2-1で勝利!
「あきらめたらそこで試合終了ですよ」とは、バスケ漫画の金字塔・スラムダンクを代表するような名言のひとつですが。
まさに、至言。そう思い知らされるような試合でした。
前半から相手に押し込まれ、自分たちのサッカーがまるで表現できない時間帯が続き。
後半、多少は持ち直すも先制点にまでは至らず。
引き分けすら許されず、昇格の僅かな望みをつなぐには勝つしかないなかで。
86分という試合も大詰めの段階で失点してしまい。
正直なところ、終わった、もう駄目だと観念してしまった人も、少なくなかったのではないでしょうか。
しかし。
カターレの選手たちは、あきらめてはいなかった。
5分と表示されたアディショナルタイムの中で。途中出場の武が、値千金の同点ゴール!
残り時間僅か、最後の力を振り絞るカターレ!
アディショナルタイム目安の5分を経過、流れが切れた時点で即タイムアップという、正真正銘のラストプレーで。
再び、武!
ペナルティーアーク付近から思いを乗せて蹴り込んだシュートがゴールに吸い込まれ、逆転!
そして、試合終了!
あまりにも劇的な幕切れに、ホームのファン・サポーターのボルテージは、最高潮に達したのでした。
前節、無敗で優勝した秋田をアウェイで撃破。最強を打倒し、終わったかに思われていた昇格の望みをつなぐことに成功したのでした。
それを受けての、ホーム戦。
勝ち続けなければ、生き残れない。
たとえ最下位・セレッソ大阪U23であろうが、順位など関係なく。どこであろうが関係なく打ち倒すのみ!
しかし・・・思いとは裏腹に、大苦戦を強いられることに。
明らかに・・・素人目に見てさえはっきりとわかるレベルで、カターレのプレーぶりが、なっていませんでした。
フィニッシュ精度に課題というだけで、個々の能力はやはり高いセレッソ大阪U23。
その個対個の部分で、どうにも劣勢を強いられている姿が、ありありと。
どうしてもうまく攻撃のかたちを作らせてもらえず、半面、守備の部分では対応の悪さからスッキリとした切り替えがままならず。
これがもしも勝ちなれたチーム・・・それこそ秋田に対して同じようなことをしていたならば、ボコボコにされていたことでしょう。
それこそ、前節の初黒星をつけてやった勝利が、何かの間違いだったのでは?というレベルで。
それくらい、出来が悪かった。今シーズンここまでの、ダメなときのカターレそのまま、というくらいには。
優勢のままに攻め立てるセレッソ大阪U23ではあったものの、なかなか得点にまでは結び付けられず。そのあたりの詰めというものがしっかりしていれば、最下位になどはいないだろうな、という。それくらいに、個々の能力の高さが見て取れました。
出来が悪いながらも、それでもしのぎ続けたカターレ。
0-0で試合を折り返し、後半勝負に賭けることに。
59分に宮城と椎名を同時投入、74分には武を入れて、テコ入れを図ることとしたカターレ。交代した選手たちに状況打破を託すことになりました。
ですが。
状況を打破したのは、GKを含めて最少限の4人しかサブメンバーを帯同していなかったセレッソ大阪U23のほうでした。
試合も最終盤の86分。
途中出場のMF松本 凪生に決められてしまい、先制を許してしまうことに。
ゴール前でも慌てることなく、ゴール隅を狙ってコントロールされた絶妙なシュート。
年代別代表にも選ばれている逸材が、その力をしっかりと発揮する活躍を見せたかたち。敵ながら天晴、というゴールでしたが。
ただ・・・それをされてしまった側としては、たまったものじゃない。
正直、「またか」と。
前回ホームゲームで終盤に逆転ゴールをくらって敗れた福島戦を例に出すまでもなく。今シーズンここまで勝てなかった試合の大半が、後半にこらえきれずに失点してのもの。
コロナ禍での声出し自粛がなければ、「なにやってんだコノヤロー!」なんて叫びだしていたかもしれません。
このまま負けてしまうのか?悪い意味でのいつも通りに。
最強の秋田に勝ったのは、優勝を決めて気の緩んだ相手に対してたまたまうまくいっただけのまぐれ、ラッキーでしかなかったのか?
その実態は、勝たねばならない最下位チームに連敗をくらってしまう程度の残念チームでしかなかったのか?
「首位に勝っても、最下位に負けてりゃ世話ねーよwww」なんて嗤われてしまう程度のチームでしかなかったのか?
なによりも・・・負けたら、終わり。
連勝の勢い云々でなく、ここで敗れて終わってしまうのか?
しかし。
そこで、終わらなかった。
アディショナルタイムは5分。勝っている状況だったなら、「長げーよ!」なんてツッコミを入れる時間。
けれど、反撃はここから。
90+3分、花井のスルーパスに抜け出した武がドリブルで持ち込み、「良いボールがきて角度もなかったが自信はあった」というシュートを見事に決めて、同点に!
これぞ、ストライカーの仕事ぶり!というファインゴールでもって、試合を振り出しに戻すことに成功したのでした。
ただ、これで終わるわけにはいかない。敗戦濃厚であったけれど勝ち点1ならオッケーという試合もありましょうが、この試合に関してはそうじゃない。
是が非でも、勝たねばならない試合なのだから。
時間は、まだある!
刻々と時計は進み、遂に目安の5分。最後の最後、ラストプレー。
ラインを割るなどしてボールが切れた瞬間に、いや、それ以前に相手に渡ったりして流れが途切れたその瞬間にホイッスルは吹かれる。まさに、ギリギリの瀬戸際。
途中出場からいい動きをしていた宮城が、持ち味のドリブルで攻め上がり。
中央に待ち構えていた武へと託すと、「イメージ通りだった」という思い切りのよいシュート!
抑えを効かしながらも勢いのあるグラウンダーのシュートがゴールに吸い込まれ!
まさに!劇的というほかない逆転ゴールが決まり!
そして、その次の瞬間、ホイッスル。試合終了。
コロナ禍で自粛、とか言ってる場合じゃねぇ!とばかりに。スタジアムは、興奮のるつぼと化したのでした。
試合後、セレッソ大阪U23の丸山監督は、「人生をかけて、死にものぐるいやってくる大人の選手に対し、その勢いやパワーをどうやってはね返す、あるいはコントロールするかはこれまでも課題であったが今回も思い知らされた」と語りました。
一方、勝利の立役者である武は、「(失点して)「時間がないな」とは思ったが、シュートを打てるチャンスをつくれたら決められるな、という感覚はあった。すぐに1点取り返せたので、2点目も取れるなと感じていた。決めたのがたまたま自分だった」と。
練習からしっかりとイメージを固め、それを得点感覚として醸成し。それこそ人生をかけて、死にものぐるいでやっている。だからこその、勝利。
試合中、「なにやってんだコノヤロー!」と叫びたくなりもしましたが。
なにをやっているか?
勝つための努力をしている。そう、死にものぐるいで。
その努力が、ギリギリの瀬戸際でチームを踏みとどまらせた。
現在2位の相模原が勝利し、勝ち点差6に変わりなし。
けれど、それでも。
負けたら終わりであったところを踏みとどまり、勝ち点3を積み重ねて5位浮上。
希望は、まだあります。
上位チームがコケることが前提となる厳しい状況には変わりないものの。それでも。
あきらめたら試合終了。
あきらめてなど、やるものか!と。
信じて貫けば、きっと。
そう、敗戦濃厚というよりほかない逆境を覆してみせた、今節のように。
戦いは、まだ終わりません。