ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

13/ザメッティ

2008年08月04日 | ネタバレなし批評篇
ロマン・ポランスキー初期の頃の作品を思わせるコントラスをきかせたモノクロ映像は、まるでオールドムービーかと勘違してしまうような独特の雰囲気と間が心地よい。屋根職人の青年がひょんなことから入手した〝死のゲーム〟の招待状。森の奥の怪しげな屋敷に導かれるまでのシークエンスは確かにミステリアスで、「この先一体何が起こるんだろう」という興味を観客にわかせるには十分な演出がなされている。

しかし、予告編等ですでにバレバレの「13人の同時ロシアンルーレット」というショッキングなシーン以上のハイライトはこの映画には登場しない。金の無い監督が自主制作でこのシーンを撮ってから営業に奔走したというだけあって切羽詰まった緊張感が漲っているが、その後の展開が拍子抜け。出資者が見つかってホッと気が抜けてしまったのだろうか、本作品と設定が似ている『ホステル』のような<死の館>からの決死の脱出劇や、仲のいい兄ちゃんとたいまんルーレットをはるような観客の興味を最期まで持続させるシークエンスが見当たらないのだ。

監督がこの映画にこめたという「殺さないまでも他者を排除して自分が競争社会でのし上っていける世界への疑問」というメタファーも、この作品の映像が求めているテーマとしてはあまりにも陳腐すぎていただけない。要するに、フランス映画オタクだった監督が作った映像(テクニック)先行の作品に、テーマ(思想)が追いついていないのである。自らが監督を勤めることでハリウッドに対してリメイク権を売り渡したというバブルアニ監督の、映画制作における動機の不純さが露呈してしまっている1本だ。


13/ザメッティ
監督 ゲラ・バブルアニ(2005年)
〔オススメ度 
 

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