それは「ロンリーチャップリン」1987年に流行った曲だ。
30歳頃、3ヶ月間だけ滝川市にいた。
その頃、レンタル屋さん開設準備のアルバイトをしていた。
毎日、何万本とあるレンタルビデオのパッケージを、プラスチックの袋に収納してドライヤーで熱を当て、袋を縮めてパッケージに密着させるという、シュリンク作業などをしていた。
そんな毎日を過ごすうち、気の合う若い子が何人か出来た。私はバイトの中では最年長。みな20代だった。
夫が出張の時、仲の良い数人で我が家で飲み会をしたこともある。カラオケスナックに行ったことも。
特に親しかったのは、20歳の女の子。元ヤンみたいな見た目の彼女は、金髪に染めた豊かなロングヘアで体格が良かった。160センチはあったかと思う。特別美人というわけではなかったけれど、キュートで気さくな良い子だった。お酒もタバコもよくのむ子だった。
女の子と言ったけれど、すでに結婚していて、子供ができない悩みを抱えていた。
うちで飲んだ時は、「不妊治療をしたいけど、100万円はかかるし、そんなお金無いし」と、泣いていた。悩みを打ち明けられたけれど、どうすることもできず、ただ話しを聞いてあげることしか出来なかった。
私が札幌に戻ってから1度だけ、電話をもらったことがあった。あれからどうしているだろうか。お母さんにはなれただろうか?
彼女はプロの歌手並みに歌が上手かった。
カラオケスナックに行った時、ロンリーチャップリンを歌っていた横顔を思い出す。
ロンリーチャップリンは名曲だ。
男女でパートが分かれている歌だが、これを歌うと誰でも“イイ男”、“イイ女”に見えてくる。スナックのやや暗めのライトの下で、カウンターに肩を並べて歌ったら、恋の魔法にかかりそうな、そんな雰囲気を持つ魅力ある歌だ。
洗面台から顔を出して、誰が歌っているのかなとテレビを見たら、天童よしみさんと三山ひろしさんだった。
いい歌だ。