
「South Pacific」のリヴァイヴァルでトニー賞受賞。
丁寧に心情が見える演出でなかなか見応えがありました。
なんといっても一つ一つのシーンが絵として美しかった。
セットと演出の相性がいいんでしょうね。

今回のノミネートは

ベストリヴァイヴァル賞
助演男優賞 Danny Burstein
助演男優賞 Tony Shalhoub
演出賞
美術賞
衣裳賞
照明賞
音響賞

計8部門のノミネート。なんとプレイ部門最多です。
個人的にはこの作品にとって欲しい!


前評判からすると「Who's Afraid of Virginia Woolf?」と「Golden Boy」の2つが有力候補ですね。
個人的には「Golden Boy」です。
ただ「Who's ~」はアメリカ演劇史にとって重要な作品でかつ今回のプロダクションはかなり出来がよかった。
アドヴァンテージがあるのかな。でも現代的なリヴァイヴァルとしては「Golden Boy」に軍配があがる気がします。
そんな希望的観測です。


ふう。やっと作品賞の紹介が終わりましたね。本当にどこまで書けるのかなあ。
まずはクリエイティブスタッフから攻めて行くつもりです。
ミュージカルのベストスコアとベストブックかな。
書けば書くだけ色々と浮かんで切りがありません。
まあそれはそれでいいか。







ベストプレイ

2013-05-10 01:39:33 | トニー賞
今日はベストプレイについて書いてみます。
今年のノミネートは

The Assembled Party

Lucky Guy

The Testament of Mary

Vanya and Sonia and Masha and Spike

の4本。

いつも通り今期の他の作品を眺めてみます。

The Anarchist
Ann
Breakfast at Tiffany's
Dead Accounts
Grace
I'll Eat You Last: A Chat With Sue Mengers
The Nance
The Other Place

上記の4本も含めると選考対象は12本。
ミュージカルよりも断然多いですね。
個人的には「Grace」と「The Other Place」は面白かった。
「The Other Place」はストレート版「Next to Normal」って感じでかなり好きな作品。
他の作品も機会があれば書きますが
「The Anarchist」と「Dead Accounts」以外は観てるので
過去のブログに何かしら書いてるでしょう。
観なかった2つはあまりにも評判が悪くてすぐに閉まってしまったのです。
どっちもスター出演の話題作だったんですけどね。

さてこれまたいつも通りに他の演劇賞を眺めてみましょう。


[Drama Desk Award Outstanding Play]

The Flick

Vanya and Sonia and Masha and Spike

Finks

The Assembled Parties

Belleville

Falling

Sorry


「Lucky Guy」と「The Testament of Mary」がもれてますね。
むしろoff作品が目立ってます。
確かに選考されてる作品にはうなずけます。
心の病を扱ったの2つ「Bellville」と「Falling」は個人的にかなり好きでした。
「Finks」だけ見逃しちゃいました。



[OUTSTANDING NEW BROADWAY PLAY]

Grace

Lucky Guy

The Nance

The Testament of Mary

Vanya and Sonia and Masha and Spike

こちらは「The Assembled Parties」がもれてます。
代わりに「Grace」が入ってますね。
この作品の主演は最近コメディー映画にひっぱりだこのポール・ラッド。
フレンズのフィービーの結婚相手を演じてた俳優さんですね。
この作品は何より演出がよかったからノミネートされてて嬉しいですね。



もう一つ、これミュージカルのところで書くの忘れてましたが大事な賞ですね。

[Drama League Award Nominations]

I'll Eat You Last: A Chat With Sue Mengers

Lucky Guy

The Nance

Old Hats

The Testament of Mary

Vanya and Sonia and Masha and Spike

The Whale

これもON,OFF関係ない賞なんですが
これも「The Assembled Parties」がもれてますね。
ベット・ミドラーの一人芝居「I'll Eat You Last: A Chat With Sue Mengers」が入ってます。
「Old Hats」はボードヴィルショウ。職人芸が素晴らしかった。
「The Whale」は見逃しました。評判よかったのに。


