進化の気まぐれからか、脳ミソの増量に成功し、一見高度な知の獲得を為し遂げた、上等な生き物と、思い違いをしている我々人間も、又、環境に無意識に反応する生き物でしかないのである。しかしながら、産業革命以後、知能の進化のスピードは、地球に生まれた過去から、今に至る生き物の経験した事のないものであり、今生きていればチャールズもびっくりなのではないだろうか。
嘗て彼はマダガスカルから帰国後、思索を深め進化論なる説を打ち立てたのは有名であるが、その際今はあまり使われていないらしく耳にすることもない様だが、一つの単位を考え出した、進化の速度を表すもので「ダーウィン」といい一年間に百万分の一ずつ変化するスピードを“1ダーウィン”と表すらしい。つまり、石器を使用していた人類が、100万年かかって土器にたどり着いたとするとそのスピードは“1ダーウィン”という事であり50万年だと“2ダーウィン”という事になる。人を含むこれまでの生物の進化のスピードは一つの生命が感じることが出来ない緩やかなものであるのに、近代、我々人の脳ミソ、特にテクノロジーの進歩のスピードはどうなのだろうか。
僕の記憶…50年前自然の中を飛び回っていたあの頃、計算はせいぜい算盤、今はスパーコンピューター、機械を人間の能力の増幅機と考えた時、計算能力は何倍になるのだろう。同じ様に移動は黒い煙をはく列車から一人一台のマイカーあるいは、飛行機に、電話は黒いダイヤル式からポケベルが現れ、今はテレビ、インターネット等々の機能を併せ持つ携帯電話になった。一般の兄ちゃん、姉ちゃんもテレパシーに似た超能力を持つ程になったのだ。会話から発達したこの機能、軸策を伸ばし其々の神経細胞を接続させる能の発達を連想させるのである。つまりインターネット?という技で人類の脳ミソが一つのものになりつつある様に感じるのは、僕だけであろうか。 《頭目》
わいわいガヤガヤ、鬱陶しい梅雨を喜びお祭りさわぎをやっている命がいる、一方我々ヒト、毛皮を被った動物や鳥?など頭を抱えてふさぎ込む類もいる。体温を常に一定に保つカラクリを生存の武器にしている一団、内に脂をため込む奴もいるが、多くは高性能かつ精緻極まりない毛衣を纏い環境の温度変化に対応している。山里の茅葺き屋根の原理を感じさせる蓑にも似たこの衣、大変優れた雨合羽でもあるのだが、あまり激しい動きをすると水が逆流??滲み込んでくるのだろうか、雨の日はあまり活動的でない様子だ。
神から与えられた毛衣をほぼ脱ぎ去ってしまった我々ではあるが、やはり過去の記憶を脳ミソの奥にしまい込んでいる様で、気圧が下がり雨が降り始めると興奮した気もおさまり妄想に適した精神状態となるのだ。ちなみに、こういった鬱陶しい曇りや雨の日は、ことさら、原始的暴力精神を遺伝子の中に有している人間は、直に反応し「ボーッ」となるのであろうか、統計的に凶悪な殺生事件の発生が少ない様で、こんな日は、髪の長いひ弱な美女に似た、オカマの夜歩きも、わりと安全なのかも知れない。 《頭目》
「鞍馬口ん家」を覗くと以前と変わらぬ、満面に笑みをたたえた露木理恵さんが現れた。今、「楽町楽家」の企画により、『露木理恵(磁)・辻本恵子(陶)/鞍馬口ん家にならぶ小さな器展』が町家で開催されている。
露木理恵さんは以前より磁器にて蓋ものを中心とした作品を多く制作されているが、この度は蓋もの以外に花器や手のひらにおさまる小さな器たち…。町家の明かりの中で際立って見える青磁の色。その造形は、楽しげでタイムカプセル?はたまた海からのメッセージ?とも思えるようなものがあり、一点一点、手仕事の細やかさを感じるものである。
お二人とも「食」に大いなる好奇心を持ち、食いしん坊らしく、制作時においては、器の空間に何をどういう具合に入れるかを考えイメージしながら、磁土、陶土に向き合っている。器に入れられるものは、日本酒であったり、イチジクのコンポートであったり、様々な手作りお菓子…e.t.c.。
暫くすると露木理恵さんの小宇宙がお盆ではこばれて来た。水出しされた冷たい紅茶“アールレディ”が、小さな器に入れられ、それを口にした瞬間、「手から伝わる心地良さ」により私の体の細胞が喜んだ。
世知辛い世の中ではあるが、「一期一会」の心を忘れずにいたい…
《瑠素番虫》
『鞍馬口ん家にならぶ小さな器展』
辻 本 恵 子(陶) 露 木 理 恵(磁)
明日15日(日)まで (最終日17:00まで)
会場 「鞍馬口ん家」
京都市上京区上御霊中町456-4 地下鉄鞍馬口駅1番出口から南角を東へ徒歩20秒