世界一面白いミュージカルの作り方

早稲田発小劇場系ミュージカルプロデュースユニットTipTapのブログです。
HP≫www.tiptap.jp

今年も終わり。

2012-12-30 22:52:12 | tiptap
今年は激動の一年でした。

踊る吸血鬼の大阪公演
CDML2月本公演
アメリカの巨大電力会社のお芝居
オーストリアの皇太子のミュージカル
CDML8月公演

それからNY。

仕事としてきちんと演出助手をしたのも初めて。
完璧な一人暮らしも初めて。
NYでの生活も初めて。

とにかく初めてづくしの一年。
これからの人生の転換期であることは確かです。
とりあえず自分の道を選んでがむしゃらにできることをやった一年。
色んな人に沢山支えられて今年も精一杯頑張れた気がします。
そんなこんなで明日は大晦日。

NY名物ボールドロップを肉眼で観るべく
12時間の極寒立ちっぱなしに参加予定。
耐えられるかな。

さてイベント尽くしで書きそこねてましたが
学校もなくなったのでかなり観れました。
Close寸前のものもあって再見ものもたくさんありますが
一応書き記しておきます。


A Civil War Christmas
本当に感動した。アメリカ人に親しまれているクリスマスソキャロル(歌)をモチーフに
南北戦争時のクリスマスイブを描く群像音楽劇。演出も音楽のアレンジも脚本も本当に好きな感じ。
OnceとPeter~を足したような感じ。
リンカーンと妻、黒人兵と少年兵、などなどとにかくその当時の人々のささやかな
エピソードの積み重ねでしかないんだけど
あったかい気持ちになる良い作品でした。
楽器を演奏する俳優、ムーブメントでシーンを形作る俳優。
本当に観ていて飽きない。
終演後にトークショーまでついててよかった。
さすがNYTWという感じの作品でした。


13 Things About ED Carpolotti
おばあちゃんの一人ミュージカル。
本当にこんな年(70近い)になって一人で80分歌えるなんて。
それでけで感動してしまいます。
ストーリーもあったかくて良い話。
夫に先立たれた老婆に舞い込む夫が残した借金と秘密。
それがあたたかい夫の愛の証としてわかるラストはとても
しんみりします。


Radio City Christmas Spectacular
この時期の風物詩的なレビューショウ。
ラジオシティー・ホールのロケッツのショウなんだけど
まあ想像通りです。
なぜか途中で3D映画もあって一応工夫は沢山されてるんだけど
一回でいいかなあ。
でも一応今年で85年目だそうな。
それはそれで凄いなあ。


Annie
日本でもおなじみの子供ミュージカル。
まあよくできてました。まとまってる感じ。
以外にアニーが大きいのでびっくり。
セットも楽しめる工夫がされてていいんだけど
ちょっと全体的に物足りないなあ。
なぜ今これを上演するのかとい不思議。
やっぱりちょっと古い。


ELF
日本でもウィル・フェレル主演の映画がビデオのみ観れますが
季節もののコメディーとしてはなかなか面白い作品。
これも子供向けというかファミリーミュージカルなんだけど
やや毒もあり大人も楽しめるのかな。
好みとしてはもうちょっときつめのテイストで仕上げて欲しかったかな。
エルフとサンタに育てれた人間が成長してNYで騒動を起こす話なんだけど
まあハートウォーミングな感じで心はあったまる。
作品としてはそれで成功なんだと思う。
「隣のサインフェルド」という「フレンズ」並にヒットしたコメディードラマに
出ていたはげデブおじさんがサンタさんでした。
それだけでも個人的には嬉しかったからいいかな。


Murder Ballad
これは2回目。一応千秋楽を観劇。
相変わらず密度の濃い時間でした。
今回は全体が見渡せる席だったので演出的な意図がしっかり観れてよかった。
なかなか上手に空間を使っていて明かりのあて方もこだわりを感じた。
何気ないシーンでも計算された位置に立っているのはやはり美しい。
基本的にモチベーションと美しい絵の整合性をつけていくのが演出家の仕事。
よく演出された作品だと改めて感心。
俳優の熱も相変わらず高くてよかった。