こうしてみるとどの賞にもノミネートされてるのは

「Vanya and Sonia and Masha and Spike」

その次が3つで「Lucky Guy」と「The Testament of Mary」
なかなか興味深いですね。



さて以下は作品の紹介です。



「The Assembled Party」

アッパーウェストのセントラルパークに面した広大な高級アパートメントを
相続した元女優の妻と夫、息子兄弟。
夫の姉夫妻と娘、息子の大学の友人がやって来て色々なほころびが見え隠れするあるクリスマスの夜。
それから20年後の同じアパートのクリスマス。夫と息子を失くし弟は家を出ている。
一人残された元女優の未亡人。失くした息子の友人、夫の姉がやってくる。
20年の時間が何を変え何を変えなかったのか。
淡々とではあるが綿密に登場人物達の心情が描かれていた。
ストーリーとして目新しさや意外性はないが説得力のある質感が好印象な作品。
主人公と姉のやりとりにどこか哀愁や儚さを感じる寂しさと暖かさの混じった作品。

脚本はRichard Greenberg
この方今期大活躍です。
「Breakfast at Tiffany's」と「Far From Heaven」の脚本も書いてます。
どうやら同時に3つの作品を抱えてたみたい。凄いですね。
演出はLynne Meadow
Manhattan Theatre Clubという由緒あるシアターカンパニーの芸術監督です。

1幕のセットは盆を上手くつかっていて広大で迷路のようなアパートメントを
上手く表現していました。ドラマティックな何かがあるわけじゃないんだけど
淡々と彼等の生活をちょっと遠くからそっと覗いてるような感じ。
2幕になるとリビングがしっかり飾られた一杯飾りになります。
何よりメインの二人の女優が素晴らしかった。
主演の Jessica Hecht は知ってる人は知ってるかもです。
フレンズのロスの最初の奥さんキャロルの彼女スーザンを演じてた人。
元女優の少し浮世離れした魅力的な女性を好演してました。
相手役の Judith Light は 去年おトニー主演女優賞獲得。
映画やテレビでも大活躍してる女優さんです。
あくの強いよく喋るおばちゃんを演じてました。
本当に二人のかけ合いは見応えがあります。
押し付けがましくないのに見入ってしまう。上手いんですね。

ただ作品を全体的にみると素晴らしい作品ではあるが
びっくりするような作品ではない。想像通り上質な作品という感じです。
ベストプレイには一歩及ばずな気がするんですけどどうですかね。

作品賞
助演女優賞 Judith Light
美術賞

計3部門でノミネート。




「Lucky Guy」

今期一番の話題作でチケット馬鹿売れ作品。
ノーラ・エフロンの遺作であり
トム・ハンクスのブロードウェイデビュー作。
Mike McAlary という警察犯罪を専門に取り上げてピューリッツアー賞を獲得した
タブロイド紙の記者の半生を描いた作品。
このMike McAlary という人を調べるとなかなか面白くて結構波瀾万丈なんです。
そんな彼の凋落を描いているわけですが
個人的にはちょっと脚本自体があまり洗練されていない気がしました。
ノーラ・エフロンといえばラブコメのイメージが強いですからね。
今回の作品は男臭い作品。とはいえどっぷり社会派なわけでもない。
もっと社会派作品に仕上げた方が良かった気がしました。
やはりエンターテイメントとしての仕上がりが優先されてるのでしょうか。
もっと毒があってもよかったのかと。
とは言え実在の人物の人生を描いてるわけで説得力はあります。
脚本の力不足を演出とセットが上手く補っているという印象でした。
視覚的にしっかり見せていくことができて工夫がしっかり感じられました。
スタイリッシュによくまとまってます。

演出は George C. Wolfe
トニーを2回も獲得してる実力はです。
本当にスタイリッシュによくまとめてました。
さて主演のトム・ハンクスは・・・
また主演男優賞の際に詳しく書きますが
トム・ハンクスです。
オーラもあるし上手いんだけど人の良さを感じなかった。
なんというか生き生きとそこにいるというかキャラクターとして
そこにいるそんな感じがしました。
まだプレビューだったからかもしれません。

現段階では今年のかなり有力作品のようですが個人的には
うまくまとまってるし雰囲気も凄くいいけどベストじゃないんだよなあ。
という感じです。面白いし、スタイリッシュなんだけど物足りない。
なんか上辺な感じがしてしまうのは僕が穿ってみてるだけかもしれませんが。
Mike McAlary という実在の人物をもっと生々しく描いて欲しかったのかも。
ただの好みですね。逆にミュージカルだったらこの程度でもいいんだけどなあ。
そんなこんなでこれも違うかなと思いつつも勢い的にかなり可能性ありの状態。
う~ん・・・

