意思による楽観のための読書日記

終活ファッションショー 安田依央 ***

30歳になる市絵は司法書士、広くて取り壊し直前のために格安の事務所兼住居を街の不動産屋を通して紹介してもらった。そこに、異母姉弟の基大(もとひろ)が同居人として転がり込んできた。基大は服飾デザイナー、奇抜なデザインでそこそこに有名らしい。街の司法書士として開業したのはいいが、なかなかお客は来ない。そこで通りすがりの老人の相談を受け付けることにし、毎週木曜日には事務所前に机を出して誰にでも相談にのることにした。

そうこうするうちに、街のお年寄りのあいだで、なんでも相談に乗ってくれる「先生」ということで名前が売れ出した。相談内容に、相続関係、遺言などの内容が多かった。そして、弟のファッション関係の仕事仲間のしがらみもあって、近所のお年寄りを集めて、自分が死ぬときに着せてもらいたい服装で、生きている今の間にファッションショーをするというアイデアに乗ることになってしまう。これが終活ファッションショー。

そして、その企画を進める間に、思いもよらぬお年寄りたち、そして若者も含めて悩みや家族の相談に関わることになるというお話。終活シミュレーションでは、現在と数年後を比較して、希望する葬儀の形、自分が死んだあとに残る人、葬儀に呼びたい人、心配事をまとめておく。そして、自分と大切な人、家族が現在何歳で、今後10年、20年、30年経過すると何歳になり、どうなっているだろう、ということも考えておくこと、これがシミュレーションである。

私も自分の親の介護をする世代になり、自分が介護されるときにはどうしていたいかを考えるようになったが、ここまで具体的には考えたこともなかった。葬儀の前にも介護があり、その前には病気や怪我という可能性もある。その前には子どもたちの結婚や孫の誕生もあるだろう。良いことは想像していても、悪いことや敬遠したいことはあまり事前には考えていないもの。そうした様々なことを考えさせられるお話である。

自分の親の介護が心配になる世代にはお勧めの図書。


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