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str_takeshi雑記帳@茨城歴史ゲームの会

「しみゅれ~しょんげーむ」を中心とした
趣味の世界

GJ#65「幕末維新始末」にみる「歴史の再現性」とは

2023-12-21 00:02:13 | シミュレーションゲーム

まずはお詫びから。

当ブログ、昨年12月以来の更新となりますことを御容赦下さい。

 

過去の例会記録についても、停滞してしまい申しわけなく。

試験的に行ったところ比較的御好評だったので、今後は下のような形態での発信継続を考えております。

(現X、旧twiitterが存続すればになりますが。)

第151回茨城歴史ゲームの会

第151回茨城歴史ゲームの会

第151回茨城歴史ゲームの会日時:令和5年10月28日(土曜日)09:00~20:00会場:土浦市亀城プラザ第2会議室参加者9名、見学1名

Togetter

 

さて、ここから本題。

War-Gamers Advent Calendar 2023の参加記事となります。

 

War-Gamers Advent Calendar 2023 - Adventar

一部でまあまあご好評いただいております。今年もやります。7年目となりました。過去6回の様子は以下のリンクをご覧ください。[War-Gamers Advent Calendar 2022](https...

Adventar

 

特にウォーゲーム界の流行を追うわけでもなく、自分の嗜好と対戦機会に従ってのゲームプレイの結果、小生が2023年に最もエネルギーを投入したのはGJ 65号付録「幕末維新始末」になると思います。vassalモジュール(まだ未公開)を作成してくれた畏友「あざらし」(@moa5959)さんに感謝。

201712月なので、6年前に出版された作品です。ずっと本棚で眠らせていてゴメンナサイ。

GJ誌56号「江戸幕府の黄昏 」の後半以降(開国~大政奉還まで)と翔企画SSシリーズ「明治維新」(鳥羽伏見戦以降)を合わせた時期を扱います。

政権・佐幕側優位からスタートし、時間経過とともに倒幕側が優位になっていく構造です。しかしながら、筆者周辺でのプレイでは、史実では勝利した倒幕側がなかなかゲーム上での勝利を得ることができませんでした。(恐らく10戦以上は負け続けたような。)

カードの引き、支配判定ダイス等、両軍ともに運不運の振れ幅が大きく、序盤にアクシデントが重なると容易に倒幕側がサドンデス負けしてしまう。佐幕側がゲーム上の最善を尽くすと無政府状態に陥り、結果引き分け(または両者敗北)になりやすい等々。

(最近のソロプレイでは、少し経験値が上がって?、倒幕側でも勝利するようになりましたが。)

佐幕側が有利にも思えるゲームバランスですが、本誌記事(デザイナーズノート、プレイ指針等)によれば、これはデザイナーが(先行作品である翔企画SSシリーズ「明治維新」の過激な部分をオマージュされてか、少々誇張あるものの)史実をそのように解釈し、意図したデザイン結果であるようです。

「史実」の結果をゲーム上の確率の「最頻値」または「中央値」に設定せず、可能性はあったが、実は「稀な事態だった」として扱うのは、なかなか勇気ある決断だったのではないかと思います。

史実で勝利した倒幕側の勝率が悪いから「歴史の再現性」が悪いかというと、そうではない。

歴史のある時点から現在に至る過程が、必然のもの・可能性が高かったものだとは限らないということを体験させてくれる点で大変有意義なのではないかと思う次第です。

まだ一般流通在庫ありで入手可能のようですので、興味ある方にはお勧めしたいと思います。

対戦御希望あれば、「茨城歴史ゲームの会」でお待ちしております。

 

 

 


WGJ#4「討入忠臣蔵」作戦研究&選択ルール私案

2022-12-14 00:02:12 | シミュレーションゲーム

茨城会ブログ、移転後長らく休止状態で申し訳ありません。

とりあえず復活第一弾として、War-Gamers Advent Calendar 2022 参加記事となります。

以前は年末年始時代劇の定番だった「忠臣蔵」ものですが、時代劇不遇の時代に加えてコロナ禍が加わった現状では、若い世代の方々には随分と馴染みが薄くなってしまったのではないでしょうか。 本日は(新暦旧暦の違いはありますが)12月14日ということで、この元禄赤穂事件のクライマックス、吉良邸討ち入りを扱ったウォーゲーム日本史第4号「討入忠臣蔵」を取り上げたいと思います。

