ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

愛のむきだし

2009年02月19日 | ネタバレ批評篇
ちょっと見デキの悪い下ネタコメディがぎりぎり一歩手前でふみとどまっている、そんな感じのする1本だ。日本人にとっては少々わかりにくいキリスト教の“原罪”をテーマにした本作品が、ベルリン映画祭のフォーラム部門でなんちゃら賞に輝いたというから驚きだ。同じキリスト教内でも原罪については諸説あるようで、ネットでいろいろ調べてみてもイマイチぴんとはこなかったのだが、この映画の中では原罪=色欲に置き換えて我々日本人にもわかりやすいように説明してくれている。

欧米人でもひるむめちゃくちゃ重たいテーマを、ジャニーズ系の主人公ユウ(西島隆弘)とグラビア系のヨーコ(満島ひかり)をキャスティングして軽妙なタッチで描こうとした所に、おそらく園子温監督の狙いがあったと思われるのだが、その試みが成功しているかどうかは意見が別れるところだろう。父親の虐待が原因で心に“原罪”をかかえたユウ、ヨーコ、そして新興宗教0(ゼロ)の幹部コイケ(安藤サクラ)。物語は3人の歪んだ三角関係をベースに、家族、宗教、性、愛という普遍的な命題へと切り込んでいく・・・。

チャプター仕立の一人称で人物紹介をしていく構成やクライマックスの仁義なき戦い?などは、前作『紀子の食卓』と同じ体裁をとっているが、詩人でもある園氏独特の“言葉遣い”は残念ながら封印されている。パンチラ盗撮、近親相姦、レズビアンなど、原罪の変態性描写?についても日活出身監督に比べると明らかに腰が引けているのがわかる。まやかしの世界の中でボッキこそが真実の愛であると声高に叫んでいる割には、肝心の突っつきシーンが見られなかったのは手抜き?以外の何ものでもないだろう。たまたま同じ回で映画館に見にきていたAV女優のお姉さん2人も「私の方がよっぽどムキダシだわ」ときっと感じていたに違いないのだ。

そんな奇想天外なストーリーを唯一リアルワールド(この映画は事実に基づいているそうだ)に引き戻しているのが、『紀子・・・』におけるつぐみと同じポジションを守ったコイケこと安藤サクラだろう。アダム(ユウ)とイヴ(ヨーコ)を、まるで聖書に出てくる“蛇”のごとくそそのかし操るコイケ。異様なオーラを発しながら神父一家にしのびよる彼女の存在がなかったら、本作品はまちがいなく“愛のかわかぶり”に終わっていたことだろう。

愛のむきだし
監督 園子温(2009年)
〔オススメ度 


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