goo blog サービス終了のお知らせ 

解雇・退職110番

解雇・退職トラブルの知識!知っていて良かった~!
by 竹林社会保険労務士事務所

辞職-労働条件の明示(労基法15条)-

2004-12-01 18:51:45 | 辞職の知識

【労働条件の明示】

(労働条件の明示)
第15条使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働奨励で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
 前項の規定によって明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
 前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から14日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。

 労働条件の明示は他にも契約期間、就業の場所、始業終業時刻、退職・解雇に関する事項なども記載しなくてはなりませんが、ここでは省略します。
民法のところでも触れましたが、民法と労基法が違うことを言っているときは労基法が優先します。そして、辞職に関しては労基法は明示された労働条件と実際の労働条件が違ったときのことしか定められていません。

 ここで言う労働条件はあくまでも自分自身の労働条件ですし、社宅の供与など福利厚生とみられるときは労働条件にはなりません。もっとも社宅の供与であっても賃金と見られるとき(均衡手当を払っているようなとき)は、即時解除の要件を満たしますし、仮に労基法第15条が適用されなくても民法第541条の規定によって労働者が催促をしても社宅に入れないようなときは契約を解除することができます。(本当に民法と労基法の関係やややこしいですね。)

 ところで、求人広告と実際の労働条件が違ったときはどうでしょうか?日通信販事件では「右は募集広告であって、いわゆる申込の誘引に過ぎないものであるから、これをもって直ちに控訴人と被控訴人との間で請求の原因3(一)の如き約定が成立したものと推認することはできない。」としていますので、労基法第15条は適用されません。
但し、これも悪用すると職業安定法の明示義務の規定に反しますし、モラル的にもトラブルに繋がりかねませんのでご注意ください。

 なお、第3項の帰郷旅費は当該労働者だけでなく、労働者と一緒に引越ししてきた家族の旅費も含まれます。

 解雇・辞職と労基法との関係は今回で終了です。
できるだけわかりやすくと思いましたが、振り返ってみるとかえって難しくしているかもしれません。今後、すこしずつわかりやすく変えていきますので、時々見てやってください。


【まとめ】
(1)明示された労働条件と実際の労働条件が違うときは、労働者は契約を即時解除できます。
(2)ここでいう労働条件は自分自身の労働条件に限ります。また福利厚生や求人広告に記載された条件はここでいう労働条件に該当しません。
(3)労基法第15条に該当しなくても民法第514条に基づき解除できることがあります。。
(4)帰郷旅費は同居の家族の旅費も含みます。

【参考判例】
ID=00153(このIDをリンク先の枠内に入力し、全情報ボタンを押してください)
全基連判例検索へ日通信販事件(東京地裁・昭和58年12月14日・判決)

この記事が参考になった方は人気blogランキングの投票にご協力ください!


解雇、労働問題に関するご相談は竹林社会保険労務士事務所まで!

辞職-就業規則と民法の関係-

2004-11-23 01:21:08 | 辞職の知識

【就業規則と民法はどちらが優先する?】
 就業規則に「自己都合退職のときは退職予定日の1ヶ月以上前に退職願を提出すること」といった定めをしているケースは多いと思いますが、これは有効なのでしょうか?

 「民法の規定は任意法規と解されているため、労働契約や就業規則で民法と異なる定めをした場合にはその定めが優先するが、それが極端に長いときは退職の自由を制限するため、民法90条違反(公序良俗違反)として無効となる」という説がありますが、高野メリヤス事件では「就業規則の規定は、予告期間の点につき、民法第627条に抵触しない範囲でのみ有効だと解すべく、その限りでは、同条項は合理的なものとして、個々の労働者の同意の有無にかかわらず、適用を妨げられないというべきである。」と、民法627条は強行法規だと解釈しています。
ここでは後者の強行法規ということを前提に考えてゆきたいと思います。

 前回に見たとおり、時間給制社員や日給制社員の場合は、民法第627条1項により申し入れから2週間後に自動的に雇用契約を終了させることができますし、退職願も不要です。(但し、後々言った言わないのトラブルを避けるためにも退職願は提出するべきでしょう。)

 それでは月給制社員の場合はどうなるのでしょうか?
賃金計算期間の前半に申し入れたときはその期の末日、後半に申し入れたときは翌期の末日というのは今まで見たとおりです。しかし、前半のときは申し入れから最短15日程度で退職することになりますし、後半のときは最長45日程度になります。
このようなときは先の判例にあるように「民法第627条に抵触しない範囲でのみ有効」なのですから、前半に申し入れたときは民法が優先し、後半に申し入れたときは就業規則が優先することになります。

