さてペースを上げて行かないとなかなか消化できません。
まさに演劇賞シーズンまっ只中。
まずは5/13にOuter Critics Circle Awardの発表がありますからね。
今年のノミネーションは以下の4本。
Orphans
Who's Afraid of Virginia Woolf?
The Trip To Bountiful
Golden Boy
選考対象は13本。なかなか狭き門ですね。
もれた作品は以下
The Big Knife
Cat on aHot Tin Roof
Cyrano de Bergerac
An Enemy of the People
Glengary Glen Ross
Harvey
The Heiress
Macbeath
Picnic
「Grengary~」はアル・パチーノ
「Cat on ~」はスカーレット・ヨハンソン
「The Heiress」はジェシカ・チャスティン
なかなかスターの多い年ですね。
他の演劇賞もちら見してみましょう。
[Drama Desk Award Outstanding Revival of a Play]
Who's Afraid of Virginia Woolf?
Golden Boy
Good Person of Szechwan
The Piano Lesson
The Trip to Bountiful
Uncle Vanya
「Orphans」がもれてますね。
オフからは
「Good Person of Szechwan」ブレヒトの「セチュアンの善人」です。
暖かみのあるロックな作品でした。面白かった。
「The Piano Lesson」は黒人一家が亡くなった母親のピアノに振り回されるホームドラマ。
人種差別と家族の絆を描いた渋い作品でした。
「Uncle Vanya」は観れてないんですがチェーホフの「ワーニャおじさん」ですね。
[Outer Critics Circle Award OUTSTANDING REVIVAL OF A PLAY]
Golden Boy
Orphans
The Piano Lesson
The Trip to Bountiful
Who's Afraid of Virginia Woolf?
トニーとまったく同じノミネートラインナップ。
「The Piano Lesson」健闘してますね。
この作品アッシャーしてただで観たので思い入れあります。
[Drama League Award OUTSTANDING REVIVAL OF A BROADWAY OR OFF-BROADWAY PLAY]
As You Like It
Golden Boy
Macbeth
The Piano Lesson
The Trip to Bountiful
Who’s Afraid of Virginia Woolf?
こちらは「Orphans」が外れてますね。
代わりに「Macbeath」が滑り込み。
キャバレーのMC役で有名なアラン・カミングの1人マクベス。
演出は「Once」の Jhon Tiffany
スリリングで斬新で面白いけど何も今更感があったかも。
「As You Like It」はご存知「お気に召すまま」です。
これは見逃しております。
ここまでみると
Who's Afraid of Virginia Woolf?
The Trip To Bountiful
Golden Boy
は揺るがないですね。
個人的には「Golden Boy」と「Who's Afraid of Virginia Woolf?」の一騎打ちの様相。
ストレートプレイのリヴァイヴァルとなると
シェイクスピアからここ最近までと作品の幅が広いですね。
ゆうに400年以上もスパンがあるわけで同じ土俵で勝負してるってのが面白い。
近松門左衛門と井上ひさしが戦うようなもんですからね。
どう解釈してどう立体化するか。こちらも演出の見せ所。
「Orphans」
1983年初演の Lyle Kesslerのストレートプレイ。
後に映画化もされロンドンではオリヴィエ賞を獲得してます。
フィラデルフィアに暮らす孤児院出身の兄弟。
兄は弟を可愛がるあまり外出を禁じ
自分はチンピラ崩れの暴漢を行って生活をなんとかしている。
ある日襲った男から金をせびろうと家に連れ込むと
男はマフィアのボスだとわかり不思議な共同生活が始まる。
自分も孤児院出身の男は何かと二人の世話をやくのだけど
結局最後は抗争に巻き込まれ死んでしまう男。