作品賞
主演男優賞
助演男優賞
演出賞
美術賞
照明賞

計6部門ノミネート。新作では最多ノミネートですね。





「The Testament of Mary」

個人的には難しいとはわかっているけどこの作品に獲得して欲しいんです。
チケットも全然売れずに早々とクローズしてしまった作品。
キリストの母親であるマリアを主人公に「神の子」を息子に持った母親の苦悩を描く問題作。
イギリスの大女優 Fiona Shaw の一人芝居です。
脚本は同名小説の原作者である Colm Toibin
「聖母マリア」という後世によって作り上げられた理想のイメージと
実際の乖離、息子との距離、息子の死刑を目の当たりにする苦しみなどなど
一人の母親として彼女が何を感じ何を思ったかを彼女自身が
奉られているトルコの「マリアの家」で語り始めます。
開演前にはその「マリアの家」を模したステージ上に観客はあがれて
マリアを観察したり史跡を散策したりできます。

1列目で観たせいもあるかと思いますが
とにかく彼女の凄まじい熱演にもう90分一瞬たりとも目が離せなかった。
感情の起伏、葛藤、苦しみが痛い程に伝わって来る。
まさに目の前に彼女が痛々しく存在している。
一人の母親としての彼女がそこにいるんです。
もうなんだか観終わったあと演劇の素晴らしさを噛み締めた記憶があります。
照明、音響、セット、演出がとても効果的に象徴的に彼女の感情にフォーカスしていて
セットは抽象的で扱う小道具も決してリアリティーのあるものではないのに
目の前に実際に存在する感覚。
キャラクターを演じているわけではなくそこにいるという感じがしました。

演出は Deborah Warner
演出家と主演女優は25年もコラボレーションしている仲だそうです。
お互いを信頼できないとこんなにも全てをさらけだす作品は作れないかもしれませんね。
Fiona Shaw は僕はよく知りませんがハリーポッターの「ペチュニア伯母さん」で有名だそうです。
オリヴィエ賞3回、トニー賞、大英勲章も獲得している名実共にある実力派女優です。
本当に素晴らしかった。
個人的にはこの作品に受賞して欲しいんですけどね。
演出家、主演女優ともにイギリスの方々ですし作品の内容もかなり過激なので
敬虔なキリスト教徒の方々から沢山の抗議を受けたり劇場の前でデモがおきたりと
問題も多かった作品。興行的にも・・・
とれないんだろうけどとって欲しい作品です。


作品賞
照明賞
音響賞

計3部門ノミネート。主演女優賞は?これは信じられなかったなあ。





「Vanya and Sonia and Masha and Spike」

ノミネート作品の中で贔屓目なしに見た時、
この作品が一番完成度は高いと思います。
非の打ち所がない出来の良さ。
脚本も演出も俳優陣もセットもなにもかも
本当に素晴らしかった。
最初っから最後まで笑いっぱなしのコメディーなんだけど
観た後になんだか背中を押される人が沢山いるだろうと思える作品。
特に団塊の世代に観て欲しい作品なのかな。
こっちじゃ団塊って言わないだろうけど。
チェーホフの桜の園やらかもめ、ワーニャおじさんなどのエッセンスを散りばめながら
それをぐっちゃぐちゃに混ぜてコメディーに仕立てたような作品。
チェーホフを知らなくても楽しめるし知ってたら更に面白い。

アルツハイマーの両親が他界し看病も一段落した兄妹、
ワーニャとソーニャ。妹のソーニャは鬱病でそもそも引き蘢り。
ワーニャはソーニャと両親の面倒を観ることで家から出ない。
二人の生活費を稼ぐ大女優のマーシャがある日突然
年下のおばかな彼氏を連れて珍しく帰って来て家を売ると言い出す。
チェーホフが散りばめられてますね。
とにかくメインの3人のかけ合いが常に面白い。
演出も小気味よくてテンポがいい。
どの登場人物もしっかりキャラクターが立っていて
誰をとってみても面白い。
脚本は本当によくかけている。
どたばた喜劇なんだけど初老を迎えた三兄妹の哀愁がうまく見え隠れして
人生の幸せをしっかり考えさせてくれる暖かい作品。
昨年の暮れにリンカーン・センターの製作で
オフ上演がありもうオンに上がって来ているのだから
当然できが良い作品に決まっている。

脚本は Christopher Durang
活躍はしてるんだけどトニーはまだ獲得していません。今回とれるかな。
演出は Nicholas Martin
こちらも同じ感じ。二人して獲得して欲しいところです。

