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解雇・退職110番

解雇・退職トラブルの知識!知っていて良かった~!
by 竹林社会保険労務士事務所

解雇の類型-整理解雇-

2004-12-02 18:00:18 | 解雇の知識

 解雇は大きく分けて①整理解雇②普通解雇③懲戒解雇(諭旨解雇)に類型化されます。

【整理解雇】
 不況等によって余剰人員が生じ、工場や部門の閉鎖、経営の縮小などを行うために人員整理をしなくてはならないことがあります。この余剰人員を解雇することを整理解雇と呼びます。
整理解雇は他の解雇と違い労働者の責に帰す理由での解雇ではないため、その要件は厳格です。この整理解雇が正当性を得るためには、過去の判例で積み上げられてきた「整理解雇の四要件」を満たす必要があります。

1.人員整理の必要性
どのくらいの経営危機にあれば人員整理の必要性が認められるかという点がポイントですが「企業の存続が不可能になることが明らかな場合でなければ従業員を解雇し得ないという考え方は、資本主義経済社会における現行法制の下では採用できない」東洋酸素事件と企業の合理的経営をしていく上、でやむを得ないとみとめられる程度の要件があればよいとされています。
2.解雇回避努力
「人員整理はこれ以外の措置を講じてどうしても企業を維持できない場合の最終的措置とされるべきで、できるだけ人員整理を避けるべく何らの努力もなされないまま、安易に実施された人員整理は濫用に亘るものと解される」あさひ保育園事件。時間外労働短縮や出向、希望退職の募集、新規採用中止などの措置を取り、できるだけ解雇を回避する努力が必要です。但し、先述東洋酸素事件では、状況によっては必ずしも希望退職の募集がなくてもやむを得ないとしています。
3.対象者選定の合理性
対象者選定の基準は構成におこなわなければなりません。「経済的打撃の低い者」「勤務態度の悪い者」など客観的で合理的な基準を設けることが必要です。「適格性の有無」という人選基準が抽象的で無効とした労働大学事件があります。
また、日立メディコ事件では「臨時員全員の雇止めが必要であると判断される場合には、これに先立ち、期間の定めなく雇用されている従業員につき希望退職者募集の方法による人員削減を図らなかったとしても、それをもって不当・不合理であるということはできず、右希望退職者の募集に先立ち臨時員の雇止めが行われてもやむを得ないというべきである。」と企業への帰属性の薄い者を優先的に解雇することは妥当という判断をしています。
4.手続の妥当性
使用者は労働者や労働組合に対して、整理解雇に至った経緯や時期・規模・方法について説明すべき信義則上の義務があるとされています。「債務者は、解雇の遅れによる人件費の増大を危惧するが、それ故に全く抜き打ち的な解雇が是認されるわけではない。」とした日証事件が参考になります。

【最近の動向】
長期雇用を前提とした日本的雇用慣行が崩れ、雇用の流動化、非正規社員の増大などの社会的変化に応じて、整理解雇の四要件も徐々に緩和されつつあります。しかし、それらの考え方はまだ定着していませんし、十分な注意と配慮が必要なことに変わりはありません。
なお、整理解雇にはいろんな判例がありますから、調べてみてください。


【まとめ】
(1)整理解雇をするためには四つの要件が必要です。

【参考判例】
ID=00630(このIDをリンク先の枠内に入力し、全情報ボタンを押してください)
全基連判例検索へ東洋酸素事件(東京高裁・昭和54年10月029・判決)
ID=03801(このIDをリンク先の枠内に入力し、全情報ボタンを押してください)
全基連判例検索へ日立メディコ事件(最高裁第一小法廷・昭和61年12月04日・判決)
ID=00623(このIDをリンク先の枠内に入力し、全情報ボタンを押してください)
全基連判例検索へあさひ保育園事件(福岡地裁小倉支部・昭和53年07月20日・判決)
ID=06546(このIDをリンク先の枠内に入力し、全情報ボタンを押してください)
全基連判例検索へ日証事件(大阪地裁・平成07年07月27日・判決)