生まれて初めて見つけた父親を失った二人の悲しみで幕がおります。
全体的にコミカルにポップに仕上げられていてテンポもよくわかりやすい。
だけどただそれだけな感じ。
疑似家族のような3人の生活に暖かさを感じるし
最後のシーンでの兄の悲痛な叫びには感動しましたが
オリジナルの脚本の解釈やイメージからあまり飛躍しない
まとまった作品という印象。
とは言えこのプロダクション、むしろよく幕が開いたなという感じですね。
当初兄役は「トランスフォーマー」や「ウォール・ストリート」の Shia LaBeouf だったんですが
マフィア役のアレック・ボールドウィンと馬が合わずに降板。
アレックは結構面倒な方なんですね。いろいろと私生活でも短気で扱いづらいと有名だそうです。
個人的には好きな俳優なんですけどね。
それで代わりに Ben Foster が演じる事になったわけです。凄いですねえ。初舞台みたいです。
弟役は Tom Sturridge
イギリスの若手俳優なんですが大好きな映画「パイレーツ・ロック」の主人公を演じていた彼です。
なんとこの3人を押さえて今回は主演男優賞にノミネート。なんだか意味深です。
演出は Daniel Sullivan
トニー賞受賞演出家ですが今期の「Glengary Glen Ross」はちょっと残念な仕上がり。
批評もかなり駄目でした。確かにあれはちょっと頂けなかったけど
こちらはきちんと仕事をしたという印象。
3人芝居で一杯飾り。何か盛り上がりのある作品ではないけど
こころに残る脚本。本は素晴らしい。
でも他の作品に比べると・・・よくまとまってるけど。
ベストではないですね。
今回のノミネートは
ベストリヴァイヴァル賞
主演男優賞 Tom Sturridge
計2部門。ちょっとさびしいですね。
「Who's Afraid of Virginia Woolf?」
1962年の初演のエドワード・オルビーのアメリカ演劇史を変えたと言われる作品。
トニー賞も獲得し、エリザベス・テイラーで映画化されオスカーを主演女優賞を含み5部門獲得。
因に初演はこっちに来て最初に通ってた学校の創立者ウタ・ハーゲンが主演女優を演じてました。
ウタと夫で演出家のハーバート・バーコフ夫妻を知るオルビーが
二人をモデルにして書き上げたという話もあるそうです。
さえない歴史教授の夫と学長の娘である妻。
人生の終わりが見えて来た二人の仲は冷えきっている。
父親主催のパーティーあとに後輩の生物学者夫婦が家を訪れる。
罵り合う二人の間に入る若い夫婦。
若い妻は泥酔、年老いた妻は悪態をつき若い教授を誘惑。
若者への嫉妬、現実のやり切れなさ、壊れた夫婦の絆。
年老いた夫婦をつなぎ止めていた想像上の息子。
その息子が死んだと告げる夫、悲嘆にくれる妻。
やるせない現実が突きつけられて幕がおりる。
とにかく信じられないくらいの暴言を吐きまくりお酒を飲みまくる老夫婦。
初演時はあまりの言葉の汚さに諸々問題がおきたとか。
確かに口喧嘩がもう延々続く訳です。
酒の勢いも手伝ってお互いを傷つけ合うんですが
なんだかこの二人が心の底から憎しみあってるわけじゃなく
お互いに罵り合うことで傷をなめ合ってるような気がしてならない。
成功を夢見て幸せを手に入れようと愛しあって結婚した夫婦の成れの果て。
現実はこんなもんだよと突きつけられた時
人生の意味、共に歩む相手に何を求めるのか。確かに深い作品です。
とにもかくにもこれだけ喋る芝居もなかなかない。
観てる方も本当に疲れます。
主演の大学教授を演じたのは Tracy Letts
この人なんと2008年に「August: Osage County」という作品で
脚本家としてトニー賞とピューリッツアー賞を獲得しています。凄いですね。
今回は主演男優賞にもノミネート。
相手役は Amy Morton
こちらも女優以外に演出家としてかなり活躍している方。
やっぱり主演女優賞にノミネート。
この二人も含め今回のプロダクションは
シカゴの Steppenwolf Theater Company
というかなり力のある劇団。
本当に素晴らしい俳優を沢山輩出していて
ブロードウェイにいくつも作品を持って来ています。
因に「Orphans」もこの劇団が初演です。
演出は Pam Mackinnon
2011年にピューリッツア賞を受賞した「Clyboume Park」でオビー賞を獲得してる方。
これだけの名優兼クリエイターとの仕事ってどうなんでしょうね。
想像すると大変そう。でも本当に上質にビビットにまとまってました。
セットの美しさもあいまって激しさと儚さがうまく共存していた気がします。
