今日の俳句「単衣」

雲の峰ベースは草に沈みをり
麦の穂のそろつて西に倒れけり
鳥の声母の形見の単衣かな

今日の俳句「真菰」

山つつじ白樺警護する如し
ひねもすの雨にこぼるる杜鵑花かな
夏蝶よ利根源流と言う所
いただきしあやめ活ければふふみけり
遠山の雲は直立真菰かな

今日の俳句「岩魚」

夏雲雀忽と千丈落ちにけり
首かしげ郭公聞くや牧の牛
郭公や牧に集いしカメラマン
濁流の洗い流すや五月忌
音たてて岩魚飛び出す沼真中

今日の俳句「花菖蒲」

麦の穂の西をさしけり倒れおり
父の日や母の形見の単帯
末央柳水琴窟のひびきかな
花菖蒲雨を含みて和紙のよう
花菖蒲池に向かいてなだれ咲き

今日の俳句「夏帽子」

渓流に光零して杜鵑花かな
氷菓食ぶベースは草に沈みけり
灰色の空を分けけり夏燕
花薔薇の散り広がりて赤白黄
日の匂い山の匂いや夏帽子

今日の俳句「月見草」

風鈴や秩父連山浮び立つ
ナイターや南瓜の種を噛み砕き
白妙にきみどりの露月見草
活けてより色濃くなりし唐菖蒲

今日の俳句「唐菖蒲」

雨打つや葉隠れなりし青蛙
杜鵑花咲く思いのほかに長き塀
妙義には奇岩怪石昇り藤
郭公や赤城南面開発中
活けてより色つや増せり唐菖蒲
柚子の花香り川面に広げたり

今日の俳句「柚子の花」

雨含み薔薇のふたひら足もとに
夏薊赤城の水に影落とし
杜鵑花咲く思いのほかに蘂長き
ひとひらは肩に散りたり柚子の花
聳え立つ奇岩の妙義昇り藤

今日の俳句「梅雨晴間」

山霧を分けて現る躑躅かな
母の忌の早き目覚めや梅雨晴間
雨打つや葉に隠れをる青蛙
紫陽花や湖は大初の青さなり
パナマ帽ごつき体の人なりし

今日の俳句「矢車草」

梅雨晴や黒土の湯気の斜め立つ
新緑に車もろとも吸い込まれ
夕暮れの川原に下りて素足かな
走り根の岩を獲り込み雲の峰
灰色の空衝きぬけよ矢車草