Sceneries through the lenses

その場の気分でもやっと投稿していくブログ。内容はころころ変わります…(汗。

キャズム

2014-06-07 22:21:58 | 
ビジネス本として、アメリカでは教育に使われてたりするらしい有名な本。
読んだのは結構前なんだけど、兎に角、読みにくかったという印象が強い。
非常に良い内容だけに惜しい。

キャズムはイノベイター理論の拡張として認識されている。
(イノベイター理論の本を読んでいないので、イノベイター、アーリーアダプターという区分けをしているだけ語られているのかどうかは分からないが…。)
キャズム理論はリンクの通り、アーリーマジョリティ(一般層)が製品を購入する(製品の普及の開始)とイノベーター・アーリーアダプター(物好き層)の購入には非常に大きなギャップがあり、このギャップを乗り越えられないと普及できないという理論である。

一般的にはそれだけで省略されていることが多く、キャズムの話が出た際、上記のことを言って、
ドヤ顔されることがほとんどである…。正直勘弁して欲しい。

キャズムの本質はこのキャズムを乗り越えるための方法論に関して1つの例を提示したことであり、
「キャズムが何か…」ってのは前座でしかないのである。
実際、本の章構成もそうなっている。

この本ではキャズムを乗り越える手法としてホールプロダクト(Whole Product)という概念が提示されている。
(この考え方は共感を覚えるものがある。)

ホールプロダクト、要は完成品。ただし、物理的なものだけではなく、必要なもの(たとえば、人による作業)も
含めて、完成品であるという。

たとえば、風呂のリフォームだったり、キッチンの場合、ただ部材だけではなく、
設置サービスもメニュー化されており、セットで完成品となっている。

ぶっちゃけ、普通に考えると自分で設計して、パーツを集めて、自分で組み立てるとか趣味とかじゃなければ、
大抵の人は勘弁して欲しいと考えるはずである。自分もそう思うことが多い(趣味の範疇は別だが。)
これが重要。全部自分で…という人は間違いなくイノベーターかアーリーアダプターだろう。

この手段をどのようにするかというのは色々な考えがある。部材を提供し、組み立てマニュアルのみ提供する。
これも1つの形であろう。ただし、これは組み立てて提供するよりも安価である必要があるが…。

ソリューションベンダーを名乗るには、部品ではなく、完成品を届ける(要は使える状態にする)
ことを自ら証明することが必須である。

ただ、危ういなと思うのだが、IT業界にはこの視点が非常に欠けている気がしている。
SIerなんて組み立てるのが仕事だし、組み立て経験を標準化して、組み立てたくない人に提供するのが使命だと
思うのだが、「言われたことを全部やります」とか、はっきりサービスを提示できないのに
「自分がいなければ、できないでしょ」みたいな、なんか勘違いしているのか?と思うことを良く聞く。

ビジネス上の事情だが、垂直統合製品を出し始めているメーカーの方がはるかに進んでいるというのが
悲しい。だから、SIer不要論が出てくるわけである。という自分もSIerに居ながら、SIを否定しているが…。


そして、もう1つ。これはキャズムの補足。
キャズムではホールプロダクトを届ける必要があると言っているが、これがどの層に対するホールプロダクト
であるかを強く意識する必要があると思っている。
これができない場合、価値は無い。

先のSIerなんかはこれを勘違いしていて、顧客とのギャップが非常に多く、駄目扱いされている。
SIerに求められていることは端的に言うと「システムとして動く状態にする」こと、なのに、
その部品の紹介と部品の納品しかできない。こんなのメーカーがやれば良いことである。
これが SIer だと名乗ってる奴らはメーカーのパラサイトに過ぎず、単なる無駄なコストだろう。
だから、ユーザーから厳しく当たられる、当然の結果だ。
ホールプロダクト化(メニュー化、標準化)できてないSIerは市場価値が無いのかもしれない。

また、既にメーカーがシステムとして提供を始めている状況において、
部品のみのメーカーは競争力がこれからどんどん落ちていくのかもしれない。
そういう観点から言うと、部品メーカー+SIerという組み合わせはシステム提供しているメーカーへの
対抗手段であり、しっかりタッグを組む必要があるだろう。


話は戻って、層の話。IT分野で言えば、IaaS, PaaS, SaaS と考えると早いかもしれない。
IaaS が欲しい人にとって、標準化・メニュー化された IaaS サービスはホールプロダクトと言える。
しかし、PaaS が欲しい人にとっては、この IaaS は部品でしかない。
IaaS に対して、ミドルウェア・構築・保守など提供して初めて、ホールプロダクトと言える。
SaaS も同様。

これを図で表記したものが下図である。



要はモノがあり、それを使えるようにするというホールプロダクト(A)がある。
ただ、ユーザーにとって、それで完成品でなければ、それは部品。
要求を満たすためにはもっと大きなホールプロダクト(B)が必要ということである。

ソリューションを考える上で、この考えがなければ、徐々に市場ニーズから離れていってしまうのではないかと
考えている。これは現在、事業企画をやっていて痛感している。


要はソリューションを求めている層に対して、ホールプロダクトが提供できなければ存在価値が無い。
それができない奴の解決方法が、「言われたことを全部やります」であり、これは人販であり、
奴隷である。まぁ、これも需要と供給があるので、1つのホールプロダクトと言えるかもしれないし、
それはそれで良いのかもしれない。

ただ、自分は勘弁して欲しい。
色々思うことはあるのだが、ホールプロダクトを変わりに作ってくれる人(SIer)がいるのであれば、
メーカーは気が楽な職種なのかもしれない。まぁ、製品を生み出すのは、別の意味で苦しいのだろうが。


事業企画、ソリューション企画、商品企画を考える上で、ホールプロダクト化するということは
完成品質基準を持つという品質管理そのものであると痛感している。
実際、自分の業務で一番力を入れるのは品質基準の入手、もしくは品質基準の確立である。

こういう品質管理は日本のお家芸だと思っているのだが、これがどんどん悪くなっているのかな…と感じる。
日本が世界に勝負できるのは、この品質管理だと、現時点での自分は確信している。


ということで第1回目でした。

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