批評もかなり評判よく前評判ではベストをとりそうな勢い。
2004年のリヴァイヴァルもあったけどどうなのかなあ。
今期のノミネート
ベストリヴァイヴァル賞
主演男優賞
主演女優賞
助演女優賞
演出賞
計5作品のノミネート。かなり有力。
「The Trip To Bountiful」
1953年初演。Horton Foote の脚本。
初演時はトニーの主演女優賞獲得作品。
1985年には映画化されこちらも主演女優賞でオスカー獲得。
40年代のテキサス、ヒューストンを舞台に
年金暮らしの母親と暮らす息子夫婦。
貧しい家庭を支えているのは母親の年金。
病気を煩い寿命を感じ始めた年老いた母親は嫁とも上手く行かず
生きてるうちに一度生まれ故郷を訪れたいと年金小切手を握りしめて家出をする。
途中出征中の夫の帰りを待つ若い女性に会ったりしながら
辿り着いた故郷はすでに誰も住んでいない街になっていた。
迎えにきた息子夫婦に手を引かれ廃墟となった生家に後ろ髪を引かれながら幕が下りる。
今回は主人公一家を黒人家庭に設定を変えての上演。
これがなかなか一家の貧しさや母親の持ち前の陽気に説得力をもたせていた。
ただセットがなんだかすかすかしていて演出もこじんまりした印象。
劇場自体がソンドハイム・シアターというかなり大きなところなため
ちょっとちぐはぐな感じがしてしまって残念だった。
元々テレビ映画が最初の作品なのでシーン数が多く
演劇的にはちょっと作りづらいのかと思えた。
ただ脚本の素晴らしさや主演女優の熱演でかなり好印象の作品。
主演は Cicely Tyson 79歳。
2幕もののほぼ出ずっぱり。しかも凄くパワフル。
途中歌って踊ります。
この方は黒人女性として初めてエミー賞を獲得した大女優。
レジェンドなんですね。もちろん主演女優賞にノミネート。
義理の娘を演じるのは ヴァネッサ・ウィリアムズ。
この人もまた凄い。黒人女性初のミスアメリカです。
歌手としてもポカホンタスの主題歌でグラミー賞を獲得してます。
映画、テレビ、ミュージカルと活躍する人気女優ですね。
とにかく意地悪なお嫁さんが似合ってた。
演出は Michael Wilson
Horton Footeの作品をかなり上演しています。
どうやらライフワークのように二人で作品を作っているようです。
にしてもそこまで演出的にはぴたっと来なかった気がします。
別に悪目立ちする部分はないんだけどちょっと古臭いというか
普通という感じですかね。セットの問題もあったのかもしれませんね。
脚本や台詞にはぐっと来るし主演女優も素晴らしかったけど作品的に見ると
そこまでのできではないのかなあ。
設定を変えた部分はかなり評価されるけれどそれ以外は
俳優と脚本の力で成立している作品なきがします。
及ばない作品ではないでしょうか
今期のノミネート
ベストリヴァイヴァル賞
主演女優賞
助演女優賞 Condola Rashad
音響賞
計4部門ノミネート。
助演はヴァネッサじゃなくて若奥様の方。この夏にルヴォー演出のロミジュリでジュリエットやる方です。
「Golden Boy」
1937年初演。脚本は Clifford Odets
1939年には映画化。
1964年にはミュージカル化までされてます。
Clifford Odets の作品は今期は「Big Knife」がありましたね。
アメリカの古典演劇を代表する脚本家です。
ヴァイオリニストを夢見る主人公が生活の為にボクシングを始め
チャンピオンにのしあがり冨と名声を手に入れるが
代償に指を壊し音楽の道を諦め、更に試合で相手を殺してしまう。
自暴自棄になり心惹かれるマネージャーの愛人と共に
車を走らせ最後は事故死してしまう。
残された音楽の道に進んで欲しかった父親。
若い青年の人生があっという間に消えていく儚さが描かれる。
この作品には思い入れがありまして
こちらでお世話になっている日本人の美術家 鈴木幹子さんが
美術助手をされていて舞台稽古を覗かせてもらったのです。
本当に美しいセットなんですよこれが。
プレビュー初日とオープンしてからの2回も観てますからね。
結構作品の理解は深いかと思われます。
白黒映画のあの乾いた美しさが立体化されたような仕上がり。
決して押し付けがましくなく内側の躍動感がしっかり伝わって来る。
上質で美しく密度の高い作品です。
当時のNew Yorkの雰囲気、イタリア移民達の暮らし
人間の欲深さ、弱さ、現実の厳しさなどなど
随所に細かく見えて来る。
リンカーン・センターの製作で出演者も沢山いてかなり豪華です。