和モノで本作のように屋内戦闘を扱った作品は、商業ベースでは当方が知る限り古くは「伊賀対甲賀」(バンダイ)、新しくは新生タクテクス内の「本能寺の変」、合わせて3作ではないでしょうか。 (もしかしたらRPG系では何かあるかもしれませんが。)ですので本作の存在は大変貴重かと思われます。

本作は、「赤穂事件:吉良邸討入」の完全な史実というよりは、脚色された「忠臣蔵」ドラマの再現に傾いており、登場人物能力など設定がその方向で(吉良方にバランスを傾けて)調整されております。そのためか、プレイヤーの経験度に拠りますが、ゲーム上の最適解を求めて行動すると赤穂浪士側の勝利は困難になっていく傾向にあると思われました。 (この辺りはプレイ指針にも記載あり、出版時点からWGJ編集部も認識はされていたようですが。)  

そこで、このゲームを複数回対戦しても赤穂浪士が本懐が遂げられない、「忠臣蔵」が成立しない、とお嘆きの諸兄に私的ディベロップ案(選択ルール提案)を提示したいと思います。  本年度のアドベンドカレンダーのお題「第一ターン特別ルール」にも繋がっております。 原版にある選択ルールも含めて、以下の1つ、または複数を、プレイヤー両者の合意で導入してみてください。 いずれも赤穂浪士方に有利となるルールです。

10.7 清水一学の戦闘力は5剣でなく4剣に変更する。(これでも史実よりは強力かと。)

10.8 吉良方は、第一ターンはスタックで行動できない。 また、吉良方は、第二ターンはスタックでの行動は2枚までとする。(赤穂浪士から攻撃を受けた場合は通常通り、スタックで応戦可能。)

10.9 吉良上野介の脱出が成立しても、その時点で吉良左兵衛が除去されていれば 吉良方勝利でなく「引き分け」とする。

10.10 吉良方の移動力無制限を24スクエア(赤穂方の倍)までとする。

上記案に至った経緯を2つほど提示します。

その前に、戦闘解決方法から。 通常、1マスに存在できるのは3駒まで。手番側は未行動ユニットを指定して移動、敵に隣接したら戦闘を解決します。行動開始時にスタック状態にあれば、そのままグループとしても行動可能です。 戦闘時にはそれぞれ代表ユニットを選び、攻撃側は行動したグループの枚数、防御側はスタックの枚数分ダイスを振り、その中の最大値を代表駒の戦闘力に加えたものを比較して勝敗を決めます。同数ならそのまま引き分け膠着。差があればその差分駒を除去し、残存駒を退却させます(連鎖退却あり)。

この時、「剣」修正を持つユニットは特例で更にダイス一個余計に振れます。

ということで、サイコロ1個~4個振った時の出目最大値の分布確率をグラフ化しました。 4個振りだと半数以上「6」が出る計算です。

事例1:「裏門開けたら、清水一学」

かつてTVCMで「玄関開けたら2分でごはん」というのがありましたが。 当ゲームでは「裏門開けたら清水一学」「裏門通れずゲーム終了」ということが(結果としてルールミスだったのですが)起こりました。

本ゲーム、赤穂浪士方の戦力配分は史実準拠で固定されています。 そして表門側は侵入経路が門3カ所と梯子7挺利用可能ですが、裏門側は「裏門」一箇所のみです。ですので裏門組は何としてもここを突破突入せねばなりません。

添付図は、赤穂方の初手、「槌」能力あるスタックが裏門扉を破壊し、門内に前進した図です。 異変を察知した吉良方は、早速これを排除すべく、最強剣士「5剣」の清水一学を含む3枚スタック(一学に茶坊主2枚でOK)を急行させます。