The Phantom of the Opera
たまたま時間ができたので立ち見。
しかも二幕の途中で劇場を出なければだったので中途半端な感じ。
セットや演出はもう定番ものなんであれですが
久しぶりに聴いたらやっぱり音楽は凄いなあ。
この頃は本当にロイドウェバーは天才だったんだな。
新作はもうなんだかなあって感じだけど残したものは凄い。


Flipside The Patti Page Story
パティー・ペイジという国民的歌手のジューク・ボックスミュージカル。
日本ではテネシー・ワルツが有名。
今も存命の方で現役の歌手だそうです。
そこまで彼女の人生が波瀾万丈じゃなかったもんで
ドラマが希薄でした。
一応プライベートの自分とパティーページの乖離を描くんだけど
そこまでそれに伴う悲劇もおきないもんだからドラマとしては
何もおきない。
まあ観客はみんな知ってる曲だし楽しめるみたい。
ジューク・ボックスミュージカルは難しい。


Chaplin
こっちに来たその日に観て爆睡した作品。
今回はきちんと観れました。
コンセプトはすばらしい。白と黒を基調にしてセットも衣裳もメイクも全てが
様式として整っている。振りも映画を切り取ったように面白い。
スリリングな曲芸に近い各シーンの見せ場はなかなか見応えが有る。
エンターテイメントとしてはばっちり。
でも批評がかなり悪かった。
多分原因はストーリーと構成。
2幕で国外追放をされるあたりから唐突にドラマチックになって
感動できるシーンになるんだけどそこに至までがただの
見せ物の羅列になってしまいあまりドラマが生まれない。
さらに幼いチャップリンと母の悲惨な別れによる情景を繰り返し
みせるのだが最終的になにも消化されないのももったいない。
全体的にチャップリンを美化しすぎて毒気が足りなかった。
本当にやってることは面白くて凄いことなのにおしいなあ。


The Mystery of Edwin Drood
観客参加型ミュージカル。
ディケンズの未完の遺作「エドウィン・ドルードの謎」を上演する劇団が
観客に結末を決めてもらう為に作品を紹介しながら見せていいく。
最終的にはエドウィンという青年を殺した犯人を候補者の中から観客が挙手で選ぶ。
実際に人を数えて統計をとっているらしく選ばれた犯人が誰かはストーリーが進むまでわからない。
なかなか面白い趣向である。犯人、探偵、カップルなど色々と選ぶ要素があり組み合わせは
200通り以上もある。よく考えられた作品。
基本はコメディーなので真剣にみないで楽しむことだけ考えれば充分面白い。
リバイバル作品ではあるが古さはあんまり感じない。
アイディアと構成力のおかげで成り立つ作品。
トニー賞を5部門獲得だけのことはある。


Once
これも二回目。
何度観てもいい。
毎回同じ所で涙してしまう。
今回も主演女優はアンダー。
それでも充分よかった。
この繊細な空気はなかなか味わえない。
今回は休憩中に舞台上のバーで水を買った。


Fuerza Bruta
クラブみたいなのりのアートショウ。
とりあえず何でもあり。
ベルトコンベアーの上をひたすら走る男。
鉄枠の上でひたすら紙をまき散らして踊る男女。
宙づりで垂直にカーテンの上を追いかけっこする女。
アクリル板の上に水を溜めてそこでひたすら
水に飛び込む女の子達をただ下から観るとか。
アイディアも実行力も実に素晴らしいんだけど
別に中身はないのでただただ楽しむことに徹することが大事。
ひたすら大音量でダンスナンバーがかかってるので
それにあわせて踊ってられるような人におすすめ。
因に客席はありません。つねに立ちです。


Newsies
これも2回目。
若者達の踊りに凄いなあと感心するだけ。
やっぱりセットが好きになれなかったなあ。
踊りはいいんだけどねえ。
あとトニーの作曲賞をとったというのもなんとも解せない。
耳には残るんだけど決して名曲揃いではないんだけどなあ。


