タックの庭仕事 -黄昏人生残日録-

≪岩間 宏氏と二宮金次郎(『釧路新聞』)≫

P1140079 郷土紙『釧路新聞』に毎日連載されている岩間 宏氏の時事マンガは、捻りが効きすぎて理解するのに時間がかかることが多いが、「おぉ、これは」と感心する作品が突如出現する。
 写真は、10月18日付・第4面から切りとり、台紙に貼って転写した。二宮尊徳(幼名・金次郎)といえば、年配の人はすぐに、小学校の校庭に建てられた、薪を背負い本を読む少年の銅像を思い出すだろう。戦前の道徳教育において、期待される人間像として作り上げられた、勤倹力行の象徴的人物である。
P1090682P1090680_2 日本中の多くの小学校に銅像が建てられたことに関し、「昭和の初め頃、大日本帝国が戦争に利用するため銅像を全国に建て、戦後、GHQの命令で取り壊された」と説く者がいるが、これは真っ赤な嘘である。大日本帝国は、太平洋戦争中、金属不足を補うため銅像を供出させている。
P1110722P1110729_2 全国の歴史が古い小学校の半数以上で、校舎新築後もまだ銅像が残されているという。しかし、戦後にできた小学校では、修身(修身=二宮金次郎)という科目がなくなったうえに、荷物を背にし歩きながら本を読む行為が児童生徒への交通教育に反するとみなされ、銅像が建てられなくなったため、いざ銅像を探すとなると、岩間 宏氏の時事マンガのような事態が生じる。
 実際の二宮尊徳は、〝修身〟における勤倹力行の象徴とは異なる。少年期に飢饉や災害によって二宮家はつぶれたが、荒れ地の開墾・小作から得た小金の高利貸しで田畑を求め、一家の再興に成功した。後半生は、財政難に苦しむ領主層から領内農村の再興を依頼され、農政家として活躍した。歴史上の評価は、銅像の有無とは別ものである。 

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