ここで、赤穂方のスタック構成が要検討となります。まず、清水一学と同様に、ゲーム中最高「5剣」能力の「堀部安兵衛」が居るとして計算してみましょう。

両者(堀部vs清水)の能力は互角、補助人員2枚も互角となれば、戦闘結果で「膠着」となるのが、 4割弱、どちらかが勝利し堀部あるいは清水が後退するのがそれぞれ3割強となります。 両者譲らず、第2、第3、第4ターンと膠着が続けば(確率1.87%)、裏門組は吉良邸敷地に全く入れずに朝を迎えゲーム終了・・・・。 ええ、確率は低いんですけど、私が関わってプレイすると発生するのですよ、希少案件が、看過できない割合で・・・。

これは、ちょっとオカシイのでは、とWGJ編集部に質問したところ、以下のことが判明。

「移動後」はスタック判定対象時期ではない。

ルール原文には「行動組の移動中、及び戦闘時は一時的にこの制限をオーバーしても構いません」とあり、戦闘時の連鎖退却判定を指して「一時的」と表現したもので「移動後」はスタック制限対象なのかと解釈しておりました。しかし、この「裏門問題」から疑問を生じ、質問したところ、移動~戦闘(または射撃・照合)の一連の行動中は(移動後も含めて)スタック制限なし、が正しい解釈とのことでした。

ですので、既に制限いっぱい自軍3駒いるマスにも進入した上で行動可能。場合にては連鎖退却を利用する形で既存ユニットを1マス前進させることも可能なようですので、御留意願います。(公式Q&Aには未掲載)

さて、これならば、裏門口に清水一学スタックが居座っても、順次行動組スタックを突入させればいずれ突破できるだろうと予想されましたが。 早速検証テスト・・・あれ、清水一学スタック、やはり排除困難・・・。

すんなりと堀部で勝てればよいのですが、ダメだと次は「4剣」の不破数衛門のスタックでチャレンジです。この時の勝率は勝ち12.2%、膠着19.3%、負け68.5%。一気に勝率ダウンです。

それ以外の戦闘力3のユニットが代表者では当然もっと確率は悪くなります。下手すると、裏門突破はなんとか成功したが、負傷者続出で裏門組は半壊状態といった事態に。プレイ指針にある「2ターンまでには長屋戸口を封鎖」など到底困難です。

まあ、対策が全くないわけではなく、条件が揃えば、例えば清水一学スタックが不用意に裏門スクエア(ロ三)に戦闘後前進をした場合、(イ二)からは射線が通るので、「弓」能力駒で狙撃、(6のみ命中を最大4回)とか、

表門組の早水藤左衛門の「射」で背後から遠距離狙撃(5、6命中)などで打開できるかもしれませんが。

しかし、それぞれセットアップ時からある程度想定準備しておく必要があります。

吉良方もまたこれらへ対策する余地があったりします。

総合的に見て吉良方の裏門死守策はサイの目次第ですが非常に有効性が(ゲームバランスを崩すほど)高いと考えます。

 

事例2:「上野介全力脱出作戦」

プレイ指針には「赤穂浪士が慎重にプレイすれば、吉良方の脱出は容易ではない。」とあるが、筆者の意見は異なります。

前述のように赤穂浪士は表門側、裏門側に戦力が分散しています。そして表門側には戦闘力4は一人だけ(かつ「剣」ではない) 。ならば、裏門は必要最小限の人数で遅滞戦術で凌ぎ、残りの全戦力を表門側に集中投入する作戦です。 出口は表門、新門、厩門の三カ所。赤穂浪士方からすると、分散して守る必要があり。そして恐らく地形的に厩門が突破目標になるのではないでしょうか。 移動力無制限を活用し、吉良方が順次スタック梯団を組んで押し込んでいくイメージ。最後は清水一学に「山」「川」両方の上野介で組んだグループで盤外突破タッチダウンを図ります。

これを準備周到・計画的に行えば、「必勝」とは言えませんが、吉良方勝率は50%は下らない印象でした。

でも・・・最初から脱出前提というのは何だかな、という意見はごもっとも。 当時の人々からすれば城を捨てて逃げだした、ともとられるのではないでしょうか。この辺りは勝利条件設定をどこに置くか、判断が必要な部分でしょう。

