ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いおやじの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

紀子の食卓

2009年02月18日 | ネタバレなし批評篇
女子校生の集団飛び降り自殺シーンが衝撃的だった『自殺サークル』の続編という紹介だが、本作品のテーマはまぎれもなく“家族”。しかもその崩壊レベルはAAAで、『ALWAYS 3丁目の夕日』の鈴木一家が偽装家族にみえてくるほどだ。姉・紀子(吹石一恵)と妹・ユカ(吉高由里子)がそろって家出、悲観した母は自殺し、新聞記者の父・徹三(光石研)は必死の捜索の末“廃墟.com”という怪しげなサークルにたどり着くのだが・・・。

家族という劇場空間でそれぞれの役割を演じる登場人物たちの赤裸々な叫びが語られるナレーションは、園子温監督独特の言い回しが新鮮な響きをもって心に届いてくる。紀子、ユカ、徹三、そして“レンタル家族業”を営むクミコ(つぐみ)という4人の視点で物語は展開していくのだが、前作で集団自殺した女子高生たちとこのカルト・サークルを無理やり結びつけるロジックは特に必要なかったかなという感じ。まるで散文詩の朗読を聞いているかのような静謐さが、廃墟.com男や決壊ダム女のとってつけたくどすぎる解説(サスペンス・ホラー好きには受けても)によって台無しになっているからだ。

映画『エレファント』(ガス・ヴァン・サント監督)では高校銃乱射事件がTVゲームの延長線上に描かれていたが、紀子とユカ、つぐみや自殺した54人の女子高生もまた、仮想と現実のあやふやな境界にのみ込まれてしまった子供たちだ。与えられた役割を演じてさえいれば、学校や親からも文句は言われない。精神的に退屈な現実からの距離も保てるわけで、一見いいことづくめに思える。しかし、仮想と現実の摩擦はプレート岩盤にジワジワ蓄積された歪みのごとく突如として大地震を引き起こす。

この映画の場合、徹三の○○○○という型で一気にマグマが噴出するのだが、その後のシークエンスは少々引っ張りすぎで、せっかくの余韻が消えてしまったのは何とも残念。饒舌な園子温監督があえて語らないでおく演出を覚えれば、長尺傾向にも歯止めがかかるだろうし、少々お子ちゃま向けの作風からも脱却できると思うのだが。

紀子の食卓
監督 園子温(2005年)
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