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【お断り】
現在、労働相談に関する回答を控えさせていただいています。そのため記事にコメントをいただいても回答できないことがございますので、ご了承ください。

解雇-適用除外・退職証明(労基法21条・第22条)-

2004-12-01 18:03:08 | 解雇の知識

【解雇予告適用除外】

(解雇予告適用除外)
第21条 前条の規定は、左の各号の一に該当する労働者については適用しない。但し、第1号に該当する者が1箇月を超えて引き続き使用されるに至った場合、第2号若しくは第3号に該当する者が所定の期間を超えて引き続き使用されるに至った場合又は第4号に該当する者が14日を超えて引き続き使用されるに至った場合においては、この限りでない。
1.日日雇い入れられる者
2.2箇月以内の期間を定めて使用される者
3.季節的業務に4箇月以内の期間を定めて使用される者
4.試の使用期間中の者

 ここに記載のある者については解雇予告をすることなく(労働基準監督署長の認定もいりません)解雇できます。但し、これらの者であってもいつでも解雇できるというのではなく、解雇するには相応の理由が必要なことは今まで見てきたとおりです。
また、日日雇い入れられる者であっても、1ヶ月を超えて雇用されていたり2ヶ月以内の有期雇用契約者や季節的業務に従事されるものであっても、定めた期間を越えて雇用されているとき、試用期間中であっても14日を越えて雇用されているときは、解雇予告が必要です。
なお、これらは実態で判断されますので、判断が難しいときは労働基準監督署に相談してください。いくつか解釈がありますが、長くなりますのでここでは省略します。

【退職時の証明】

(退職時等の証明)
第22条 労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。
 労働者が、第20条第1項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。ただし、解雇の予告がされた日以後に労働者が当該解雇以外の事由により退職した場合においては、使用者は、当該退職の日以後、これを交付することを要しない。
 前2項の証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならない。
 使用者は、あらかじめ第三者と謀り、労働者の就業を妨げることを目的として、労働者の国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動に関する通信をし、又は第1項及び第2項の証明書に秘密の記号を記入してはならない。

 ここで注意すべきは、退職証明などの交付を求められたときはなるべく早めに「請求があった事項のみ記載して交付」する義務があるということです。もし労働者が解雇された事実のみを請求したときは、解雇理由は記載してはいけません。また、退職の事由について労働者との見解に相違があったときは使用者の見解を証明書に記載すればよいのですが、虚偽であったときは証明義務を果たしたことになりません。
また、予め図って労働者の就業を妨害してはいけませんが、労働者の再就職先から問い合わせがあったときに事実を述べることは終業妨害にはなりません。

 労基法上の解雇は今回で終わりです。本当はもっと解釈や判例をいれたかったのですが、長くなりますので、今後のケーススタディの中で触れてゆきます。


【まとめ】
(1)解雇予告が適用除外される者であっても正当な解雇理由がなければ解雇できません。
(2)契約内容については実態に即して判断されますので、判断に悩むときは労働基準監督署に相談してください。
(3)退職証明には労働者が請求しないことを書いてはいけません。
(4)退職証明の内容に見解の相違があるときは使用者の見解を記載すれば足りますが、虚偽の記載は法違反になります。
(5)再就職先などからの問い合わせに応じることは就業妨害にはなりません。

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解雇-解雇予告(労基法20条)-

2004-11-25 22:15:53 | 解雇の知識

【解雇予告】
 いよいよ解雇予告、労基法第20条です。労基法の中で一番有名な条文ではないかと思いますが、書いているのは簡単なことです。

(解雇の予告)
第20条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
 前項の予告の日数は、1日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。
 前条第2項の規定は、第1項但書の場合にこれを準用する。

①解雇が有効であるとした前提の上で、解雇をするときは少なくとも30日以上前に予告するか、30日分の平均賃金を支払わなければならない。
②天災などやむを得ないときや懲戒解雇に該当するようなときは即時解雇ができるが、このときは労働基準監督署長の認定が必要。
③なお、解雇予告手当を払ったときは払った日数分予告期間を短縮することができる。
ということです。

