鹿男あをによし 価格:¥ 1,575(税込) 発売日:2007-04 |
魏志倭人伝には2~3世紀倭国に邪馬台国が存在し、その女王卑弥呼が多くの国を従えていたことが書かれています。卑弥呼は魏に朝貢し、その返礼として鏡を貰っています。古墳の発掘によると、魏の年号(ちょうど卑弥呼が朝貢していた頃の年号)の入った鏡が何種類か発見されていて、その中に三角縁神獣鏡があります。このことから三角縁神獣鏡が卑弥呼のもらった鏡であると推測する研究者もいます。しかし中国でこの鏡が発見されていないことや、間違った年号が入っていたりすることから、これは卑弥呼の貰った鏡ではないという研究者もいて、まだはっきりとした結論は出ていません。視点をかえてこの鏡の使われ方を考えて見ましょう。この頃の倭国の状況から考えると、三角縁神獣鏡の使われ方がはっきりしてきます。この頃の倭国は邪馬台国と狗奴国の2大国が敵対していました。邪馬台国は魏の権威をもって倭国を治めようとしていました。次に三角縁神獣鏡ですが、年号の入っていないものも含めると九州から関東までの広い範囲から出土しています。邪馬台国側の国が邪馬台国を無視して魏の鏡をつくるはずもなく、また狗奴国が邪馬台国を支援する魏の鏡を作ることもありません。つまり三角縁神獣鏡は魏からもらったものであっても、倭国で作られたものであっても、魏の権威を示すために邪馬台国の同盟国に配られたものだと考えられるです。そうすると三角縁神獣鏡の出土分布と邪馬台国の勢力範囲が重なってくるわけです。出土分布や他の考古学的な調査、文献調査を総合すると邪馬台国の位置はおのずとはっきりとしてきます。それは次回以降にしたいと思います。
「鹿男あおによし」はドラマにもなった小説です。史実とはまったく違いますが三角縁神獣鏡や黒塚古墳や卑弥呼が重要なファクターに使われている面白い物語です。