基本的に父親と息子ものに弱いのでかなり好きな作品です。
とにかく父親のあの切なさといったら。
芸術か成功か。
幸せを掴むために何かを犠牲にして
結局何も手に入らずただ失ってしまう悲劇。
まず脚本はかなり好み。
演出は Bartlett Sher
オペラ、ミュージカル、ストレートプレイと幅広く活躍する注目の演出家。
「South Pacific」のリヴァイヴァルでトニー賞受賞。
丁寧に心情が見える演出でなかなか見応えがありました。
なんといっても一つ一つのシーンが絵として美しかった。
セットと演出の相性がいいんでしょうね。
今回のノミネートは
ベストリヴァイヴァル賞
助演男優賞 Danny Burstein
助演男優賞 Tony Shalhoub
演出賞
美術賞
衣裳賞
照明賞
音響賞
計8部門のノミネート。なんとプレイ部門最多です。
個人的にはこの作品にとって欲しい!
前評判からすると「Who's Afraid of Virginia Woolf?」と「Golden Boy」の2つが有力候補ですね。
個人的には「Golden Boy」です。
ただ「Who's ~」はアメリカ演劇史にとって重要な作品でかつ今回のプロダクションはかなり出来がよかった。
アドヴァンテージがあるのかな。でも現代的なリヴァイヴァルとしては「Golden Boy」に軍配があがる気がします。
そんな希望的観測です。
ふう。やっと作品賞の紹介が終わりましたね。本当にどこまで書けるのかなあ。
まずはクリエイティブスタッフから攻めて行くつもりです。
ミュージカルのベストスコアとベストブックかな。
書けば書くだけ色々と浮かんで切りがありません。
まあそれはそれでいいか。
まさに演劇賞シーズンまっ只中。
まずは5/13にOuter Critics Circle Awardの発表がありますからね。
今年のノミネーションは以下の4本。
Orphans
Who's Afraid of Virginia Woolf?
The Trip To Bountiful
Golden Boy
選考対象は13本。なかなか狭き門ですね。
もれた作品は以下
The Big Knife
Cat on aHot Tin Roof
Cyrano de Bergerac
An Enemy of the People
Glengary Glen Ross
Harvey
The Heiress
Macbeath
Picnic
「Grengary~」はアル・パチーノ
「Cat on ~」はスカーレット・ヨハンソン
「The Heiress」はジェシカ・チャスティン
なかなかスターの多い年ですね。
他の演劇賞もちら見してみましょう。
[Drama Desk Award Outstanding Revival of a Play]
Who's Afraid of Virginia Woolf?
Golden Boy
Good Person of Szechwan
The Piano Lesson
The Trip to Bountiful
Uncle Vanya
「Orphans」がもれてますね。
オフからは
「Good Person of Szechwan」ブレヒトの「セチュアンの善人」です。
暖かみのあるロックな作品でした。面白かった。
「The Piano Lesson」は黒人一家が亡くなった母親のピアノに振り回されるホームドラマ。
人種差別と家族の絆を描いた渋い作品でした。
「Uncle Vanya」は観れてないんですがチェーホフの「ワーニャおじさん」ですね。
[Outer Critics Circle Award OUTSTANDING REVIVAL OF A PLAY]
Golden Boy
Orphans
The Piano Lesson
The Trip to Bountiful
Who's Afraid of Virginia Woolf?
トニーとまったく同じノミネートラインナップ。
「The Piano Lesson」健闘してますね。
この作品アッシャーしてただで観たので思い入れあります。
[Drama League Award OUTSTANDING REVIVAL OF A BROADWAY OR OFF-BROADWAY PLAY]
As You Like It
Golden Boy
Macbeth
The Piano Lesson
The Trip to Bountiful
Who’s Afraid of Virginia Woolf?