 ここで重要なのは、②のときです。法律には労働者の責に帰すべき事由とありますが、私は②に懲戒解雇と書きました。しかしこれはわかりやすくと思ってそう表わしただけで、懲戒解雇だから即時解雇ができるというものではありません。あくまでも労働基準監督署長の解雇予告除外認定を受けてはじめて即時解雇が可能になるのです。
なお、解雇予告除外認定は「労働者の地位、職責、継続勤務年限、勤務状況などを考慮の上、総合的に判断すべきであり・・・(後略)」(昭和23年2月2日・基発1637号、昭和31年3月1日・基発111号)とされていて、懲戒解雇し、監督署に届けたら認定されるというものではありません。
この認定を受けるためには「解雇予告をすることと解雇事由とを比較したとき、予告期間を設けることが軽すぎる」ということを証明しなければなりません(これが大変な作業です)。

 ですから就業規則に懲戒事由があって、それに該当しても認定が受けられないときは即時解雇できないのです。
例えば、懲戒事由に「14日以上引き続き無断欠勤をしたとき」との規定があったとします。しかし、解雇予告除外認定を受けるためにはこれに「出勤の督促に応じず」というものが必要になります。ですから、出勤するよう督促していなければ解雇予告除外認定は受けられません。

 なお即時解雇をして、後になって解雇予告除外認定の確認をしたときは「解雇の効力は使用者が即時解雇の意思を表示した日に発生する。」(昭和63年3月14日・基発150号)のですが、認定が受けられないときは30日分の平均賃金について休業手当を支払うことになります。


【まとめ】
(1)解雇をするときは少なくとも30日以上前に予告するか、30日分の平均賃金を支払わなければなりません。
(2)解雇予告手当を払ったときは払った日数分予告期間を短縮することができます。
(3)天災などやむを得ないときや懲戒解雇に該当するようなときであって労働基準監督署長の認定を受けたときは即時解雇ができます。
(4)懲戒解雇だから即時解雇できるというわけではありません。会社の懲戒事由に該当していても認定を受けなければ(得られなければ)解雇予告手当の支払いが必要になります。


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解雇-解雇制限(労基法19条)-

2004-11-23 18:30:37 | 解雇の知識

【解雇制限】
 今回は解雇制限について進めます。文中に「解雇できる」といった表現が出てきますが、第18条の2の解雇要件をクリアしていることを前提として話を進めます。

(解雇制限)
第19条 使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間並びに産前産後の女性が第65条の規定によって休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第81条の規定によって打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合においては、この限りでない。
 前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。

労基法第19条1項では、以下に該当するときは解雇してはいけないと、一定の制限をかけています。
①労災事故によって負傷したり疾病にかかったため休業する間と、復職して30日未満の者
②産前産後休暇中および復職して30日未満の者
また同条2項では
③療養開始から3年後に打切補償(労災法の規定により療養開始から3年後に傷病補償年金を受けているか3年経過以後に傷病補償年金を受けることになったときを含む)をしたとき
④火災、震災など天災に準ずる程度の不可抗力に基づき事業の継続が不可能になったとき(労働基準監督署長の認定が必要)は、同条1項の規定に関わらず、解雇してもよいとしているのです。

 第19条1項と2項は原則と例外の関係ですが、判断には原則と例外が多くて非常にわかりにくくなっています。
例えば一定の期間または一定の事業の完了に必要な期間までを契約期間とする労働契約を結んでいる人が、労災事故に遭って療養休職したとします。その休職期間中に契約期限が到来したときは、期間満了による契約解除ですから解雇ではなく、そのため第19条の規定に関係なく雇用関係を終了させることができます。
しかしまた例外があって、この人との労働契約が何度か反復更新されてきたようなときは、労働者が継続雇用を期待するため解雇として扱われることになり、第19条の規定によって制限期間中は解雇することができなくなるのです。

