時のうてなに立ちて風を感ず。

To the happy few (Henri Beyle)

世界は大きく動き始めている

2022年07月24日 | 考察メモ

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◆ 米ドルの基軸通貨体制の綻びと米国の衰退

WWⅡ後のブレトンウッズ体制から、1970年台初頭のドルショックを経ても続いてきた米ドルの基軸通貨体制が綻び始めています。

ウクライナにおけるロシアの特別軍事作戦が始まると、米国やEUなどの西側諸国は対ロシア経済制裁を決行しています。ロシアのドル資産は凍結され、SWIFT(スイフト)システムから排除されて、ドルでの国際間銀行決済ができなくなりました。これは、例えば原油やガスを輸出して、代金をドルで受け取ろうとしてもSWIFTにアクセスできなくされているので、受け取ることができないのです。しかも、相手が支払ったドルはアメリカによって凍結されて使用できなくなってしまうでしょう。云わば、掠め取られるようなものです。アメリカは、アフガンやベネズエラなどで同様な事をしています。

ロシアは、そのような制裁措置が実行されるだろう事は十分に予想していたはずです。ロシアは、これらの制裁にすぐに対応して、自前の決済システムを稼働させています。そして、制裁をしている非友好国に対して、ガスや原油の支払いをロシアの通貨であるルーブルで支払うように通告しました。この結果、制裁が始まった時に一時的に下落したルーブルは、すぐに回復して以前よりも強くなっているのです。市場は冷徹に現状を判断します。つまり、ロシア経済の混乱の可能性は少ないだろうと判断しているのです。ヨーロッパに向けて輸出していたガスや原油は中国などのアジアに向け始めています。小麦の輸出国でもあるロシアは食糧不足の問題はほぼ起きないでしょう。肥料の輸出国でもあります。欧米のロシアに対する制裁は、ロシアよりも欧米諸国自身に混乱をもたらしているようです。ガソリンなどの燃料代の高騰や、肥料価格の上昇でスペインなど、いくつかの国で農民のデモが起きています。

今回、ロシアに対する制裁を行っているのは西側諸国がほとんどで、アジア、アフリカ、中南米の国々の大部分は制裁に参加していません。アフリカ、アジア、中南米の国々は今日までおおよそ600年の間、欧米の略奪や殺戮と植民地支配にさらされて正当な発展を阻害されてきたのです。その間欧米は諸学問や科学技術を発展させて、その格差を広げてきたのです。これらが相まって、欧米人の間に他の人種への差別と己の優越感を植え付けていったのではないでしょうか。

西側(下の赤い部分)

そして今、中国がその経済力を発展させて、まもなくアメリカを追い抜くだろう事が、現実として突き付けられている。ロシアは軍事力の優秀さを、シリア政府の要請で協力している軍事援助で見せ、ウクライナでの特別軍事作戦でも、非戦闘員の民間人の被害を出さぬように細心の注意を払っている事が伺えるのです。これは、米やNATOがリビアやシリア等で行ってきたた無差別ともいえる空爆で、民間の人々やインフラを殺戮、破壊してきた事とは全く異なるのです。

アフリカ、アジア、中南米の多くの国々が、欧米によって正当な政権をつぶされて傀儡政権を据えられてきました。今までは、これに抗う事は困難でした。助けを求めても欧米に対抗できる力を持った国が無かったのです。しかし、中国やロシアが経済力、軍事力そして、政治力で欧米に対抗するだけの力を付けてきている事が、世界中に知られてきた今日、第三世界と言われる国々などからロシアや中国への期待が高まっているのです。BRICSへの加入を希望する国も増えてきています。今後益々、中国、ロシア、インドやイランなどが中心となって協力が進めば、欧米以外の国々もそちらに向かうことは容易に予想できることです。米国のドルの覇権はその力を失いつつあります。欧米諸国のプレゼンスは急速に縮小しつつあるのです。

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Handel duet - Son nata a lagrimar

Nathalie Stutzmann & Philippe Jaroussky


国民の主権は幾重にも封じられている

2022年07月12日 | 民主主義

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◆ 主流メディアは社会状況を正しく国民に伝えていない

WWⅡの後アメリカで、モッキンバード作戦(Operation Mockingbird)というものが秘かに実行されたそうです。これは、メディアを使って一般の人々を思うようにコントロールしようとした試みです。公的機関が一般の人々の思考を誘導すると云う事は、民主主義の国であるならば、主権者である国民の主権者としての正常な判断を阻害する行為であり、民主主義を破壊するものであると言えましょう。

モッキンバード作戦はアメリカで実行されたのですが、アメリカのコントロールの下にあった日本でも同様な事が行われたのではないかと推測しても、あながち間違いではないように思えるのです。WWⅡの後、占領軍であるGHQは対日政策として、『3R』という基本原則を掲げ、『5D』という重点政策を決め、その補助政策として『3S政策』を実行したとされているようです。この『3S政策』は愚民化政策とも言われ、大衆に娯楽を提供して政治への関心や不満を持たないようにコントロールする為の政策とされているようです。『5D』の内の一つにに -Democratization- (民主化) と云う政策が在りますが、『3S政策』と云う民主主義を破壊する政策とは相容れません。これは、形は民主化であっても本音は操作し易い愚民化であったと考えることができるのではないでしょうか。

そして、今日の社会状況を見れば、特別に政策として実行しなくても日常的に 愚民化文化 とでも言うべき社会状況が現出していると強く感じています。主流メディアは、少し調べればバレるような嘘を臆面もなく発信する様になってしまったようです。これは、主権者である国民の主権者としての正常な判断を阻害する行為であり、民主主義を破壊するものです。

◆ 主権者である国民が正しく判断し行動する為の能力を培う教育は?

今でも学校では『前へ倣え、気を付け、休め』の号令があるそうです。集団生活を送る為に必要なのだ、とされているようです。しかし、その根拠は薄弱であるように思います。この、号令で動く訓練には、教師(権威者)の指示で何も考えずに従って動くことであり、意味を考えたり疑問を持ったりすることを排除し、権威に盲従することを求められているという側面もあります。

石田ゆたか氏のツイートのように、細かな規則を作ってそれを盲従させることは、管理の為には有用でありましょう。管理は楽になりますが、それを教育とは言えないのではないでしょうか。文科省は、主体的に考える教育を掲げているようですが、実態は権威に従順な子供を作り出しているのです。これは、主権者の正常な批判力を損ない、正当な主張を奪うことになると考えます。

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G.F. Händel - Ombra mai fu

Patricia Janečková - Sopran