さて2つの事例を提示しましたが、どちらも「清水一学」が強すぎるのが問題に思えました。 そこで私案1はまず「清水一学の評価を落とす」を提示しました。

一方で、印刷されたユニットの数字を変えるのは抵抗感があるのも事実です。 そこで、私案2は史実準拠の状況設定?と理由づけして、奇襲を受けて指揮系統が混乱、当初は各個に行動せざるをえなかった吉良方を表すルールとしてみました。 こうすれば序盤に「最凶スタック」が形成される事態はかなり低減されると思われます。

私案3、4は上野介計画的逃亡の成功率、勝率を落とすことを目的としています。 私案4の「24」という数字は、赤穂方の倍であることと、直線ならば屋敷の東西を移動できることから設定しました。完全無制限よりは僅かでも制限あるほうが良いと考えました。

恐らく、効果としては、私案2が一番強く、次いで1、3、4の順かと。

競争シナリオ「大石父子手柄争い」に適用させるのはどれが良いかは今後の検討課題です。

既に版元絶版品ですので、なかなか新規入手は難しいかと思いますが、押し入れ本棚に入れっぱなしはもったいなく思われる作品です。お手持ちの方は是非再注目をお願い致します。(国通さん、BOX再版お願いします。)

 

対戦御希望の方は「茨城歴史ゲームの会」でお待ちしております。

 


ルール?のあれこれ。

2019-12-16 23:24:00 | シミュレーションゲーム
War-Gamers Advent Calendar 2019」参加記事です。

12月8日、飼い猫の奇襲確保に失敗、反撃をくらう(ひっかき傷2カ所)と共にギックリ腰を再発。ようやく痛みも和らいできたところで、土曜日(14日)夜から歯痛に悩まされ。
 日曜日が歯科主治医(小中高同級)の当番日だったので緊急対応してもらい、一息ついたのですが、以前処置してもらった部分の奥が化膿していたようで、午後になり寒気がすると思ったら38.7度の発熱。一過性の菌血症だったかもしれませんが、とりあえず抗生剤内服で解熱したところです。

 発熱中に書いた文章なので、ところどころ表現がオカシイ思いますが、大目に見てください。



1980年代国産ウォーゲームが登場し、自分はその恩恵?を受けた世代でありますが、残念ながら国産であってもゲーム出版後にルール正誤表や追記補足、Q&Aのたぐいが全く必要なかったものは、皆無とは言えませんが、ほぼ無かった、とは言えると思います(現在進行形)。過去作の復刻でも、忠実にエラッタまで再現してたり。

 これは海外作のものでも、対象を一般ボードゲームに拡げても同様でしょう。とりあえず世に出して、走りながら直していく、または進化させていくというのが、その是非はさておき、文化なのだと思います。
 ただ、その場合、正誤表や疑義解釈などの情報は、たとえ有料でもかまいませんので迅速かつ小まめに公表して戴きたい(要望)。
 ルール本文よりQ&Aのほうが結果的に枚数多い、なんて事例も時には存在しまして、さすがにそれは・・・とは思いますが。
リンクは貼りませんけど。

 また、昨年話題になった某入門用?ゲーム。ルールブックの記載に注意を払われたとのことですが、残念ながらそれでも疑義解釈、追加ルール無しとは行きませんでした。
リンクは貼りませんけど。
入門用・初心者用であるからこそ、品質管理には頑張って貰いたいと思います。


先日、実家の引き出しを漁っていたら、下のを見つけました。

昭和60年、西暦では1985年。阪神日本一の年です。
小生が高校一年生の時の進路適性検査結果。
現在メシの種にしてるものはめちゃくちゃ適性が低くて申し訳ないスミマセンなののですが。
史学・法学あたりが高ポイントなのは、現在に通じる部分ですね。

