日の中の小さき冬芽凛として
実南天金文字額の煎餅屋
菜園の霜除の笹カサカサと
朝日差す庭に白樺の冬黄葉
落葉踏み駈け回る子らの鬼ごっこ
雑木林そこに深紅の冬紅葉
下校子に迎えの車冬の雨
校庭のこの木もとうとう裸木に
白菊を御霊に献花冬の雨
冬の朝厨の瑠璃戸カラリ開け
下校子のカラフルな傘冬の雨
鐘楼の瓦の銀杏落葉かな
ガラス戸に雪の結晶子らが貼り
幾つもの輝く聖樹帰り道
風呂窓にサンタのシール孫と貼り
水冷えて金魚の動きの重たげに
名曲と珈琲の香り冬の朝
同僚の父の訃報や漱石忌
床の中目覚めて耳に寒鴉
雨洗う蜜柑の黄色明るくて
年の暮招き猫置くくじ売り場
掃きてまた落葉舞い散る庭掃除
子ら遊ぶ砂場に銀杏落葉かな
学童の子ら来て落葉集めをり
自転車を漕ぐ女学生息白し
カーブして冬陽まぶしき坂の道
大雪に雪の便りの訛り声
煌煌と冬の夜空に満ちし月
冬満月明け初むる空より明る
列なして畑の冬菜の青々と
冬満月今年最後と身じろがず
冬満月満々として空にあり
冬満月辺りの星の光失せ
コーヒーの湯気白きかな冬の朝
暮早し木の根につまづく散歩路
庭の木のイルミネーションサンタいて
病む孫の笑顔に安堵す冬の朝
寒菊のその身に明るき日差しかな
大会の入選通知冬晴れに
冬の蝶行方定めぬ動きして
蜜柑手に床に伏せたる孫見舞う
薄雲に包まれ淡き冬の星
箒よりどんぐり転がる落葉掃き
採点のペン走らせる師走かな
残業や風呂に冷えたる水がある