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アースジュエリー

2008-06-02 09:31:38 | 工芸館の作家たち
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一本槍刺子という勇ましくも奇妙な名を持つ陶芸家、女である。実は何を隠そう我々天骨洞第三の特別構成員なのだ。雅名は僕の命名による。もちろん陶芸家として第一級の特技を有している訳だが、困った事に僕の言う事を全く聞かないのである。聞く耳を持たないという体なのだ。天日干しにしている作品、もう素焼きにいい頃合いだと思っていると、どこからか彼女が現れ素焼きに入れるべき作品の土を僕に断りもなく少しずつこそげとっていくのだ。彼女は特異な技の持ち主で手びねりや轆轤を思いどうり操ることは出来ないけれど、“口ひねり”というおおよそ考えもしなかった方法で小さな小さな壺を作るのだ。然るに彼女、寒いのはどうにも苦手らしく夏の終わり、秋の風が木の葉を散らす様になると姿を消してしまい、雪が融け、暖かくなると、何時とはなしに仕事場に姿を現し、えいえいとこの行為を始めるのだ。
冬は暖かい南の地で活動する季節労働者かもしれないが、まったく迷惑千万である。然るに彼女の制作する小さな不思議な形の小品は常に彼女達の生、輪廻と深く結びついており、圧倒的な必然性を有しているのだ。比ぶるに我々の創作はといば、屁理屈をこねくり回し、無用の長物をつくりたがる手合いがなんと多い事か、コンセプトという質の点において、大いなる開きがあるのは、残念なことだ。

今回、天骨洞からアースジュエリーを発信するにあたり大地と四季を感じさせる彼女の作品は、自然とのコラボレーションを試みようとする我々の考えと、同調する点も多く、是非参加させようという事になった。自然のサイクルと共に輪廻転生を繰り返す無心の技は、伊羅保釉を身に纏いリングの上に鎮座まします事になったのだ。天骨洞の周りの緑が大爆発を起こす頃、彼女は又どこからかやって来てブンブンブンと仕事場を飛び回り勝手気ままに“無私”の小品を作り始めるはずである。   《頭目》
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