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SuperDryな一徹の徒然草

自称・アサヒビール・スーパードライのアンバサダー 見たり、聴いたり、触ったり、歩いたり、走ったり。呑む他に暇なしの徒然草

慣れの恐怖

2010-11-24 17:30:00 | 文化
作家の山田太一氏が友人の医師に尋ねた。“医者に何年ぐらいすると、患者が亡くなるのが平気になるんだ?”。すると、日ごろ温厚な彼が「平気になどなるか:と怒った。同氏は、長くマスコミの世界にいると、多くの人は「物事を人よりさらに『すれっからしの目』で見よう見ようとしてしまう」と語る。そして、自身も「軽薄なる人間観に、いつの間にか首まで浸かっていた」と(「いつも雑踏いつもの場所で」冬樹社)人ごとではないと思った。時代や環境に慣れる“適応力”は、いい仕事をする条件。しかしその結果、他社の悲しみや喜びに触れても、「心」の前に「慣れ」が働いては、人間としての成長は望むべくもない。人間社会では当たり前に出来上がったものなど何一つもない。

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ゴシック"
;"><o:p>本日の読書:1/957冊目 社長!儲けたいなら、モテ経営をやりなさい。速水 彰著 中経出版 </o:p>







今生人界の思い出

2010-11-05 17:49:00 | 文化
「男が飛んだから、次は女の番だね」。人類初の女性飛行士・テレシコワさんの運命を決めたのは、「ガガーリン少佐、宇宙へ」の報を聞いた、母の一言だった。幼いころ、冬の真夜中に父と皆既月食を見たことを思い出す。こちらは宇宙とは縁遠い大人になったが、今も心が温かくなる。してもらったこと、言われた一言が、後々まで心に残ることがある。逆に、相手を思っての行いや言葉が旨く伝わらず、かえって反発される経験もした。「ある人は十銭をもって一円の十分一と解釈し、ある人は十銭を以って一銭の十倍と解釈すと。同じ言葉が人によって高くも低くもなる」。夏目漱石は、思いを伝える難しさを「虞美人草」に綴る。人との対話は、その最たるものだろう。誤解され煙たがれ、時として席をけって去ろうとする始末。真心は、いつか通じると、話す勇気を持ちたい。誠心誠意が通じたとき、それはかけがえのない「今生人界の思い出」になる。誠実の人には信用が残る。誠実の二字の裏には、常に激闘がある。人と接するに、誠実に勝る知恵はないと思っている。

本日の読書:1/938冊目 ハーバードでは教えない実践経営学 マークマコーマック著 日本経済新聞社出版


正倉院展

2010-10-29 17:16:00 | 文化
少年時代、その優美な姿に鮮烈な衝撃を受けた。世界で唯一、現存する五絃琵琶を見たときである。後にそれが、仏教と共にシルクロードを旅してきたと知り、再び胸が高鳴った。今月23日に奈良国立博物館で開幕した第62回正倉院展で螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんごげんびわ)が19年ぶりに公開された。同展の第1回が開かれたのは1946年(昭和21年)。全国から押し寄せた来場者は15万人、1日にして7,000人に達した。日々の食料にも事欠く時代でありながら、古代の文化の光を求めて長蛇の列をつくった。

「文化=カルチャー」の語源は「耕す」の意。荒れた大地に豊かな実りをもたらすように、私たちの命を育んでいく。文化は一部の人々の嗜好品ではない。万人に不可欠であり、それゆえ、民衆に開かれたものであるべきだと思っている。東京富士美術館企画の「ポーランドの至宝」大阪展が現在、開催中。レンブラントの「額縁の中の少女」の前で、じっとたたずむ男の子がいた。かつての私のように歓喜している。やがて大人になる彼も、この日の感動を思い起こすに違いない。一流の芸術との出会いは、“生涯の宝”との出会いでもあるように思える。

本日の読書:1/932冊目 こんなに違うよ!日本人・韓国人・中国人 造事務所編著 PHP文庫


2010-10-20 17:33:00 | 文化
今年も残り3ヶ月を切った。年頭に立てた目標の達成は赤ランプが点灯している。今年は寅年である。次男坊夫婦に長男が生まれた。寅年にあやかって名前は“大雅”と名付けられた。“トラは一日に千里を走り一日で家族の元へ帰る”故事がある。これに因み、寅年生まれの女性は戦時中、「千人針」を自分の年齢だけ針をさすことが許された。出征する夫よ、息子よ、遠い戦地から一国も早く帰って欲しいと。

千人針は、多くの女性の祈願を集めることで、弾よけの“お守り”になると信じられた。政府は戦意高揚の手段として奨励。無事を祈る素朴な母の思いから始まった行動は、狡猾な権力によって、徴兵システムの手助けに利用された。そんな悲劇の歴史を断じて繰り返してはならない。母親の連帯こそ、平和と人道の世紀を作る原動力。常に時代を開いた母への感謝を、常に忘れまい。

本日の読書:1/923冊目 ブラックマネー 須田信一郎著 新潮文庫


遣らずの雨

2010-10-06 17:41:00 | 文化
日本が大嫌いだった、ある中国の男性が出張で来日した。仕事を済ませ、ようやく帰国できるという日、空港へ向かう車中で雨が降り出した。同行していた日本側の担当者が言った。「遣らずの雨ですね・・・。日本人はこう言う時に降る雨と呼んで、貴方を帰したくなくて雨が降り出したと思うのですよ」。男性の反日感情が、にわかに解けたという(茂木健一郎・黛まどか著「俳句脳」角川書店)

雨は得てして憂鬱なもの。しかし、その雨を違う視点で見る人もいる。“相手を大切に思う気持や心が雨になった”そんな詩的な言葉に触れて、男性は日本や人への印象を変えたのだろう。身の回りのあらゆる出来事も、とらえ方によって大きく意味が変わる。たとえば、病気。人を不安にさせ、気力を奪う。病にも深い意味がある。自身も家族や友の心を軽くし、視野を広げられる言葉を持ちたい。人生を、より深く、より強く生きるために。


本日の読書:1/909冊目 フリー完全活用本 創芸社編 三笠書房