グリム童話と民間伝承に関心ある方の対話の広場

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★映画「ブラザーズ・グリム」を見てきました。

2005年11月19日 | Weblog
 メルヘン・ゼミで学生が「先生、今、グリム兄弟の映画をやっていますよ」というので、とにかく、見てきました。 説話研究者として、見たあとの感想は、とても複雑です。映画でのグリム兄弟は史実とはかけ離れています。
 先ず、グリム兄弟の名前が実際とは逆で兄がウィル、弟がジェイコブとなっている。さらにひどいのは、映画の冒頭でグリム兄弟は、魔物が森にいるように仕掛けては、これを退治して賞金を稼ぐ詐欺まがいの旅をしている。これでは、まじめで勤勉に民話を蒐集しドイツ語の辞書を編集したグリム兄弟がかわいそうだ。
 しかし、見方を変えて、もしグリム兄弟が今の時代に生きていたなら、このような映画を作っていたかもしれない。というのは、グリム童話における森は主人公が魔女や小びとや狼に出会い、恐怖を感じたり、冒険心を試されたり、不思議な体験をする場であるからだ。監督のテリー・ギレアムは、グリム童話の本質を見抜いて、見事に「魔法の森」を再現している。そしてこのファンタジー映画にはグリム童話の「いばら姫」、「白雪姫」、「ヘンゼルとグレーテル」、「灰かぶり姫」、「ラプンツェル」、「赤ずきん」、「蛙の王さま」のモティーフがさりげなく織り込まれている。
 これはきっと宮崎駿のアニメを凌ぐ興行成績を収めるかも知れない。
             奈良教育大学教授 竹原威滋