Peter and The Starcatcher
2度目。
やっぱり二回みると言葉のキャッチもあがってるから更に楽しめる。
これは本当に面白い作品。
何度観ても楽しめる。
原作を一度読んでおけば話もだいたいわかるからおすすめなんですが
1月の半ばで終わってしまうのが残念。
また観たいなあ。


A Christmas Story
またまた2回目。
なんと今回は主役子供がアンダーだった。
でもカーテンコールが終わるや否や下りる緞帳の向こうでみんなが彼に集まって讃えている様子。
どうやらこの回がデビューだったのかな。
どうりでコール中に感極まって涙してたのか。
とてものびのびとやっててよかった。
プレビューしか観てなかったので細かいところがいくつか変わっていてよかった。
やはり彼の演出は好きだ。
心があったまってかつゲラゲラ笑える。
まだ若手の作曲家コンビもなかなかいい曲を書く。
映画も24時間クリスマス前日に放送されていたしなんだか
かなり気に入ってしまった。


Holiday Guys
ブロードウェイで活躍する俳優のライブ的オフミュージカル。
クリスマスとユダヤの祭事ハヌカーを巡るクリスマスソング合戦。
なかなか面白かった。なにより開演早々最初のナンバーで
ギターの弦が無惨にも切れてしまうハプニング。
仕切り直すことになってしまいぐだぐだな感じもアットホームすぎて応援したくなる。
歌も踊りもさすがに上手くなかなか上質なライブであった。


Forbidden Broadway
昔は毎年新作が作られていたその年に上演されている
ブロードウェイミュージカルのパロディーショー。
最近はちょっと間が空いていたようだが
今年のあたまにあいたバージョンを観劇。
半分ぐらいのネタはわかった。
後半分はたぶん見れてない作品なんだろう。
とても面白かった。
まわりの客が信じられないくらい笑うもんだから
きっとどの作品もみたんだなあと。
こういう作品日本でも作って欲しいなあ。
観た人にしかわからない感って本当に面白い。
Onceのネタは本当に面白かった。


Cat On A Hot Tin Roof
スカーレット・ヨハンソン主演の
「熱いトタン屋根の猫」
残念ながらスカーレットの声がかれていた。
ベストコンディションで観たかったなあ。
まだプレビュー中だからまあこんなもんかな。
セットは綺麗だし芝居の質も悪くないんだけど
ちょっと芝居の繊細さや密度にかける。
声がかれていたせいもあり細やかなコントロールができないせいかもしれない。
豪華なプロダクションには違いないのだが
ちょっとまだ仕上がっていない感じである。
またオープンしてから観に行くべきかな。


今回はこんな感じです。

通算80本。

一月に20本ぐらいは観れた事になりますかね。
この調子でいけば年間200本ぐらいはいけるかなあ。
今年はどちらかと言えば不作らしいので
ちょっと寂しいですが
それでも十分日本では味わえないものを味わっています。
自分の糧にすべく来年からは更に積極的に活動しなくては。

まずは明日のカウントダウン。

生きて帰って来れるかなあ。
今年お世話になった方々、協力して頂いた方々全ての
幸せと感謝の念を込めてタイムズスクエアに向かいます。
どうやら初詣は夏までお預けみたいですが
素敵な新年を祈っております。

どうぞ来年も宜しくお願いします!



