意思による楽観のための読書日記

ジェノサイド 高野和明 ****

日本人が主人公だけれども、アメリカの小説のような、新人類誕生と現人類の戦い。

アメリカの大統領はバーンズ、アメリカが世界のカウボーイであり、父親に対して強い自分を見せたいというコンプレックスを持つエバンジェリカルな人物。中東で始めた戦争は泥沼化し早めの終結を試みている。あるとき、アフリカ大陸に新種の生命体が出現し、人類絶滅の可能性があるとの報告が上がってきた。1977年に提出された「ハイズマンレポート」、1.小惑星衝突などの宇宙規模の災害 2.地磁気の南北逆転など地球規模の環境災害 3.核戦争 4.疫病・ウイルスの脅威および生物兵器 5.人類の進化 である。大統領に報告されたのはこの5番目、新人類誕生の可能性であった。

アメリカCIAはスパイ傭兵を4名選抜、アフリカ大陸に出現したという新生物を殺しに向かわせるが、機密保持のために、その4人もミッション終了後は殺される運命。4名には致死率が非常に高い伝染病が発生したため、感染可能性のある部族民を数十名単位で殺してしまうという司令が与えられ、その際、人類でなく、今までに見たこともない生物を目にしたら迷うことなく殺すことと命じられる。4名のうち一人には難病の子供がいる。その子の命を救いたい、というのが傭兵応募のきっかけであった。

一方、日本の生物学大学院生の古賀研人は、突然父を亡くすのだが、その父からは死ぬ前に送られた研人あてのメールが届く。ネズミを使った新薬の研究を進め、不治の難病の特効薬を開発せよという。PCが1台、電源を入れても青い画面で立ち上がらない。そして500万円の入った銀行口座とATMカード。指示された場所にはアパートの部屋と実験用のネズミや実験器具一式があった。

アフリカ大陸に派遣された4名の傭兵、ピグミーの一族とアメリカ人生物学者ナイジェル・ピアースに出会う。そしてピアースは新生物の子供らしき生物を抱いていたのだ。4人の傭兵は新生物が無害の3歳の新人類であること、ピグミーの一人が新生物を生んだことをピアースから告げられ、CIAの司令の裏を知る。そして、ピアースはPCで日本の古賀研人と連絡をとるのだ。ピアースは古賀研人の父と生物学のフィールドワークをする間柄であり、お互いに研究情報を交換していた。そして、3歳の新人類はアキリ、難病に効く特効薬の作り方をシミュレーションするSWを日本人研究者であった古賀研人の父親に送っていたのである。そしてその研究は古賀研人に引き継がれ、傭兵の一人の子供の命を救う、という仕組みになっていた。全ては3歳の新人類がCIAや古賀研人の父をも巻き込んだプロットを組み上げていたのだ。

手に汗握るアフリカ大陸からの脱出劇、そして日本ではPCのSWを使った新薬開発、子供の命を救えるか、古賀研人の身にはCIAの手が伸びてきた。そして日本には新人類の姉で9歳になる子供エマがいることが判明、その子供こそがすべてのプロットの糸を引いていた。

アフリカ大陸、アメリカ大統領とCIA、日本の大学院生の研究者と古賀研人に協力する韓国人、そして謎の女性。最後には、アフリカ大陸からの脱出を行い、B737に乗り込んだ傭兵たちとピアース、そして3歳の新人類アキリ、エマが与えた指示通りに飛行すれば助かるとの言葉を信じる。アメリカ空軍のF22が緊急発進、バミューダ・トライアングル付近でミサイルを発射、しかし、F22もミサイルもB737を破壊できない。エマは海流、メタンハイドレートの噴出、F22の緊急発進とミサイル攻撃、すべてをシミュレーションしていたのだ。

手に汗握る展開であり、宵っ張りなら一晩で読める。



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