日本の教育界の発展に尽力した森信三は“読書の真価を理解する人は「二種の世界の住人」である”との言葉がある。二種の世界の住人とは、現実の世界と書物に描かれた世界の二つに住むと言うことなのだそうだ。読書は宇宙旅行や深海探検、歴史の出来事など、現実には経験できない“別世界”の体験を文字と行く記号を通じて可能にする。それは“奇跡”なのだ、と氏は語っている(『人生論としての読書論』致知出版社)『徒然草』にも「ひとり灯のもとに文をひろげて、見ぬ世の人を友とする」とある通り、いくつもの人生を生きられるところに、古今東西変わらぬ読書の喜びがある。この“奇跡”を子供時代に体験できれば、どれほど心の財産になることか。“もう一つの世界に”生きる主人公が、葛藤を乗り越え、成長していく雄姿は、将来、厳しい現実世界に立ち向かう力を与える。学ぶという行為それ自体が、明日の希望、生き抜く勇気の表現に思える。心の財(たから)を積む読書に挑戦したい。
本日の読書:1/1,140冊目 さよならドビッシー 中山七里著 宝島社文庫
![]() |
さよならドビュッシー (宝島社文庫) 価格:¥ 590(税込) 発売日:2011-01-12 |
![]() |
人生論としての読書論 価格:¥ 1,680(税込) 発売日:2011-04 |