書き始め

2012-12-09 23:51:24 | tiptap
どこを見回してもクリスマスになってきました。
普通の家もちらほらイルミネーションの飾り付けがされていて
ただ街中を歩くだけでもわくわくしてきます。

なんとかここ半年あまり書いていた脚本が一段落して
気分転換に新しいものを書き始めようかと思っています。
とは言え書き始めるとまたその作品のことが始終頭のとこかにいることになり
結構それはそれで色々と思考が制約されるものです。
なのでちょっと書き出すってのは勇気がいります。
もうしばらくお休みして情報収集の日々にするかなあ。
そんなこんなでちょっとパソコンに向かわないようにしてたもので
ブログもちょいと書き損なってました。


さて二週間あまり書いてなかったので

今回は12本。


Who's Afraid Of Virginia Woolf

「ヴァージニアウルフなんか怖くない」って邦題で日本でも上演されてるし
エリザベス・テーラーの代表作品として有名な作品です。
初演の主演女優が一応今通ってる学校の創立者である
ウタ・ハーゲンということもありなんとなく縁のある作品。
アメリカの演劇史を変えたと言われるこの作品。
確かに言葉の応酬とキャラクターの濃さは凄まじい。
ひたすら夫婦喧嘩が続くんだけどそこに見え隠れする
愛と哀愁、人生への絶望、妥協。
エドワード・オルビーは
実際にウタ・ハーゲンと旦那のハーバート・バーコフ夫婦を
モデルにして書いたらしくなかなか興味深い。
何不自由ない人生のはずなのに満たされない現実。
不自由だらけの今は染みてこないけどこれが
ある程度年齢を重ねて人生を俯瞰して見れるようになった時・・・
またそんな年齢になってみたい作品です。
とてもいい仕上がりでした。


The Old Man And The Old Moon

ずっと観ようと思ってて観れなかった作品。
簡単に言うと「Peter and the Starcatcher」の学生演劇のり版。
歌あり笑いあり涙ありの音楽劇。
カーネギー・メロンという名門大学の演劇科のクラスメイトで作った劇団。
とは言え既に受賞歴もありこれから注目の劇団。
まだまだ若い俳優達なんで芝居自体はちょっと荒いし押しが強いんだけど
細かいとこまでこだわりが見えてとても楽しかった。
この作品も俳優全員が楽器を演奏する。
最近この手の作品が多いんだけどアコースティックな曲調で
どこか懐かしい民族的な感じのする音楽なのでなんだかあったかい気持ちになります。
何と言っても影絵を多様した演出でそれがなんともコミカルで和む。
俳優達の仲間感が半端なくて自分の学生時代を思い出して胸が熱くなりました。
こういう環境で関係で作品を作り続けられることは羨ましい。
学生時代に思い描いた理想的な形です。
今となっては現実的に難しいことだと思いますが
彼らには頑張って欲しいなあ。


Alvin Ailey

アメリカのダンス界を引っ張って来たアルヴィン・エイリーのパフォーマンス。
黒人的感性とバレエの融合を目指したアルヴィン氏の代表的作品から
まさに今のコンテンポラリーな物までを網羅した内容。
何よりも驚いたのは観客の盛り上がり。
ダンスパフォーマンスでここまで盛り上がるんだなあ。
NewYorkにとても根付いてるんです。
毎年恒例のショーなんだけどこれを楽しみにしてる観客がやって来るわけで
こういう浸透の仕方って素敵だなあと思います。
確かにとってもよかったです。
学割で本当に後ろの方だったから観づらかったのですが
充分楽しめました。彼らの身体能力といったら恐ろしい。
日本人の方が芸術監督をしているというのもびっくり。
なんだか嬉しいです。


Old Jews Telling Jokes

インターネットのジョーク投稿サイトを元にしたコメディー音楽劇。
ユダヤ人のあるあるネタが満載。
始めっから終わりまで客席は笑いっぱなしでした。
言葉が聞き取れれば本当に面白いんだろうなあと。
とは言え良く演出されていて多少聞き取れなくても充分面白い。
ユダヤ人ってどこか被害者ですって訴えているイメージがあるし
実際イスラエルで起きてる事なんか考えるとなんだか印象が悪いんですが
こうやって自虐的に面白おかしく自分たちのことを語ってくれるといいです。
まあこうやってシニカルな目線を持ってる人たちはラディカルに
世界情勢のことも考えてるんだと思いますが
なぜか観てる間にそんなことを考えてしまいました。
ちょうどガザの入植が発表された日だったもんで。
こんなコミカルなユダヤ人ばかりだったら世界はもっと平和なんだろうなあ。
ユダヤ人に限らずみんなそうですけどね。



