グリム童話と民間伝承に関心ある方の対話の広場

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★説話伝承学会公開講演「グリム童話と民間伝承」

2007年04月03日 | Weblog
グリム童話愛好家の皆さま
下記の講演会をします。
よろしかったら、聞きにきてください。
竹原 威滋

説話伝承学会2007年度大会・公開講演
期日: 2007年4月28日(土) 15時50分~17時 
会場:明徳館2階 21番教室
会場: 同志社大学今出川校地
(京都駅から地下鉄烏丸線「今出川」駅下車、3番出口を出てすぐ)


  グ リ ム 童 話 ・ 近 代 メ ル へ ン の 誕 生
-『蛙の王様』、『眠り姫』、『幸せハンス』、『三つの願い』を事例に-
                           竹 原 威 滋
 
 古事記やグリム童話など、説話集が生まれる時には、その時代の要求と編者の意図が込められているだろう。特に昔話が書物として編纂される時には、当時の音声による伝承とそれを文字化する編者の意図のせめぎ合いがあったはずである。グリム童話の編纂には、どのような時代精神と編者の意図が込められているのだろうか? グリム兄弟が昔話を集めた19世紀初頭は、ヨーロッパを席捲したナポレオンの激動の時代だった。当時、ドイツ語を話す人々はいたが、ドイツという国はまだ存在しなかった。グリム兄弟は、昔話の中に「フォルク」(民族、国民)共通の伝承を見いだそうとした。近代国民国家を立ち上げるためには、その国民に共通する固有の文化を想定せざるをえないのである。カルヴァン派のキリスト教徒であったグリム兄弟は、童話集を編むことによって近代市民社会にふさわしい倫理観、家庭像を提示しようとした。
 講演では、先ず、グリム童話の冒頭の話『蛙の王さま』の初稿、初版から7版に至る各版を比較することにより、グリム兄弟が伝承メルへンに近代のモラルをどのようにして加味したかを明らかにする。続いて、『いばら姫』、『白雪姫』を「眠り姫」話型群としてくくり、ヨーロッパの伝承資料を渉猟することによって、グリム童話以前のメルへンにみられる王不倫型、王重婚型、王子秘密婚型などの類話と比較しながら、メルへン・イコール・ハッピーエンド(王子結婚型)という近代メルへンの定式をグリムが生み出した過程を跡づける。さらに、ヨーロッパの伝承メルへンの類話にみられる「賭のモティーフ」を採り入れなかった『幸せハンス』と、中世の艶笑譚「三つの願い」に信心深い夫婦の話を付加した『貧乏人と金持ち』を考察することによって、近代メルへンの魁(さきがけ)となったグリム童話の特徴を明らかにしたい。