郷土の歴史と古城巡り

夏草や兵どもが夢の跡

「木花咲耶姫」揖保川にまつわる話 

2019-10-28 10:11:04 | 地名由来(宍粟市・佐用郡・姫路市安富町)
このはなさくやひめ
「木花咲耶姫」 揖保川にまつわる話 

                                                    閲覧数1,195件(2010.4.15~2019.10.28)


木花咲耶姫

 西山で、さかんな歌垣が行われています。燃えさかる炎をかこみ、銅鐸の音に合わせて大勢の男女が今年の豊作をよろこび歌い踊るのです。このにぎやかな祭りをよそに、川のほとりで今宵も人待ち顔でたたずむ美しい姫の姿があります。

 それは、去年の歌垣の夜のことでした。
 踊りの輪の姫に、一人のたくましい男が近づき、「わたしは川向いの伊和の君というものじゃがそなたの名は」と、声をかけました。凛々(りり)しい瞳に見つめられた姫は思わず

 「はい、わたしは木花咲耶姫といいます」と答えました。



 こうして、伊和の君と木花咲耶姫は結ばれました。
「今夜もお待ちしています」
朝霜を踏んで帰っていく伊和の君の後ろ姿をいつまでも見送る姫。

 あれから一年。姫のもとに通いつづけた夫の足はある日突然とだえてしまいました。伊和の君は、大和朝廷から急な国替えを命じられ、最愛の姫に別れを告げることもできず、ひそかに出雲の国へと一人旅立っていたのです。

 それとは知らぬ姫は、ひたすら恋い、悩み、かなしみ、思い出の歌垣のざわめきをよそに揖保川に身を投げてしまいました。

 すると、その波紋の中から一羽の鶴が飛び立ち、伊和三山の空を何度も舞うと、恋しい夫の屋敷があった伊和の森に舞い降りました。

 ところがあたりに鶴の姿はなく、森の奥まったところに鶴に似た石が一つさみしく横たわっていました。
 後に人々はこの石を「鶴石」と呼び、ここに出雲の国に向かった北向きの社を建て、播磨国一宮岩神社と称(たた)えました。



(ハリマ一宮農協民話シリーズ)

揖保川と地場産業

2019-10-28 09:44:33 | 地名由来(宍粟市・佐用郡・姫路市安富町)
揖保川と地場産業
                【閲覧数】1,514件(2010.4.1~2019.10.28)




揖保川が育んだ地場産業

 揖保川は、山女魚(やまめ)や鮎の豊富な清流として知られているが、その水と風土が生み出した地場産業といえば、「ソーメン」と「淡口醤油」と「地酒」があげられるかと思います。

ソーメン

 ソーメンの歴史は深く、室町時代の古文書に記録されており、今や日本人好みの伝統の味として、日本全国で食されています。
 播州ならではの自然環境や風土が絶妙に織り成してできた逸品であり、それは、揖保川流域の肥沃で温暖な平野で生まれた良質の小麦を農業用水路の水車により製粉、揖保川の鉄分の極めて少ない伏流水(軟水)と、赤穂の天然塩を加えることにより酸化されない真っ白なソーメンが作り出されたことによります。

 その生産と品質の保持には、江戸時代には龍野の物産として、龍野藩は積極的な保護を加えてその発展を図った。幕藩体制が崩壊したあとも、民間では同業組合の組織をつくり、事業の取締り、職工賃金の標準化、水車粉ひき賃の協定などを定め、製品の改善につとめたという。これが今日の協同組合の基礎となった。「揖保乃糸」は夏の定番品として人気が高く、現在は宍粟市を中心に560戸の農家により、年間120万箱が生産され、全国の約33%のシェアを占めているという。





淡口醤油

 次に龍野名産の淡口醤油があげられる。龍野の鉄分の少なく有機物(汚れ)の少ない軟水からつくられる淡口醤油は、食材の色や風味を生かす調味料として、汁物、煮物、つゆなどに好んで使われ、関西料理には欠かせない。醤油とともに生産されるモロミも、定評があり、遠方に居住した播磨人は、その味が忘れられない味覚です。


▲龍野の醤油倉 


地酒

 揖保川水系の地下水を使った酒造は、宍粟市山崎町に蔵元が2(山陽盃・老松)、姫路市網干に1(龍力)あります。いずれも江戸中・後期からの伝統の味を引き継いでいます。

◇マメ知識 
宍粟は酒、龍野は(淡口)醤油なぜ?

 同じ揖保川の伏流水でも場所により成分(硬度:カルシウム・マグネシウムの含有量)が違うようです。ソーメンと淡口醤油の水は軟水で鉄分が少ないものがよく、酒には(酒こうぼの発酵に)一定のカルシウムが必要です。たつので酒造がうまくいかなかったのは、地下水にカルシウム分が不足しているからという。
 日本の淡口醤油のほとんどが、このたつので生産されている。その名品が出来上がった背景には、失敗の連続、試行錯誤の中で伝統の味の製法が生み出されたという先駆者の苦労の歴史がありました。