The Nutcracker Mouse King

バレエで有名な「くるみ割り人形」のミュージカル化作品。
いやいや本当に失敗しました。
もっと調べていけばよかった。
それなりの劇場でやってるもんだから内容だけ調べて行ったら
なんだか児童劇団の発表会みたいな作品でした。
でもしっかりお金をとって上演してるわけでこれは本当に残念。
ひどかったなあ。
一応3週間ぐらいの上演期間があるしこんなもんでも
上演できるんだなあとびっくりです。
作品だけじゃなくて団体も調べて行かないと駄目ですね。
オフ作品はClose寸前にしか劇評が出なかったりするもんだから
失敗んの確率も高い。2時間近くあったし。疲れました。


Inner Voice

あとから知ったんですがこの作品結構注目度のある作品で
リンカンセンターの映像資料コーナーにも過去作品が収録されとりました。
オムニバスの一人ミュージカル三作品。
一曲30分程で延々一人の人が物語を歌っていきます。
実力派の俳優と注目の作曲家、脚本家、演出家のコラボレーションが
それぞれ三つ観れるわけでなかなか面白かった。
本当にこの空気感にはびっくり。

遭難死した兄について

アメリカ兵の未亡人について

アフガンで男の子として育てられた女の子について

それぞれの話に引き込まれ涙がこぼれます。
とても密度の高い作品達でした。
俳優も上手いし音楽がいい。
こういう実験的な試みができるのもいいなあ。
いわゆるワークショップの発表的な感じなんだけど
しっかり完成してるから見応え充分。
こういうのいつかやりたいなあ。


Jersey Boys

なんだかロングランには足が遠のいてしまうのですが
観たい物が観れなかったりするとふらっと行けるのがNYの素晴らしさ。
トニー賞獲得作品ですからきちんとしてます。
学割だから本当にオーケストラの一番後ろの席で
ステージの上半分がメザニンで切れてしまい観にくかったのですが
まあ値段的にしかたないかなあ。
どうせ後ろならメザニンの後ろのほうが嬉しいんですけどね。
もっと彼らの曲を知ってたら楽しめたんだろうなあ。
かなりコメディー色が強いので言葉がもっとわかればと思いながら。
僕だけかもしれませんが席が遠いとかなり聞き落としてしまいます。
多分子音を聞き取れないんだと思うんですが近い方が楽なんですよね。
話自体は結構簡単です。とは言えなぜこの作品がトニー賞受賞作品なのか
いまいちぴんときませんでした。
まあそれなりにしっかりしてて無駄もなく演出もまとまってるんだけど
そこまで素晴らしい感もなかった。この年が不作だったのかと調べてみると
ウェディング・シンガーがノミネートされてた。個人的にはウェディングの方が好きです。
まあ楽しい良い作品ですけど年齢的なものかな。


The Piano Lesson
ピューリッツアー賞受賞作品のリヴァイバル。
まだ黒人差別が激しい時代を舞台にある南部の黒人家庭の
家宝のピアノにまつわる話。本も芝居もなかなかよくて何より
セットが素晴らしい。なんとも丁寧に写実的に家を再現していて
家の床下から天井裏まですべてが見て取れる。
ここまで具体的に作れると芝居を作るのが楽だろうなあ。
なんとこの作品ただで観れました。
人気作品で売り切れだったのでキャンセル待ちでロビーで時間をつぶしていると
アッシャーをやりませんか?と声をかけられ
ただで観れるならと軽く引き受けた次第。
「アッシャー」というのはいわゆる客席係です。
こっちではそれなりのプロダクションになるとplaybillという決まった形の
プログラム的なものを客席で配るのですがそのplaybillを配って客席に案内する人を
「アッシャー」といいます。オンの劇場だと大体制服を来た熟練さんがいるもんですが
確かにオフだとボランティア臭が漂っていることがあります。
こうやってただで見たい人が志願してやってることもあるとはきいてましたが
まさか自分がやるとはね。
まあこれも良い経験でした。
作品は家族の歴史と信仰心と人種差別がテーマ。
こっちの演劇にはかかせないテーマです。
こういう作品を通して少しずつ認識が深まる事もいいもんです。


