ポン太よかライフ

得した気分、首都圏見て回りの旅、美術館散歩

五百羅漢、執念深い描き込みが面白い

2011-05-21 07:23:24 | 博物館、美術館行ってきました

TVやブログでの評判が良いので、江戸東京博物館で開催中の五百羅漢展を見てきました。
徳川将軍家の菩提寺として知られる港区・増上寺に秘蔵され、戦災を免れ初めて一挙公開された幕末の絵師、狩野一信の不思議な仏画です。
狩野派最後の絵師だそうですが、洋画も入り黒船も入港するという時代の雰囲気の中で、伝統的な題材や画法を引き継ぎながらも、
洋風の陰影法や、建築パースの様に正確な遠近法を取り入れて、観たこともない不思議な雰囲気を放ちます。

キャプションは分かり易さが話題になるほどこなれた語り口で、たとえば、15幅の論議では、
 フリーディスカッション、・・・表情に生彩があり、目を剥いて応戦している。さながら(朝まで生テレビ)である。
などの表現が使われます。

絵の大きさは、高さ172センチ、幅約85センチとかなり大きめで、その画面いっぱいに五人ほどの羅漢さんと他の人や物が極彩色の細密な描写で描かれています。
分かり易く練られた構図で、隅々まで描きこまれ、まるでよくできた劇画で仏教説話を見るような感じを受けました。
例えば蛮族の異教徒が仏教に帰依する場面を描いた19、20幅伏外道では、教化されどくろの首飾りを外して手を合わせる人相の悪い蛮族が描かれます。
21幅から始まる六道はますます筆がさえ、地獄の火を風で消そうとする羅漢さんがヒーローの様に迫力ある画面で描かれたり、
あの世にあっても戦いをやめようとしないどうしようもない輩が阿修羅とともに延々と描かれ今の世の戦争を思い起こさせたりします。
構図もカメラのショットの切り替えの様に、同じシーンを人と羅漢さんの立ち位置を変えて描いたりと、幕末らしい新しい工夫を重ねます。

神通で見せる羅漢さんたちの超人的な力は、一信の想像力をあますところなく発揮して愉快で見飽きることがありません。
七難では、人生で見舞われるかもしれない七つの災難を描き、安政2年(1855年)の大地震や、
1856年の台風による大洪水が江戸を襲ったことに取材した図は、先の東北大地震や津波の記憶がなまなしく思い出されました。
当時の人々もこの絵に普遍性を感じて身につまされる恐怖を感じたことでしょう。
時代を超えて人々の心にうったえるものがある強い力を持つ羅漢さんたちでした。

    
上野の東京国立博物館にも一信の同じ構図の羅漢さんが何幅かありましたので見てきました。
五百羅漢の二幅分を一幅にまとめて描かれたものでしたので、下絵だったのでしょうか。

久しぶりの東博は写楽展とブッタ展で賑わっていました。
近いうちにそちらも見に行きたいと思います。
今日は時間がないので、満開のユリノキの写真を撮って、レイアウトの変わった本館だけ見ることにしました。
外国人観光客もちらほら見かけ、上野にも人出が戻ってきたように思います。


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