徘徊オヤジの日々是ざれごと

還暦退職者が、現在の生活と心情、そしてちょっとした趣味について綴ります。

人生の終章を迎えて・・・51(第3章・・・2)

2013-01-31 09:28:56 |  (第3章 尊厳ある死を)
あくまで本人の意思

 終末期にあって延命治療を続けるか否か。このとき本人自筆の宣言書がある場合はいいでしょう。それがないときは、本人に代わって家族が判断しなくてはならないのですが、それは決して家族のみの判断であってはいけないのです。あくまで本人の日ごろの言動から、本人の意思を推察したうえでの決断でなければならないのが原則です。

 親族が一致して「本人はこういっていた」と証言してくれれば問題はないのですが、1人2人の家族の記憶だけでは、“本人の意思が確認できた”とはいいがたいでしょう。

 前にもいいましたが、最近になって(2012年、民主党政権のころのことです)、①患者がもはや回復しえない「終末期」にあって、②二人以上の医師による判定があり、③延命治療を希望しない意思が明らかな患者に対して、延命治療を始めなくても医師は責任を問われない、という主旨の法案も提出されようとしていました。

 しかしその後政権が変わり、また「難病の患者等が自ら尊厳死を希望するよう迫られる恐れもある」という反対意見もあって、法律の成立にはまだまだ紆余曲折があり、時間もかかるでしょう。

 それからこの法案にしても家族のみの判断ではだめなのです。だから法的に厳密に考えると、20年前の私の義父の場合は、今はもちろん、たとえ上記の法案が成立した後であっても、問題なしとはいえないのです。

 また終末期患者の呼吸器を止めた医師が殺人罪に問われるのも、多くはこのためです。  (人生の終章を迎えて…52)に続く…

人生の終章を迎えて・・・50(第3章・・・1)

2013-01-29 09:08:20 |  (第3章 尊厳ある死を)
第3章 尊厳ある死を

尊厳死の要件

 そもそも終末期医療の問題とは、積極的に患者を死なせる行為を行うこと(積極的安楽死)と、治療行為の差し控え・中止(尊厳死)とに大別されます。

 前者は(今の日本では)いかなる場合も許されることはなく、実行した医師が殺人罪に問われることもやむを得ません。終末期に際して施す(あるいは施さない)処置とは、あくまで後者のことです。

 そして今の日本で安楽死(尊厳死)が合法的に許されるには、以下の4条件が満たされている必要があります(1995年の東海大安楽死事件の横浜地裁判決から)。

 その条件とは、①患者に耐え難い肉体的苦痛がある、②患者の死が避けられず、死期が迫っている、③苦痛を除くための方法を尽くし、代替手段がない。そしてこれは前にも述べましたが、④患者本人が安楽死を望む意思を明らかにしている、というものです。

 つまり法的には(あくまでまだ判例であって、正式に法律になっているわけではありませんが)、自らの死のあり方を決められるのは当事者である本人のみです。その意思がはっきり確認でき、しかも上記の諸条件が整っているときにはじめて尊厳死が許されるのです。  (人生の終章を迎えて…51)に続く…

魔女たちの雨を呼ぶ呪文・・・8(第3章・・・2)

2013-01-26 09:47:45 | ・魔女たちの雨を呼ぶ呪文
 リーゼはいさんで出発した。木々の間からかいま見る太陽の位置で方角をたしかめ、西に向かって歩きだした。木の枝とつるをふり払い、倒木の間をぬって進んだ。のどはからからだが、水はどこにもない。ところどころに木いちごが黄色い実をつけていて、それを口に含みながら歩いた。

 ときおり足元からバサバサと鳥が飛び立つ大きな音がして、そのたびごとにリーゼは身をちぢめた。遠くからウォーンというけものの鳴き声も聞こえる。森はしだいに深くなりいくぶん上り坂になってきた。

 小さな家でもないかとあたりを見まわしてもそれらしいものはどこにもない。上り坂はしだいに急になり、リーゼは木の枝や根につかまりながらあえぎあえぎ登った。体はくたくたで、手や足はひりひりして、のどがかわいて、のどの奥がひっつきそうだ。

 リーゼは斜面の落ち葉の上にすわりこんだ。いったいどこまでいけばこの山を越えられるのだろう。森の中の一軒家なんてどこにもありやしない。リーゼの目から涙が落ちてきた。つい先ほどの希望の灯はどこかへ消えてしまい、不安な気持ちだけが心をおおっていた。

 この分ではとても隣村にたどり着けそうにない。どうしよう‥‥やっぱり森をあまく見すぎていたのだろうか。もしかしたらあたし、だれにも知られずにこの森で死んでしまうのかしら?