クリエイティブスタッフもさることながら
俳優陣は本当に素晴らしかった。
シガニー・ウィーバーは本当に凄いですね。
凄く似てる女優だと思ってみてたら本人だとは。びっくりしました。
「ギャラクシー・クエスト」という映画が大好きで
そのシガニーを思い出しました。本当にコメディーも上手い。
でも残念ながらノミネートされずなんですね。
他の二人はノミネートされてるからよしとするかな。

しっかり笑ってしんみりさせてくれて暖かい気持ちになれる作品。
秀作です。演劇的に良くまとまってる作品だと思います。
なので客観的に公正にみたらこの作品がかなり確率高いと思います。
でもそうは言っても色々と要素がありますからね。


作品賞
主演男優賞
主演女優賞
助演男優賞
助演女優賞
演出賞

計6部門ノミネート。「Lucky Guy」と同じ新作最多ノミネート。





さて予想ですが今の所今年の流れや勢いを考えると
「Vanya and Sonia and Masha and Spike」と「Lucky Guy」のどちらかという感じですかね。
個人的には「Vanya and Sonia and Masha and Spike」だと期待してますが
まだまだ侮れないところです。

でも本当の本当は「The Testament of Mary」にとって欲しいので
自分の評価と予想が違うわけです。
難しいですね。でも面白い。
ストレート作品は本当に好みも別れますからね。



さあ次はプレイのリヴァイヴァル部門。
これまた難しいです。



ベスト リヴァイヴァル ミュージカル 

2013-05-04 21:35:09 | トニー賞
さてこのブログを読んで参考にする人がいるのだろうかという疑問は置いといて
昨日に引き続き今日はベストリヴァイヴァルミュージカル部門について書いて行きます。
昨日もちらっと書きましたが選考対象が5つで選ばれたのが4つ。
ノミネートされない方が少ないわけですね。


Annie

Rodgers+Hammerstein's Cinderella

Pippin

The Mystery of Edwin Drood

の4本。
さて残念ながらもれてしまったのは・・・

Jekyll & Hyde

でした。まあ当然でしょう。本当にひどい仕上がりだったので。

ここで一応他の賞も目を通しておきましょう。

Outstanding Revival of a Musical or Revue

Passion
Pippin
Rodgers + Hammerstein's Cinderella
The Golden Land
The Mystery of Edwin Drood
Working: A Musical

「Annie」がもれてますね。
オン以外の作品も選考対象なのでまた幅広くノミネートされてます。
「Passion」ソンドハイムの名作。なかなか上質でよかったです。劇場のサイズがちょうどよかった。
「The Golden Land」これまたコアな作品。NYに移民するユダヤ人達の日常を描いた古い作品。
「Working」ウィキッドのスティーブン・シュワルツ作曲の名作。ニューヨーカーの日常を描く秀作。
勝手な予想としては「Passion」と「Pippin」の一騎打ちなのかな。

もう一つ。


Outer Critics Circle Revival of a Musical

Annie
Passion
Pippin
Rodgers + Hammerstein's Cinderella
The Mystery of Edwin Drood

リヴァイヴァル賞はこちらもオン、オフ関係ないようです。
トニーの4作品に「Passion」が追加されてます。
「Passion」は既にトニー賞を獲得してますからね。
当然評価の高い作品に違いありません。


以下追記です。すっかり忘れていた大事な賞。

Drama Leagues Awards Distinguished Revival of a B'way or Off-B'way Musical

Annie (B'way)
Marry Me a Little (Off-B'way)
The Mystery of Edwin Drood (B'way)
Passion (Off-B'way)
Pippin (B'way)
Cinderella (B'way)

トニーのノミネートに「Annie」と「Marry Me A Little」が追加。
「Marry Me A Little」はソンドハイム作品。
彼の代表作の曲を散りばめたOFFのレビューショウ。観れてないんです。
とここまでが追記。


リヴァイヴァル作品とひとくくりにしても何度もリヴァイヴァルされた作品もあれば
今回が初めての作品もあるわけです。
とは言えオンブロードウェイ上演に限れば今回のノミネーションでは
「Annie」以外は今回が初めてのリヴァイヴァル上演。
リヴァイヴァルの魅力は初演された当時の良さ、新しさ、作品の魅力を
どう今の観客にアジャストするのか。演出家の腕の見せ所ですね。
脚本や楽曲を大幅に変えることも多々あります。
オリジナルと比べて評価することもできるし
まったく別物として評価することもできます。
思い入れのある作品程評価が難しかったりするものです。
では作品の紹介に移りましょう。



