今日の俳句「えのころ草」

水澄むや竈の炎定かなり
露草や八入の紺の赤城山
松籟を受けてカンナのふふみけり
我が下駄を覆いかくせり一葉かな
己が影えのころ草にからかわれ

今日の俳句「菊」

木道の木の香も光るまつむし草
木道の続く限りや秋の空
忽として草に沈みし稲田かな
切り取りし菊活けたればふふみけり

今日の俳句「温め酒」

秋茄子や雨に打たれし猫車
鈴虫や坂東太郎水清き
久々に友垣集う温め酒
職人と植木の話し秋の空

今日の俳句「カンナ」

明烏もう来ておりぬ虫すだく
醜草の生い茂りたる稲田かな
朝顔や出湯の街のゆるゆると
嶺嶺の雲の燃えいるカンナかな

今日の俳句「残暑」

噴煙の途中で消えし名残茄子
竜胆や出湯の街を見下ろせり
冷やかな風に包まる散歩かな
石垣の花の萎ゆみし残暑かな

今日の俳句「竹の春」

虫の音の鳴き竜の音に似たりけり
朝顔やかわたれ星を拝みをり
柳散り川原の石の増えしかな
橅林の巨木枯れたり竹の春

今日の俳句「萩の声」

虫すだく今日の赤城の裾長き
鴫の群川面広げし夕べかな
網を振る子等より逃げし赤とんぼ
走り根の巌を掴むや萩の声

今日の俳句「薄」

虫すだく欅の森の水清き
松籟と語り合うよな薄かな
畦道の露光りおり竹の風
朝露に濡れし小犬や雲迅し
引き抜きし花穂重たき薄かな

今日の俳句「竜胆」

竜胆や駒子の出で湯のぞみおり
猪独活の咲く山道や秋の雲
コスモスやきらり銀鱗魚野川
朝露のきらり光るや松の風

今日の俳句「蘆の花」

せせらぎで語ろうようや蘆の花
新しきカメラに収むカンナかな
虫鳴くや己が影伸ぶ散歩道
朝露ぶり返したる神経痛