時のうてなに立ちて風を感ず。

To the happy few (Henri Beyle)

理念としての民主主義と現実の制度としての民主主義について。(3)

2016年06月10日 | 民主主義
国民のすべてに主権があるということはどういうことなのか、君主制と比較
して考えを進めてみましょう。ある政策を実行するプロセスにおいて、君
主制の場合、広く国民の声を聞く賢君にせよ、君主自身の欲望だけに耳を
傾ける暴君にせよ、政策を判断するための材料を集める工程があります。
次に、それを吟味し政策を決定する工程があり、最後に政策の実行工程と
なります。それでは、民主主義思想の基本理念である国民主権の場合は、
どうでしょうか。国民の声を聞くという、政策を判断するための材料を集
める工程は、国民自身のことなので自動的に済みます。さて、次の吟味し
て政策を決定する工程と最後の政策の実行工程とですが、民主主義の理念
ではこれをカバーしてはいません。この部分は実際の民主主義の制度に、
技術的な課題として委ねています。というか、単に言及していないと云う
ほうが正解かもしれません。

理念としての民主主義と現実の制度としての民主主義について。(2)

2016年06月10日 | 民主主義
民主主義思想の基本理念に国民主権があります。主権在民という言葉のほ
うがわかりやすくて良いと思うのですが。それはともかく、すべての国民
に主権があるという考え方であり、君主制のような、一部の者だけに主権
があるという考え方とは対極に位置するものです。君主制の場合、主権は
君主個人に集中しているので理念としての君主制と実体としての君主制は
同様なものとして理解できます。主権者である君主は、統治する者として
君臨し、国民は支配されるものとして治められることになります。これに
対して民主主義では、国民すべてに主権があるので、統治するものと統治
されるものが同じ国民になります。つまり、国民が国民自身を統治するの
です。平たく言えば親に躾けてもらうのではなく、自分自身を律するとい
うようなものと考えることもできるのではないでしょうか。

理念としての民主主義と現実の制度としての民主主義について。(1)

2016年06月10日 | 民主主義
理念としての民主主義と現実の制度としての民主主義について。(1)

制度としての民主主義を考える前に、理念としての民主主義思想について
基本的な定義付けをしておく必要があります。それは現実の制度としての
民主主義について考えるときの足場となるものであり、羅針盤ともなるも
のです。