 また、同条2項では天災事変により事業継続が不可能になったときと言っていますが、経営難による事業廃止のときも実務上は認定され、解雇できることになります。そしてまた例外ですが、事業の経営主体が変わっても事業が包括的に承継されるときは労働関係が継続しているとみなされ、解雇制限を受けることになります。

 ・・・難しいでしょう?解雇制限を受けるかどうか判断に悩むときは、監督署に相談してからにしてください。なお、労基法上の解雇制限以外にも男女雇用機会均等法や労働組合法等でも解雇できないときが定められていますので、ご注意ください。


【まとめ】
(1)労災により休職中の者や産前産後休暇中の者、及び復職して30日以内の者は解雇できません。
(2)上記であっても、打切補償をしたときや天災などによって事業の継続が不可能になったときは解雇することができます。
(3)例外が多数存在するので、判断に悩むときは労働基準監督署に相談してください。
(4)解雇制限は労基法以外の労働法にも定めがあります。


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解雇-解雇(労基法18条の2)-

2004-11-23 11:44:27 | 解雇の知識

【解雇】
 いよいよ労働基準法の条文に入ります。労基法には第18条の2「解雇」、第19条「解雇制限」、第20条「解雇予告」、第21条「解雇予告の適用除外」、第22条2項「解雇理由証明書」が定められています。今回から一つづつ各条文をみてゆきたいと思います。

(解雇)
第18条の2 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 2004年1月から労基法に加わった条文です。立法の趣旨について通達では以下のように述べています。
「解雇が労働者に与える影響の重大性や、解雇に関する紛争が増大している現状にかんがみ、解雇に関するルールをあらかじめ明確にすることにより、解雇に際して発生するトラブルを防止し、その解決を図ることを目的として、最高裁判所判決で確立しているいわゆる解雇権濫用法理を法律に明記することとした。」(平成15年10月22日 基発1022001号)

 難しい言葉が並びますが、結局、今までは解雇に関するルールが労基法上になく、30日前までに予告すればいつでも解雇できるといった間違った解釈を与え、そのためにトラブルが増えてきたので裁判所の解雇に関する考え方を法律に加えたということでしょう。
この条文ができたことによって解雇しづらくなったと言われる方がおられますが、実務上は何ら変わりありませんし罰則も定められてはいません(解雇しづらいのは元々です)。この条文は注意信号くらいに考えておけば良いと思います。
※解雇権濫用法理についてはこちらをご参照ください。

 なお、先の通達では「本法における解雇ルールの策定については(中略)使用者側に主張立証責任を負わせている現在の裁判上の実務を変更するものではない。」としていますし、「同条の規定に基づき解雇の効力を争う事案については、法104条第1項に定める申告の対象とはならない。」と、労基法違反としての申告対象にはならないと明確に述べています。
労働問題=労働基準監督署と考えてしまいがちですが、解雇の効力を争う事案は監督署では取り締まれませんのでご注意ください。


【まとめ】
(1)労基法に第18条の2が追加されましたが、実務上は従来と変化はありません。
(2)解雇の効力を争うときは使用者側に不当解雇でないことを立証する義務があります。
(3)解雇の効力を争う事案は労基法違反の申告対象外であり民事上の争いとなります。解決は、裁判や裁判外紛争処理機関で図ることになります。


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解雇-民法との関係-

2004-11-22 18:55:32 | 解雇の知識

【解雇と民法の関係】
 前回、解雇は「使用者が雇用の契約を一方的に解約して使用人をやめさせること。」と書きましたが、ここに雇用契約という言葉が出てきます。これは民法第623条から第631条に記載されていて、中でも解雇について注意が必要なのは第627条と第628条です。

 民法第627条「当事者が雇用の期間を定めていないときは、各当事者は何時でも解約の申し入れをすることができ、この場合雇用は解約申し入れの後、2週間を経過することによって終了する。」これが、雇用の解約が申し入れから2週間で自動的に成立すると言われる所以です。

