徘徊オヤジの日々是ざれごと

還暦退職者が、現在の生活と心情、そしてちょっとした趣味について綴ります。

あらしの夜明け・・・52(第3章・・・13)

2014-11-30 05:16:51 |  (第3章 再会)
(ふん、言葉がわからないと思って、本当は何をいっていたかわかったものじゃない。何といってもあいつはやつらの仲間なのだから)とグズリは思ったが、口にはしなかった。

「こうなったら殺し合いでも何でもかまわない。たがいに命をかけてたたかうまでだ」

「森を焼かれ、すぐそばの谷をあらされてだまっている手はない」

「やつらはわしらをばかにしているんだ。わしらの決意のほどを見せてやる」

 村の者たちは口々にこういって、すでに話し合いの大勢はいくさに傾いていた。モノブは何とか全面対決だけは避けられないものかと考えていたが、かといって妙案があるわけではない。

「やつらは白いヤリのほかにも、強力な弓矢や、身を守るよろいや、相手の攻撃を避けるためのたてももっているという」

「それはタカトがいったまでのこと、信用できん。だがやつらがたとえどんな武器をもっていようと、わしらの兵力は双方の村を合わせると40人、やつらの戦力はせいぜい20人だ。負けるわけがなかろう」

「それに神もわしらをお守りくださるじゃろう。やつらはもともとわしらのものだった天と地をかすめとったばかりか、森を焼き、死者をはずかしめた者どもだ。そんなやつらに神が味方するとは思えん」

「の半年の間、わしらはどんなに耐えしのんできたことか。だがそれももう終わりだ。わしらにもがまんの限度があることを教えてやる」

 村の者たちは次々と勇ましい発言をする。

(村の人たちは必死なのだ。だがもっと必死なのはむしろ彼らの方だ)

 タカトはこう思っていたが、何もいわなかった。モノブもそれ以上はいえなかった。

(あらしの夜明け…53)に続く…
 

北海道の里山をあるく・・・20

2014-11-26 06:26:41 | 北海道の里山をあるく
札幌市・西岡水源地

 この日は札幌市街のすぐ南側にある西岡公園に行ってきました。

 西岡水源池は明治期に旧陸軍の水道施設として建設され、1971年まで上水道として利用されていましたが、現在池周辺は公園として整備されています。

 水源地から白旗山方面へ抜けようと思ったのですが、通る予定の道が通行止になっていたりetc.で、結局白旗山はあきらめ、池周辺をめぐって西岡霊廟の方を歩いてきました。

 それでも天候もよく、多くのハイカーや野鳥観察の人たちが訪れていました、


西岡水源池


水源地の取水塔


←昭文社発行1万5千分の1スーパーマップル「北海道道路地図」より

←このあたり


北海道の里山をあるく・・・19

2014-11-21 05:14:29 | 北海道の里山をあるく
札幌市-当別町・あいの里北方

 札幌では本格的な雪の季節になると行けるところは限られてしまうので、根雪になる前にと思って出かけてきました。

 地図をながめると、あいの里の北方、札幌市・石狩市・当別町3市町の境に、大河にはさまれた面白い地形が目につきます。石狩川の河川改修に伴って残された茨戸川(旧石狩川)と周辺の小さな湖沼群です。

 この日は学園都市線拓北駅に降り立ち、まずはこの湖沼の一つ・ペケレット沼に向かったのですが、地図では結構大きく描かれていても、実際は遠くに小さな水面が見えるだけでした。

 茨戸川にはさまれた半島のような細長い地域は「茨戸川緑地」と名付けられ、きれいに整備されていました。また川辺には、何か食べられる物があるのでしょうか、キタキツネやトビがたくさん集まっていました。


茨戸川と生振(おやふる)大橋


巨大なポプラの木


茨戸川緑地内の木道


キタキツネとたくさんの鳥たちの群


←2万5千分の1地形図{札幌東北部」「太美」より

←このあたり

あらしの夜明け・・・51(第3章・・・12)

2014-11-17 04:42:34 |  (第3章 再会)
「だからいったではありませんか、モノブ殿。やつらには話し合いなど通用しません。力づくで追い出すしかありません」

「そのとおりです。もういくさしかありませぬ」

 スクやグズリ、それから村の者たちもみな強くいくさを主張する。

「おぬしらはよほど殺し合いが好きらしいな」

「殺すなどとめっそうなことをいわないでくだされ。わしらはやつらとはちがう。わしらは、やつらがまたあの船でこの地を出ていってくれれば、それでいいんだ」

「彼らはもうふるさとには帰れない。この国のどこかに安住の地があるとも考えないでしょう。だから彼らも命かけている。いくさになれば殺し合いしかない」とタカトがいった。

「だまっていろ、この役立たずが。だからおれはタカトをつれてくることに反対したんだ」

「口をつつしめ、グズリ。タカトは立派に役目をはたした。われらの思うようにはならなかったが、タカトのせいではない」

 モノブがタカトをかばっていった。

(あらしの夜明け…52)に続く…

あらしの夜明け・・・50(第3章・・・11)

2014-11-13 05:12:26 |  (第3章 再会)
「タカト、何といっているんだ。作業をやめるのかやめないのか、どっちなんだ」

 スクが大声でいった。タカトは首を横にふった。

「それなら力ずくでもやめさせてやるといってやれ」

 スクはいかりをあらわにさらに大きな声でいった。

<力ずくでも作業をやめさせてやるといっている>

<われわれはあらそいは好まない。だが力ずくというのなら受けてたとう>

 カニイは断固とした口調でいった。双方とも一歩もゆずる気配はない。タカトはだまってしまった。

「何といっているんだ、タカト。どうせやつらも、いくさは望むところだとでもいっているのだろう」

「どうなんだ、タカト」

 タカトは口を真一文字にむすんだまま首を横にふった。

 話し合いはもの別れにおわった。スクや村の者たちは体をふるわせていかりをあらわにしていたが、相手はヤリをもっていても、自分たちは丸腰だ。今はとりあえず引きかえすしかない。10人は一旦村にもどった。その中でモノブとタカトだけがふさぎこんでいた。

(あらしの夜明け…51)に続く…