こちらは「Orphans」が外れてますね。
代わりに「Macbeath」が滑り込み。
キャバレーのMC役で有名なアラン・カミングの1人マクベス。
演出は「Once」の Jhon Tiffany
スリリングで斬新で面白いけど何も今更感があったかも。
「As You Like It」はご存知「お気に召すまま」です。
これは見逃しております。
ここまでみると
Who's Afraid of Virginia Woolf?
The Trip To Bountiful
Golden Boy
は揺るがないですね。
個人的には「Golden Boy」と「Who's Afraid of Virginia Woolf?」の一騎打ちの様相。
ストレートプレイのリヴァイヴァルとなると
シェイクスピアからここ最近までと作品の幅が広いですね。
ゆうに400年以上もスパンがあるわけで同じ土俵で勝負してるってのが面白い。
近松門左衛門と井上ひさしが戦うようなもんですからね。
どう解釈してどう立体化するか。こちらも演出の見せ所。
「Orphans」
1983年初演の Lyle Kesslerのストレートプレイ。
後に映画化もされロンドンではオリヴィエ賞を獲得してます。
フィラデルフィアに暮らす孤児院出身の兄弟。
兄は弟を可愛がるあまり外出を禁じ
自分はチンピラ崩れの暴漢を行って生活をなんとかしている。
ある日襲った男から金をせびろうと家に連れ込むと
男はマフィアのボスだとわかり不思議な共同生活が始まる。
自分も孤児院出身の男は何かと二人の世話をやくのだけど
結局最後は抗争に巻き込まれ死んでしまう男。
生まれて初めて見つけた父親を失った二人の悲しみで幕がおります。
全体的にコミカルにポップに仕上げられていてテンポもよくわかりやすい。
だけどただそれだけな感じ。
疑似家族のような3人の生活に暖かさを感じるし
最後のシーンでの兄の悲痛な叫びには感動しましたが
オリジナルの脚本の解釈やイメージからあまり飛躍しない
まとまった作品という印象。
とは言えこのプロダクション、むしろよく幕が開いたなという感じですね。
当初兄役は「トランスフォーマー」や「ウォール・ストリート」の Shia LaBeouf だったんですが
マフィア役のアレック・ボールドウィンと馬が合わずに降板。
アレックは結構面倒な方なんですね。いろいろと私生活でも短気で扱いづらいと有名だそうです。
個人的には好きな俳優なんですけどね。
それで代わりに Ben Foster が演じる事になったわけです。凄いですねえ。初舞台みたいです。
弟役は Tom Sturridge
イギリスの若手俳優なんですが大好きな映画「パイレーツ・ロック」の主人公を演じていた彼です。
なんとこの3人を押さえて今回は主演男優賞にノミネート。なんだか意味深です。
演出は Daniel Sullivan
トニー賞受賞演出家ですが今期の「Glengary Glen Ross」はちょっと残念な仕上がり。
批評もかなり駄目でした。確かにあれはちょっと頂けなかったけど
こちらはきちんと仕事をしたという印象。
3人芝居で一杯飾り。何か盛り上がりのある作品ではないけど
こころに残る脚本。本は素晴らしい。
でも他の作品に比べると・・・よくまとまってるけど。
ベストではないですね。
今回のノミネートは
ベストリヴァイヴァル賞
主演男優賞 Tom Sturridge
計2部門。ちょっとさびしいですね。
「Who's Afraid of Virginia Woolf?」
1962年の初演のエドワード・オルビーのアメリカ演劇史を変えたと言われる作品。
トニー賞も獲得し、エリザベス・テイラーで映画化されオスカーを主演女優賞を含み5部門獲得。
因に初演はこっちに来て最初に通ってた学校の創立者ウタ・ハーゲンが主演女優を演じてました。
ウタと夫で演出家のハーバート・バーコフ夫妻を知るオルビーが
二人をモデルにして書き上げたという話もあるそうです。
さえない歴史教授の夫と学長の娘である妻。
人生の終わりが見えて来た二人の仲は冷えきっている。
父親主催のパーティーあとに後輩の生物学者夫婦が家を訪れる。
罵り合う二人の間に入る若い夫婦。
若い妻は泥酔、年老いた妻は悪態をつき若い教授を誘惑。