笑ってしまうのがこの部分。

数的思考力がサイテー。
どおりで確率は計算できてもそのリスク量までは理解していないのは先日の対戦でも明らか。

35年経っても人間は早々変われないということですね。

さて、「言語学的思考」が高い?ソレは本当か??と疑問あるところではありますが、確かに言葉づかいにはウルサイかもしれない。


ウォーゲームのルールはある程度には複雑ですが
その記載・記述等の整合性がやたら気になる。
あるいは早とちりして誤解するということが度々あるのです。

一番多いのが、ルール冒頭の総論部分で否定されているのに、後半各論部分で例外規定がある場合。

具体例は・・・出したいけど、ちょっと差し控えて(笑い)例題で。

5項 移動 
5.0 ユニットの移動は、移動フェイズに行います。
(中略)
5.19 自軍戦闘フェイズに条件を満たせば、特殊移動が可能です。


こんな具合に記載されていると、私の頭の中は相当バグるのです。
えええ~となりもうルール理解が混乱状態。

これが、冒頭部分で
5.0 ユニットの移動は、原則として移動フィズに行います。
とあれば、「原則」もあれば「例外」も存在するのだと予め脳ミソに隙間を作ってルールを解釈するので、最後まで整合性が取れるのですけどね。

他では、時々判定や行動の部分で「連続して」「直ちに」などの記載がある場合。
プレイしてみると、あまりその表現に意味がなく、質問してみると
必ずしも厳密に「連続して」処理の意味ではなくて、同一手番内の事だった。
行動AとBがある場合、AABやABBに制限されるの意味でなく、ABAやBABも実は可能だった、なんてこともありました。

これはルール執筆者(多くはデザイナー?)の文章のクセだったり、過去作のコピペだったり、他者校正の省略だったり、〆切に迫られて・・・だとは思いますし、その辺を多少忖度できる??程度には年をとった(もうすぐ50歳)のですけど・・・。

でも、しかし(苦笑)自分の感覚だと「この記述だと複数解釈の余地があるのでは??、明確化が必要では??」ということを、多くの方はあまり気になさらずさらっとプレイされているように思われ、なんか自分は細かい部分に拘り過ぎで、人生損してるように感じることもあります。

10代の頃からの性癖みたいなので、各ゲーム出版社の方々には今後も質問メールを飛ばすと思いますが、御対応宜しくお願い致します。

以上、乱文乱筆失礼しました。

str_takeshi



ウォーゲームの棋譜についての小考

2018-12-24 00:00:00 | シミュレーションゲーム
Harpoon Arrowさんが企画されたWar-Games Advent Calendar 2018への参加記事です。

自分としては、かなり前から作文を開始していたのですが、色々と纏まらない、起承転結ができていない文章にしかならず。
一昨日の忘年会の余韻だったり、昨日久しぶりの筑波山登山の筋肉痛だったりで、すみませんが諸々ご忖度戴ければ幸いです。



シミュレーションウォーゲーム(以下SLGと略)のプレイに何を求めるかは全く個々人の自由であり、百人いれば百通りのスタイルが存在します。ユルくプレイするのも、ガチに戦うのも、「史実」に準拠した作戦を採るのも、ルールの枠内で自由な発想を試すのも、個々人に好き嫌いはあるにしてもそれらの価値に上下は無い、と最初におことわりしておきましょう。

さらに、SLGは開始時の設定や勝利条件のの非対称性など競技ゲームとしての不完全性がある以上、その競技技術≒棋力の向上を求めることが
妥当かどうかでも議論があることと思われます。
研究が過度に進むことでそのゲームの最適解が判明し、対戦ゲームとしては「寿命を迎える」ことに忌避を感じる方もおられるでしょう。

しかしながら、デザイナーの「史実(架空設定も含む)解釈」を窺い知るには、一定程度ゲームシステムを運用できる技量が必要であることまでは否定される方は少ないと思います。

ボックスゲームでも雑誌付録ゲームでも、基本部分のガイドのため、作戦指針やリプレイ記事を掲載するなどの努力があり、それは一定の効果はあるものと思われ、メーカーサイドにはそれを是非継続してもらいたいと思います。

さて、以下は主に、あなたが競技ゲームとしてより熟練者を目指すという選択をした場合についてです。
繰り返しソロプレイで研究する。対人対戦回数を重ねる。上級者に指南してもらう。研究記事の掲載された同人誌を入手する。雑誌記事や、ネット上のプレイ報告を参考にする、などでしょうか。

近年はネット環境の整備により、有志の方のブログ等での対戦・リプレイ記事を参照したり、通信対戦などの活用も可能となりましたが、実地での対戦や上級者との交流においては、大都市圏のサークル参加などに負うところがまだ大きいように思われます。(非大都市圏居住者の幻想かもしれませんが。)