 しかし、同2項では月給制のときは、賃金計算期間の前半に退職を申し入れた場合は、その賃金計算期間の末日に雇用契約が終了することになり、賃金計算期間の後半に申し入れた場合は、次の賃金計算期間の末日に雇用契約が終了することになるとしています。
※詳しくは辞職と民法との関係で再度触れます。

 また同法第628条では有期雇用契約の解約について定めていて、労使どちらかにやむを得ない事由があるときは、いつでも解約できるとしています。但しこのとき、債務不履行による損害を相手方に与えたときはその賠償責任を負うことになります。この損害賠償は同法第415条に定めがあります。

 ここまで書いてきたことは労使どちらにも言えることです。
しかし、労働者保護の観点から労働基準法が定められていますので、労働基準法に定めがあるものは民法より労働基準法が優先することになります。これは民法を一般法として特別法である労働基準法が成り立っているためで、法律は一般法と特別法があるとき、特別法が優先されることになっているからです。そして解雇は労働基準法に明確な定めがありますので、使用者側からの一方的な雇用契約の解約は労働基準法に従うことになります。なお、特別法に定めがないものは、一般法に戻って判断することになります。

 これを一つの例で見てみましょう。〔1年契約のパートタイマーで時間給制社員を解雇するとき〕

 この人を解雇するとき、まず民法上は第627条1項と第628条の縛りを受けますが、第627条1項より労働基準法第20条が優先しますので、解雇予告は30日以上前にしなくてはなりません。
次に債務不履行による過失責任は、労基法上には定めがないため民法第628条が適用され、過失により相手方に損害を与えたときは賠償責任を負うことになります。この損害賠償額は期間満了までの賃金相当といわれていますので、仮に3ヶ月で解雇したときは残り9ヶ月分の賃金相当額の賠償を求められることがあるのです。


【まとめ】
(1)解雇の手続は民法でなく労働基準法の定めに従います。
(2)労基法に定めがないこと(損害賠償など)は民法に戻って判断します。


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解雇-権利の濫用法理-

2004-11-22 18:22:57 | 解雇の知識

【解雇と権利の濫用法理】

 解雇を大辞林で調べてみると「使用者が雇用の契約を一方的に解約して使用人をやめさせること。」と書かれています。
そして雇用契約は民法第623条から第631条に定めがあるのですが、これは次回に説明します。

 「解雇は30日前に言うか30日分の解雇予告手当を払えばいつでもできる」と考えられている方、特に経営者の中でそう考えられている方がいるのですが、必ずしもそうではありません。労働基準法第20条では抜き打ち解雇を制限しているだけであって、それが満たされれば解雇しても良いということではないのです。

 会社には人事権や懲戒権、そして解雇権などのいくつかの権利があります。解雇はこの権利を行使することなのですが、民法第1条3項で「権利は濫用してはいけない」と定められています。つまり、権利の行使であってもそれを濫りに使用して他の人に迷惑をかけてはいけないということです。そのため、合理的な理由のない解雇は解雇権を濫用したものとして過去の裁判で無効とされてきました。
そして2004年1月からは労働基準法にも「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」(18条の2)が加えられることになりました。

 なお、どのようなときが「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」のかは、今後ケーススタディの中で触れてゆきます。


【まとめ】
(1)解雇はそれが権利の濫用となるときは無効になる。

【解雇権濫用の基本判例】
●解雇権濫用法理を最高裁で明確に承認した判例
ID=00669(このIDをリンク先の枠内に入力し、全情報ボタンを押してください)
全基連判例検索へ日本食塩製造事件(最高裁昭和50年4月25日第二小法廷判決)

最高裁判例検索へ日本食塩製造事件(最高裁昭和50年4月25日第二小法廷判決)

●就業規則上の普通解雇事由に該当しても常に解雇し得るものではないとした判例
ID=00799(このIDをリンク先の枠内に入力し、全情報ボタンを押してください)
全基連判例検索へ高知放送事件(最高裁昭和52年1月31日第二小法廷判決)


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