Working

これもリヴァイバル作品。
ニューヨークで働く人々への仕事についてのインタビューをまとめた本のミュージカル化作品。
作曲と脚本にはウィキッドの作曲家ステファン・シュワルツがクレジットされてます。
これはなかなかよかった。キャストがやや物足りないが内容がとてもいい。
モノローグとナンバーのバランスもいいしそれぞれのエピソードが現在版として改変されていて
2012年版としてきちんと作りなおしてある。
6人のキャストで40人近くのキャラクターを演じ分けながら
それぞれの仕事に対する価値観や悩み、希望、夢、現実、妥協などを語る。
特に一貫したストーリーやキャラクターがあるわけではないけど
よく構成されて見応えのある作品です。
こういう現実を切り取った作品は説得力があっていい。
働く事に何を見るかそれは人それぞれだけど
そこに人生が見えて来るのはなんとも心に染みる。
一貫した物語がなくてもそこに実際にキャラクターの人生を感じられれば
それはそれで心を動かされる物である。



Golden Boy

これは二回目。
プレビュー初日に観てからオープンでどう変わったのか?
劇評はかなり好評で嬉しい限り。
うん。
結構変わってました。細かなミザン、追加のセット、転換の上達などなど。
なかなかよくまとまってます。
劇評がいいのも頷ける。
席が一番前だった事も有り
かなり俳優の心情が細やかに感じられてよかった。
まあなんといっても俳優がうまいなあ。
ほんとうにほどよいんです。押しすぎず抜きすぎずいい塩梅なんです。
この作品自体はもはや古典なわけですが
古臭く感じないのは俳優達の体感がとても明確にテンポよくまったりしない。
にも関わらず雑にもならない。
演出のさじ加減がちょうどいいんだと思います。
ピアノレッスンも似たような時代ものなんですがやや押し過ぎ感があったんです。
こういう細かいけどやや抑えて観客に科白を感じさせながらもだれさせない感じ。
良いと思います。前も書きましたがセットが綺麗です。
転換がもっと簡単になればなあなんて思いますが気になるのはそれくらい。
結果的には悲劇で悲しい報われない物語なんですが
登場人物達の人間臭さがいい。
こういう重厚な作品が日本でも上演されることを願います。



BumBug the Musical

インド版クリスマスキャロル(レント風)ミュージカル。
結構面白かった。
隣ではまだあの「くるみ割り人形」ミュージカルやってましたが
同じ劇場でもこんなにクオリティーが違うってのも不思議です。
音楽がかなり好みでした。
レントチックな軽いロック・ポップサウンドにたまにインド音楽が混ざって来る。
客席もインド系の方が多くてインドネタで大爆笑。
NYでデリを経営して暮らすインド移民を主人公にインド系だけどNY生まれのアメリカ人との恋を描く。
クリスマスキャロルと同じでサンタの代わりに黒人のエンジェルなるキャラクターが
主人公と二人をくっつけようと色々とみせるって感じで進む作品。
俳優達はそこまで上手じゃないんですがまあそれなりに歌えて笑いも取ってた。
中身自体はそこまで感動できるわけじゃないけどあったかくはなる作品でした。
移民ものの作品が多いのもNYの演劇の特徴です。
それぞれの国ごとにコミュニティーのある街ですから色んな文化がそのまま根付いてます。
彼らにしかわからないことが沢山あるだろうし
その苦労や葛藤がこうして作品になるってのも面白い。
こういう作品は彼らにしか書けないしNYで上演する意義がある。
それをNYで観るってのはやっぱりいいことだなあ。