若者への嫉妬、現実のやり切れなさ、壊れた夫婦の絆。
年老いた夫婦をつなぎ止めていた想像上の息子。
その息子が死んだと告げる夫、悲嘆にくれる妻。
やるせない現実が突きつけられて幕がおりる。
とにかく信じられないくらいの暴言を吐きまくりお酒を飲みまくる老夫婦。
初演時はあまりの言葉の汚さに諸々問題がおきたとか。
確かに口喧嘩がもう延々続く訳です。
酒の勢いも手伝ってお互いを傷つけ合うんですが
なんだかこの二人が心の底から憎しみあってるわけじゃなく
お互いに罵り合うことで傷をなめ合ってるような気がしてならない。
成功を夢見て幸せを手に入れようと愛しあって結婚した夫婦の成れの果て。
現実はこんなもんだよと突きつけられた時
人生の意味、共に歩む相手に何を求めるのか。確かに深い作品です。
とにもかくにもこれだけ喋る芝居もなかなかない。
観てる方も本当に疲れます。
主演の大学教授を演じたのは Tracy Letts
この人なんと2008年に「August: Osage County」という作品で
脚本家としてトニー賞とピューリッツアー賞を獲得しています。凄いですね。
今回は主演男優賞にもノミネート。
相手役は Amy Morton
こちらも女優以外に演出家としてかなり活躍している方。
やっぱり主演女優賞にノミネート。
この二人も含め今回のプロダクションは
シカゴの Steppenwolf Theater Company
というかなり力のある劇団。
本当に素晴らしい俳優を沢山輩出していて
ブロードウェイにいくつも作品を持って来ています。
因に「Orphans」もこの劇団が初演です。
演出は Pam Mackinnon
2011年にピューリッツア賞を受賞した「Clyboume Park」でオビー賞を獲得してる方。
これだけの名優兼クリエイターとの仕事ってどうなんでしょうね。
想像すると大変そう。でも本当に上質にビビットにまとまってました。
セットの美しさもあいまって激しさと儚さがうまく共存していた気がします。
批評もかなり評判よく前評判ではベストをとりそうな勢い。
2004年のリヴァイヴァルもあったけどどうなのかなあ。
今期のノミネート
ベストリヴァイヴァル賞
主演男優賞
主演女優賞
助演女優賞
演出賞
計5作品のノミネート。かなり有力。
「The Trip To Bountiful」
1953年初演。Horton Foote の脚本。
初演時はトニーの主演女優賞獲得作品。
1985年には映画化されこちらも主演女優賞でオスカー獲得。
40年代のテキサス、ヒューストンを舞台に
年金暮らしの母親と暮らす息子夫婦。
貧しい家庭を支えているのは母親の年金。
病気を煩い寿命を感じ始めた年老いた母親は嫁とも上手く行かず
生きてるうちに一度生まれ故郷を訪れたいと年金小切手を握りしめて家出をする。
途中出征中の夫の帰りを待つ若い女性に会ったりしながら
辿り着いた故郷はすでに誰も住んでいない街になっていた。
迎えにきた息子夫婦に手を引かれ廃墟となった生家に後ろ髪を引かれながら幕が下りる。
今回は主人公一家を黒人家庭に設定を変えての上演。
これがなかなか一家の貧しさや母親の持ち前の陽気に説得力をもたせていた。
ただセットがなんだかすかすかしていて演出もこじんまりした印象。
劇場自体がソンドハイム・シアターというかなり大きなところなため
ちょっとちぐはぐな感じがしてしまって残念だった。
元々テレビ映画が最初の作品なのでシーン数が多く
演劇的にはちょっと作りづらいのかと思えた。
ただ脚本の素晴らしさや主演女優の熱演でかなり好印象の作品。
主演は Cicely Tyson 79歳。
2幕もののほぼ出ずっぱり。しかも凄くパワフル。
途中歌って踊ります。
この方は黒人女性として初めてエミー賞を獲得した大女優。
レジェンドなんですね。もちろん主演女優賞にノミネート。
義理の娘を演じるのは ヴァネッサ・ウィリアムズ。
この人もまた凄い。黒人女性初のミスアメリカです。
歌手としてもポカホンタスの主題歌でグラミー賞を獲得してます。
映画、テレビ、ミュージカルと活躍する人気女優ですね。
とにかく意地悪なお嫁さんが似合ってた。
演出は Michael Wilson