「Annie」

1977年にオープンして97年に既にリヴァイヴァルを行ってます。
初演時は約6年にも渡るロングランを行い
なんとあのサラ・ジェシカパーカーがアニーを務めたこともあるんです。
作品、脚本、楽曲を含む7部門のトニー賞を獲得しています。
内容は映画化もされて日本でも上演されているのでおなじみですね。
恵まれない孤児のアニーが大富豪に貰われて幸せを掴むお話。
今回のリヴァイヴァル、
演出はソンドハイム作品の執筆、演出をいくつも手がける James Lapine
振り付けは今期「Bring It On」の振り付けでノミネートされてるAndy Blankenbuehler
脚本は Thomas Meehan
「The Producers」「Hairspray」今期は「Chaplin」なんかを書いてる人です。

作品の仕上がりとしてはよくまとまった子供向けの作品という予想通り感じ。
特に驚く事も感動することもなくよく知ってる「アニー」が観れます。
ただ何故今「アニー」を上演したのか?
20年記念のリヴァヴィヴァルを経て何も今上演する意義が感じられない。
はっきり言えばファミリー向けの観光客用の作品です。
子供達が一生懸命演じる姿や耳慣れた曲達に心は踊りますが
作品として評価される何かはあまり感じなかった。
因に来週から「gree」のスー先生が出演するそうです。
なんとも数合わせでノミネートされた様な気がします。

ノミネートはベストリヴァイヴァルミュージカル部門1つだけ。




「Rodgers+Hammerstein's Cinderella」

この作品、ディズニーのシンデレラとはまったく違います。
1957年にジュディー・アンドリュース主演で放送されたテレビミュージカルがオリジナル。
その後ブロードウェイでは1993年、1995年にNYシティーオペラの製作で初演されてます。
つまりリヴァイヴァル作品とはいえロングランベースで上演するのは今回が初めて。
おおまかな内容はご存知のシンデレラですが
最初の舞踏会ではガラスの靴は落とさないし、王子様は馬鹿でシンデレラに感化されて
選挙を行う事になるし、二度目の謁見でやっとガラスの靴を落とすなどなど。
2幕物のミュージカルに仕立てる為に色々と出来事が沢山あります。
特に2幕は突然民主主義を訴えて選挙に臨む人々を描く等なんだかちょっと脱線している感じ。
全体的にはコメディー仕立てでややブラックな雰囲気も感じるのですが
クオリティーとしては子供ミュージカルの域をでない完成度。
誰が観て楽しめるものなのかちょっと首を傾げてしまうかも。
個人的にはもっと夢に溢れたキラキラした作品を期待してましたが
ちょっとチープにまとめた感じで物足りなかった印象です。
ミュージカル界の巨匠が手がけた作品が
これまで大々的に世に出なかった訳がなんとなくわかります。

因に今回の上演版にあたって新しく脚本を書き直したのは Douglas Carter Beane
「Sister Act」「Xanadu」「The Nance」などを書いてる人です。
「The Nance」は今年プレイの主演男優賞にノミネートされてます。
演出は Mark Brokaw 最近ブロードウェイで活躍し始めた演出家ですね。

作品的に深みのない仕上がりではあるがまあよくまとまっているという感じですね。
もう少しバジェットがかけられてもっと豪華に上演できたらもう少し
評価が高かったのかと思います。期待よりも小振りな作品という印象です。
そして楽曲がクラシカルで優雅な感じなのがコメディータッチな脚本とあまりマッチしなかった気がします。
結構批評などの評価が高いのは不思議ですが主演女優はなかなか好演だった。
観たら幸せな気分にはなれるというのも好印象の要因ですかね。
でも受賞の確率はそこまでないかなあ。