 もっともこれらは辞職、つまり労働者が一方的に契約を解除するときのことであって、合意退職(合意解約)の場合は「1ヶ月前に退職願を提出すること」と定めることに特に問題はないと思われます。
但しその期間が世間一般常識から言って長すぎるときは「退職3ヶ月前までに退職届の提出を義務づける規定は、退職の自由に反し無効」としたプラスエンジニアリング事件がありますので、合意退職であっても1ヶ月くらいが相場と思われます。


【まとめ】
(1)就業規則の条項とと民法627条が異なるときは、民法627条に抵触しない範囲において就業規則は有効になる。
(2)合意退職の場合は予告期間を1ヶ月程度に定めるのが相当。

【参考判例】
ID=00425(このIDをリンク先の枠内に入力し、全情報ボタンを押してください)
全基連判例検索へ高野メリヤス事件(東京地裁・昭和51年10月29日・判決)

ID=07803(このIDをリンク先の枠内に入力し、全情報ボタンを押してください)
全基連判例検索へプラスエンジニアリング事件(東京地裁・平成13年9月10日・判決)


この記事が参考になった方はクリックにご協力ください!


この記事に関するご質問は本家サイトのメールフォームをご利用ください。

辞職-民法との関係-

2004-11-22 22:14:03 | 辞職の知識

【合意退職と辞職】
 まず知っておいていただきたいのは「辞職」と「合意退職」は違うということです。
「合意退職(合意解約)」は労働者が契約の解除を会社に申し入れ、会社がそれに応じることによって雇用契約が終了することを言います。
「辞職」は労働者が一方的に契約を解除することで、会社の承認や合意を待たずに民法の定めにより雇用契約が終了することを言います。

【辞職と民法の関係】
 さて、「解雇-民法との関係-」のまとめで(1)解雇の手続は民法でなく労働基準法の定めに従います。(2)労基法に定めがないこと(損害賠償など)は民法に戻って判断します。と書きましたが、辞職の場合はどうでしょう。

 まず、労働基準法上に辞職について記載がないか調べてみると、同法第15条2項に「明示された労働条件と事実が相違するときは、労働者は即時労働契約を解除することができる」と書いてあります。
※労働契約は雇用契約の中に含まれますので、ここでは雇用契約として話を進めてゆきます。

 雇用契約を結ぶときに労働条件を会社は提示することになりますが、その労働条件と実際の労働条件が異なるときは、労働者はいつでも辞職可能ということです。なお、ここで言っているのは、雇用契約を結ぶときに提示された労働条件との相違であって、求人広告などに載っている労働条件との相違を言うのではありませんので、ご注意ください。

 その他には労働者からの辞職に関する定めはありませんから、ここで民法に戻ることになります。民法では第627条と628条が雇用契約の解約に関する条文です。
(1)第627条1項では解約の申し入れをして2週間すれば自動的に雇用契約は終了するとなっています。
(2)同2項では、月給制社員の場合、賃金計算期間の前半と後半で扱いが違ってきます。
(3)同3項は年棒制など半年以上の期間で賃金を決めたときですが、ここでは割愛します。
(4)そして、第628条では有期雇用契約の場合は(627条を満たした上で)いつでも雇用契約を解約できるけれども、どちらかに債務不履行の過失があったときは損害賠償の責任を負うことになっています。
辞職では、時間給や日給の場合は(1)、月給の場合は(2)、有期雇用契約のときは(3)が適用されます。

 ここで注意が必要なのは(2)です。当期の前半に申し入れをしたときは翌期の初日に雇用関係がなくなりますので、その前日、つまり当期の末日が退職日になります。
次に、当期の後半に申し入れをしたときですが、このときは翌々期の初日に雇用関係がなくなりますので、その前日である翌期の末日が退職日になります。
11月15日に申し入れをしたときは11月30日が退職日で、11月16日に申し入れをしたときは12月31日が退職日ということです。

 この他に就業規則との関係がありますが、これについては次回触れたいと思います。ここで初めて合意退職が出てきますので、次回をお楽しみに!

 なお、民法第628条によって有期雇用契約の労働者が辞職したとき、労働者に損害賠償責任が発生するかという問題がありますが、多くの場合、会社がどれだけの損害を被るかを証明することは難しいと思われますし、証明できたとしても訴訟費用など割があわないため、実際に労働者が損害賠償責任を追及されることは殆どないと思います。また、パートタイマーに適用される就業規則に自己都合退職が定められていれば、その手続を守っていれば損害賠償の責任を負うことはありません。


【まとめ】
(1)辞職と合意退職は別物です。区別して考えましょう。
(2)辞職が労働基準法に定められているのは労働条件が違ったときの即時解約だけ。その他のときは民法に戻って判断します。
(3)月給制の場合、民法第627条2項が適用されます。

この記事が参考になった方はクリックにご協力ください!


この記事に関するご質問は本家サイトのメールフォームをご利用ください。