Horton Footeの作品をかなり上演しています。
どうやらライフワークのように二人で作品を作っているようです。
にしてもそこまで演出的にはぴたっと来なかった気がします。
別に悪目立ちする部分はないんだけどちょっと古臭いというか
普通という感じですかね。セットの問題もあったのかもしれませんね。
脚本や台詞にはぐっと来るし主演女優も素晴らしかったけど作品的に見ると
そこまでのできではないのかなあ。
設定を変えた部分はかなり評価されるけれどそれ以外は
俳優と脚本の力で成立している作品なきがします。
及ばない作品ではないでしょうか
今期のノミネート
ベストリヴァイヴァル賞
主演女優賞
助演女優賞 Condola Rashad
音響賞
計4部門ノミネート。
助演はヴァネッサじゃなくて若奥様の方。この夏にルヴォー演出のロミジュリでジュリエットやる方です。
「Golden Boy」
1937年初演。脚本は Clifford Odets
1939年には映画化。
1964年にはミュージカル化までされてます。
Clifford Odets の作品は今期は「Big Knife」がありましたね。
アメリカの古典演劇を代表する脚本家です。
ヴァイオリニストを夢見る主人公が生活の為にボクシングを始め
チャンピオンにのしあがり冨と名声を手に入れるが
代償に指を壊し音楽の道を諦め、更に試合で相手を殺してしまう。
自暴自棄になり心惹かれるマネージャーの愛人と共に
車を走らせ最後は事故死してしまう。
残された音楽の道に進んで欲しかった父親。
若い青年の人生があっという間に消えていく儚さが描かれる。
この作品には思い入れがありまして
こちらでお世話になっている日本人の美術家 鈴木幹子さんが
美術助手をされていて舞台稽古を覗かせてもらったのです。
本当に美しいセットなんですよこれが。
プレビュー初日とオープンしてからの2回も観てますからね。
結構作品の理解は深いかと思われます。
白黒映画のあの乾いた美しさが立体化されたような仕上がり。
決して押し付けがましくなく内側の躍動感がしっかり伝わって来る。
上質で美しく密度の高い作品です。
当時のNew Yorkの雰囲気、イタリア移民達の暮らし
人間の欲深さ、弱さ、現実の厳しさなどなど
随所に細かく見えて来る。
リンカーン・センターの製作で出演者も沢山いてかなり豪華です。
基本的に父親と息子ものに弱いのでかなり好きな作品です。
とにかく父親のあの切なさといったら。
芸術か成功か。
幸せを掴むために何かを犠牲にして
結局何も手に入らずただ失ってしまう悲劇。
まず脚本はかなり好み。
演出は Bartlett Sher
オペラ、ミュージカル、ストレートプレイと幅広く活躍する注目の演出家。
「South Pacific」のリヴァイヴァルでトニー賞受賞。
丁寧に心情が見える演出でなかなか見応えがありました。
なんといっても一つ一つのシーンが絵として美しかった。
セットと演出の相性がいいんでしょうね。
今回のノミネートは
ベストリヴァイヴァル賞
助演男優賞 Danny Burstein
助演男優賞 Tony Shalhoub
演出賞
美術賞
衣裳賞
照明賞
音響賞
計8部門のノミネート。なんとプレイ部門最多です。
個人的にはこの作品にとって欲しい!
前評判からすると「Who's Afraid of Virginia Woolf?」と「Golden Boy」の2つが有力候補ですね。
個人的には「Golden Boy」です。
ただ「Who's ~」はアメリカ演劇史にとって重要な作品でかつ今回のプロダクションはかなり出来がよかった。
アドヴァンテージがあるのかな。でも現代的なリヴァイヴァルとしては「Golden Boy」に軍配があがる気がします。
そんな希望的観測です。
ふう。やっと作品賞の紹介が終わりましたね。本当にどこまで書けるのかなあ。
まずはクリエイティブスタッフから攻めて行くつもりです。
ミュージカルのベストスコアとベストブックかな。
書けば書くだけ色々と浮かんで切りがありません。
まあそれはそれでいいか。
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