ミュージカル部門ノミネート

ベストリヴァイヴァル賞
脚本賞
主演男優賞
主演女優賞
助演女優賞
編曲賞
衣裳賞
照明賞
音響賞

以外に9部門ノミネート。




「Pippin」

1972年に初演、約5年のロングランを達成してます。
初演時は演出・振り付けボブ・フォッシーがトニー賞を2部門同時受賞の計5部門受賞。
作曲はウィキッドのスティーブン・シュワルツ。
内容は旅芸人の一座が物語を上演する所から始まり
その劇中劇の中で主人公の王子が人生で何かを成し遂げたいと色んなことに挑戦するも
なかなか満たされないままなんでもない特別じゃない普通の人生こそが
満たされる何かなんだと悟っていく。
劇中劇という枠を利用して魔法の世界の虚構と現実の落差、フォッシースタイルが評価された作品。
今回のプロダクションは旅芸人の一座をサーカスと融合させて話題。
演出は「Hair」「Porgy and Bess」などで大胆なリヴァイヴァルが得意の Diane Paulus
振り付けは「Fosse」の Chet Walker
サーカス部分は世界的に評価の高い 7 Fingers のGypsy Sniderが担当している。

はっきり言うと今年はこの作品がリヴァイヴァル賞をとると思われる。
他の作品に比べて圧倒的に完成度が高くアーティスティックであり且つ新しい。
キャスト陣も今回のノミネート数が語るよう豪華で実力派ぞろいである。
特に初演時は男性が演じていた一座の座長を演じる主演女優は素晴らしい。
各ナンバーの完成度はなかなか高くフォッシースタイルの振りは秀逸である。
ただ個人的にはサーカス要素に特化したために作品の本来持つ
夢と現実の落差が希薄になってしまった感はある。
劇中劇にサーカスをふんだんに取り入れたために
繰り広げられる生々しい曲芸が印象に残り
主人公の心情に感情移入しにくい仕上がりである。
作品の突きつける人生観をあまり感じられなくなったのは
演出の意図かもしれないが個人的には少し物足りなかった。
とは言えどのナンバーもショーストップがおきる盛り上がりで
エンターテイメントとしては抜群の完成度である。
今年の最有力候補である。

ミュージカル部門ノミネート

ベストリヴァイヴァル賞
主演女優賞
助演男優賞
助演女優賞
演出賞
振り付け賞
美術賞
衣裳賞
照明賞
音響賞

計10部門ノミネート。今年のリヴァイヴァルでは最多ノミネートです。




「The Mystery of Edwin Drood」

今年は何かと名前を耳にするディケンズの未完の小説が原作です。
執筆の途中で他界してしまった推理小説なので
未だに結末がわからないわけですがそれを逆手に取ったのがこの作品。
1985年にオンブロードウェイで初演。
作品賞、脚本賞、楽曲賞、演出賞、主演女優賞の計5部門のトニー賞を獲得。
脚本・作曲・作詞のRupert Holmesは初めて作品賞と楽曲賞を一人で同時に受賞した人になったそうです。
今回の演出は Scott Ellis
「She Loves Me」「Curtains」やテレビドラマの「30Rocks」などで有名な演出家ですね。
振り付けは Warren Carlyle
今期は「Chaplin」の演出や「A Christmas Story」の振り付けなどで活躍してます。

これも劇中劇スタイルを上手く利用した作品。
未完の作品を観客と一緒に作り上げるという趣向で
小説通り途中で主人公のエドウィンが行方不明になるのですが
彼が死んだのか?生きてるいるのか?をまず一緒に決めて
次は誰が殺したのかを観客の投票で決めて行きます。
つまり作品の結末がいくつもあってその日その日で違うわけです。
なかなか面白いですね。
ディケンズの重厚な作品を下敷きにてはいるけど
寧ろパロディーと言っていい程コメディーとして成立している。
着想がとても素晴らしい。初演時の評価の高さが納得できます。

今回の仕上がりは作品の良さをとても上手く引き出せていてよくまとまっていました。
チープになりすぎず上質なエンターテイメントとして
楽しめた作品です。それぞれのキャラクターもしっかり立っていて
あまり粗のない作品という印象でした。
ただよくまとまって笑って観れるコメディーではありますが
リヴァイヴァルとして何か新しいわけではないという感じです。
作品の持ち味がしっかり堪能できるお利口な作品というイメージです。
そうなるとちょっと受賞には一歩及ばずかな。
なかなかまとまっててよかったんですけどね。
「Pippin」に比べると劣るかな。

ミュージカル部門ノミネート

ベストリヴァイヴァル賞
主演女優賞
助演女優賞
演出賞
美術商賞

計5部門のノミネート。


4本を振り返ってみてやはり「Pippin」が最もトニーに近い気がします。
作品自体もかなり盛り上がっているのでロングランが期待できる作品です。
さてさて次はベストプレイですかね。
勝手につらつら書いて行きますが自分の覚え書きのためなので。
どこまで書けるのかなあ。