Starting Here Starting Now

これもオフのリヴァイバルミュージカル。
35年以上も前の作品なんですが特別にオリジナルキャストでの上演。
一応グラミーをとった作品だそうです。
前に観た「Closer Than Ever」の作詞・作曲コンビのブックレスミュージカル。
恋愛にまつわる悲喜こもごもをひたすら歌に載せてコミカルに時に切なくみせて行く。
もうキャストの年齢が凄い事になってるんで
なんだかちょっと心配になっちゃうんだけど
本当に3人で歌って踊っちゃうんだから凄いなあ。
確実に50オーバーの方々が休憩入れて約2時間半歌いっぱなしですからね。
客席もかなりの年齢層。
特別公演なもんで2回しかなかったから客席は満席。
みんな懐かしく観てたんでしょうね。
音楽はとうぜんいいです。
まあちょっと歌唱はご愛嬌な感じもありますので
贅沢はいえません。全盛期の彼らできいてみたくなりました。
これもやや席が遠くてマイクなしだったのでちょっと歌詞が聞き取れずに辛かった。
もっと言葉を磨きたいですね。



最近思う事が意味は仮にわかっても例えばそれが歌だとしたら
素敵にはまっているのかどうかの判断はできない。
日本語だとメロディーにのっかた歌詞のはまりが
ダサいなあとか滑稽だなあとか思ったりするんだけど
英語だとそこらへんの判断まではできないので
作品の評価としてそのへんのことは欠けてしまう。
台詞も同様で内容はわかっても
言葉としての美しさや逆に陳腐さがわからない。
あえてのダサさは客席の反応も伴うのでわかるもんだが
実際の善し悪しの感覚が英語力のない私には全くわからないのが残念だ。
変な話日本語で「愛してる」と連呼する曲があると相当恥ずかしかったりするが
やはり英語でも同じ恥ずかしさを感じるのだろうか?
どうやらそうでも無い気がする。
例えば「金」「金」「金」と連呼したらコミックソングであるが
「money」「money」「money」だとなんだかありな気がする。
日本語の曲のサビにはあまり言葉の繰り返しがみられないのは
そういう何かしらの気恥ずかしさを感じてしまうからだと思う。
「愛」「愛」「愛」だと恥ずかしすぎて歌にはならないけど
「Love」「love」「Love」だと名曲になる。

そういった意味でも一つ仮説が立てられるのだが
そもそも英語はリズムにあっていればある程度はまってしまう言葉なのかもしれない。
英語自体文章にそもそも決まったリズムがある。
日本語はリズムよりも音程を大切にする言葉である。
よって英語を音に載せる場合不自然差が際立つのはリズムの差異が大きいのだろう。
そもそも単語自体に音程的な制約がないのでかなり自由に音にのせられる。
日本語の場合はもともと無いリズムを無理矢理作ることになる。
そしてアクセントという音程があるのでその制約にのっとり音を載せなければならない。
更に言えば一つの文章に英語よりも沢山の音節がある。

I Love you → 4つの音節。
愛してる→ 6つの音節。きちんとした文章にすると「私はあなたを愛してる」となり13音節になる。

英語の歌詞を日本語に訳して音に載せると情報量が確実に半分以下になると言われる。
だからといって日本語でミュージカルを書く時に希薄な内容にはしたくないので
僕の歌詞はかなり音に詰め込み気味になるのですがこれは意図してやっている。

とにかく英語を音に載せる作業の方がなんだか簡単な気がして来る。
英語も日本語も堪能で作曲が出来る人に一度きいてみたいなと思う。
日本語の歌詞でたまに感じる気恥ずかしさを英語でも感じるのか?
そこらへんのことまでわかるようになるのはネイティブでない私には無理だろう。
でもとても気になるところである。

美しい日本語という言葉がある。
きっと美しい英語もあるのだろう。
日本人でも英文学者などはその美しい英語の美しさがわかるのだろう。
その美しさがわかる人に翻訳家になってもらいたいものだ。

また長々書いてしまった。毎週書かなきゃ駄目ですね。