「ニューウォーター」と聞くと、スポーツ飲料を想像する人も多いのではないでしょうか。実は、これは、シンガポールで名づけられた、飲用に適するレベルまで高度処理した再利用水のことなのです。
どのような高度処理かと言いますと、通常の下水処理後、
- マイクロフィルターという装置で、固形物、コロイド、細菌、一部のウイルスなどを除去。
- 逆浸透膜装置により、微細な大きさの重金属や、農薬等の有機物、ウイルスなどを除去。処理後の水にはごく低レベルの塩分と有機物が残るのみで、ほぼ純水に近い状態になるそうです。この段階で、大腸菌類も完全に除去できるそうです。
- 紫外線殺菌によって有機物を不活性化させ、phバランス調整のためアルカリ性化学物質を添加。
シンガポールでは、水の総消費量の約半分をマレーシアからの輸入に頼っており、マレーシアへの依存度を低減するため、新たな水の調達手段を検討していました。ニューウォーター開発研究が始まったのは1998年のことです。再処理費用は海水の淡水化費用の半分くらいとか。
ニューウォーターの上水利用では、ニューウォーターをいったん貯水池に放水して混合し、通常の浄化処理を施してから給水しています。これは、再利用水への心理的な抵抗感を和らげるとともに、処理過程で失われたミネラル分を添加できるという利点もあるそうです。
政府は、放水されるニューウォーターの全消費量に対する割合を、2011年までに2.5%に上げる計画のようです。
シンガポールの水資源を統括・管理する公共機関「PUB」が製造する再生水『NEWater』は、「グローバル・ウオーター・アワード2008」で、その年にもっとも環境に配慮した再生水を作り出す水道会社に与えられる「エンバイロメント・コントリビューション・オブ・ザ・イヤー」を受賞しました。
現在シンガポールは、国内、外資系産業に使われる工業用水の15%以上を供給しており、2011年までに国内で必要となる工業用水のすべてをニューウォーターでまかなえる見込みだそうです。