 気がつくと西の空が赤くなっている。いつまでもこんなことをしていられない。気をとり直すとリーゼはふらふらと立ち上がった。そして今度はがむしゃらに山をのぼりはじめた。胸は爆発しそうで、頭はもうろうとしてきたが、それでもリーゼは無我夢中でのぼり続けた。

 山の傾斜が少しゆるやかになったと思ったとたん、踏み出した足をささえる地面がなくなった。

「キャー!」

 何が何だかわからないまま、リーゼの体は空中になげ出され、ついで頭のうしろに衝撃を感じた。そしてそのまま気を失った。

(魔女たちの雨を呼ぶ呪文…9)に続く…

魔女たちの雨を呼ぶ呪文・・・7(第3章・・・1)

2013-01-24 09:02:29 | ・魔女たちの雨を呼ぶ呪文
第3章 ドルーゼの森

 リーゼは森の中の細い道を一目散に走った。道は幾重にもわかれていたが、かまわずにどんどん森の奥へ奥へと走った。

 『森の中の道はそれをよく知っている者でなければ、一度入ったら戻ってこられなくなる。気をつけなさい』。リーゼは父親から何度も聞かされていた言葉を思い出した。
 
 しかし今のリーゼにとってはどうでもいいことだった。ばくぜんと、もう村には戻らないと考えていた。あるいはこの森の中で道に迷って死んでしまってもかまわない、とさえ思っていた。

 父親が追いかけてくるかもしれない。つかまらないようにとにかく先へ急いだ。

 道はしだいに細く、まるでけもの道のようになって、やがてそれも消えてしまった。リーゼはそこで初めて立ち止まり、草の上にすわりこんだ。

 心臓はどきどきと音をたて、小さな胸は張りさけそうだ。のどがヒリヒリする。手や足はすり傷だらけで血がにじんでいる。陽の光は森の奥まではとどかず、あたりは薄暗く、ひんやりと冷たい風が流れていた。

 リーゼの頭の中では、フォンデじいさんから聞いた話、父親や母親のこと、エミリアの死、これらのことがごちゃまぜになって駆けめぐっていた。それにあの臭い――人が生きながら焼かれたという臭いが、何度ふりきっても思い出され、鼻がむずむずした。

 本当はあたしたち魔女が焼かれるはずだったのだ。あの丘で焼かれた人たちはみんな、あたしたちの身代わりになって死んだのだ。それなのにあたしたちは村の人たちに何の恩返しもしていない。

 エミリアだって、本当は助けてあげられるのに見殺しにしてしまった。どうしてそんな村に平気な顔をして帰れるというの。それに、たぶん今から帰ろうと思っても道に迷って森から出られないだろう。

「あたし、もう村には帰れないわ」

 リーゼは声をあげていった。だれも答えない。遠くから木々のざわめきと鳥の鳴き声が聞こえるだけだ。リーゼは改めてこれからのことを考えた。

 ここには食べ物もない。雨やどりするところもない。夜になったら恐ろしいけものがやってくるかもしれない。どこかに小さな家でもないかしら。

 そうだ、おじいさんは『マギエル族は見知らぬ地へ引っこして暮らすようになった』といっていた。それだったら、きっとこの森にひっそり住んでいる仲間もいるわよ。だって『森の中の一軒家』ってよくお話に出てくるじゃない。

 こう考えるとリーゼは少し希望がわいてきて、ようやく立ち上がってあたりを見まわした。しかしどっちへいけばいいのか見当もつかない。

 いいわ、どっちにしてももうルーダン村には戻らないのだから、反対の西に向かっていこう。そうすればいつかはこの村をぬけて隣の村にいきつくだろう。そうだ、それがいい。もしかしたら、隣の村は魔女裁判などとは縁のないところかもしれない。

 そうだったら、あたしはマギエル族の一員でも何の術も使えないのだから、ふつうの人間としてどこかで働かせてもらって暮らせばいいのよ。

(魔女たちの雨を呼ぶ呪文…8)に続く…

十勝の里山をあるく・・・16

2013-01-22 09:16:43 | 十勝の里山をあるく
音更町・十勝が丘展望台より

 寒さも一段落してまた歩くスキーに行ってきました。私が好むのは、除雪などしそうにない小道や、あるいは冬場は一面雪におおわれているので、道に関係なく歩くことです。

 ほとんどは新雪の上を進むので、雪の締まっている春先以外はスキーが雪に深く沈み込んで、ふつうの歩くスキーやクロスカントリー用のスキーでは用をなさず、私はもっと厚手の簡単な山スキーを愛用しています。

 この日は十勝が丘展望台からアサヒザワ川に沿って一巡りするコースを歩きましたが、雪が深くて意外と時間がかかりました。








愛用のスキー


←2万5千分の1地形図「十勝川温泉」より

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