「ナンバ歩き」をご存知だろうか。
よく卒業式などで緊張した子供が、右手と右足、左手と左足を同時に出しながら歩く、あの歩き方だと思われている人が多い様だが、正しいナンバ歩きはちょっと違うらしい。
ナンバ術協会最高師範の矢野龍彦氏によると、通常の歩行は、腕を前後に振って歩くことで身体にねじれが生じるが、ナンバ歩きは体にねじれを生じさせずに歩く歩行法なのだという。
ナンバ歩きは、身体は正面を向けたまま、右半身と左半身を上下に使う。それに伴って、足と同じ側の肘から先を上下に動かすのである。右足を出した時は右腕が下にさがり、左腕は上にあがる。左足を出した時は、左腕が下にさがり、右腕が上にあがる。手のひらの向きは、下がるときは下に向き、あがる時には上を向くので、踊っている様な手の動きである。
言葉で説明するには限界があるので、興味のある人はYouTubeの動画で「ナンバ歩き」と検索して見てみるとよく分かると思う。
その歩き方をもとに走ると「ナンバ走り」になるということで、これはかつての飛脚の走り方らしい。長距離を走るのに優れた走り方なのだそうだ。
土曜日のジョギングの日、ナンバ走りを試してみた。
トータルで、たった3キロ程の距離であるが、最近は折り返し辺りで、大分疲労を感じる様になってきたのだ。
それで、ナンバ走りを周囲の人に気づかれないように、控えめな手の動きで取り入れて走ってみたところ、これがなかなか良いのである。
ナンバで走ると体が軽く感じられる。ナンバ走りから、腕を前後に振る普通の走り方に変更してみると、ナンバ走りの優れた点がより実感できる。腕を振り始めると同時に、体が重くなるのだ。まるで急に重力がかかるみたいな感じ。不思議だ。
先人が考えたナンバ走り。何百年の時を超えて伝承された走り方。それを現代人である私が知って走っている。何だかうれしい。
若い頃はその時代に流行っていることばかりに目が向いたけれど、年を取るに従って昔の事に目が向くものだ。
先人達の残してくれた様々な物が素晴らしく、日本人に生まれた事をうれしく思い、日本の文化が益々好きになる。