小生は、11年程前にこの趣味に現役復帰を果たしました。広義では首都圏内に居住し、片道2時間圏内まで広げれば多くのサークルに参加できる可能性があり、
また7年前からは月1回は地元でサークル活動を主催する立場となりました。
ネット上でも知人が増えまして、週一回程度は通信対戦をできる環境です。

この記事を読まれている皆さんの平均よりは、現在の対戦機会には恵まれているのかもしれませんが、復帰当初は旧知の友人との対戦や、年に数回のサークル参加に限られ、自分の競技技量がどの程度のものか計りかねたものでした。
幸い、しばらくして通信対戦(具体的にはvassal)を案内して戴き、空間的・時間的制約をある程度越えて対戦機会を増やすことができました。

そして更に重要であったのが、特定のゲームではありますが、対戦記録(ログファイル)を後で詳細に確認・検討することが可能となり、反省点を後の対戦に効果的に生かせる・・・、自身の棋力向上に繋がった、ということでした。

一般的な運動競技(特に球技)と違い、ボードゲームは机上盤上で多くが完結しておりますので、理論上その完全記録は可能。その中でも、伝統的な対戦ゲームである囲碁・将棋・チェス・バックギャモン・オセロ等が今日まで一定の隆盛を維持しているのは記録・・・棋譜の取りやすさ、があるのではないでしょうか。
そして棋譜が残り、情報伝達され、それを元に研究が進み、競技レベルが向上する。後から参入した方も、過去の棋譜を入手して自己研究が可能なことは重要かと思います。

SLGも多くは理論上完全記録が可能。vassal上での対戦ならログ記録を開始すれば全て解決とは前述のように大変な進歩なのですが、通常の非電源依存状態の場合は結構手間暇が必要となります。

一昨年の猿遊会で「モスクワ電撃戦2」トーナメントに参加し、予想通り一回戦敗退の私は、後学の為にとノートパソコンを持ち込みvassalモジュールを活用してある対戦の採譜を試みましたが、あえなく失敗でした。自分の入力速度では実地対戦の速度に追いつけない。
今度チャレンジするなら動画+音声記録が必要と痛感しました。(結局電源依存ですね。)

些か話題がそれました。

近年、過去の名作(迷作?)が復刻再発の機会が増えているように感じます。
しかし、それらを新規購入の方は、既に先行研究が進んでいる古参の方との対戦には躊躇を感じる方も多いと思います。
前述のように「リプレイ記事」や「作戦研究」などが存在すれば(JWC「日露戦争」「バルジ大作戦」は好例)そのハードルは幾分下がるのでしょうが、あまり「研究記事」が詳細すぎると、自分で研究する楽しみ(苦しみ?)を奪うという意見もあるでしょう。

熟練者のプレイは知りたいが、研究は自分でしたい、という場合。
一案として、その実現には多くの課題が予想されますが、熟練者による対戦の「完全棋譜」公開はどうかと思っています。
紙媒体でのそれは困難でしょうが、出版社公認のvassalモジュールが存在すれば、それで対戦ログを再生することにより、PC上ではありますが、諸々の制約を超えて、熟練者の実プレイに(ある程度)接することができます。
希望するなら、対戦者または解説者による「解説付き」も技術的には可能でしょう。

「リプレイ記事」も、vassalモジュールが既に存在するならば記事にリンク先を記載して実対戦ログを参照してもらう、といった利用はできそうですね。
(ここまで書いて、以前CMJで「CyberBoard」のログと連動した記事があったような記憶が・・・。)

なかなか国内メジャー2誌で、こんな企画を実現は困難かもしれませんが、実質業界3番目?の同人誌ならもしかして・・・などと無茶振りしまして、この文章を終わらせて戴きます。

最後までお付き合い、ありがとうございました。
メリークリスマス。



新人さん達?に向けて

2017-04-09 20:57:00 | シミュレーションゲーム
Twitterを眺めていると、季節柄期待の新入生がWGを初プレイ、といった風景を目にします(ホントか?)。多くのテーマがある中で、比較的主流にあるものに、ヘクスマップを用いた地上陸戦ものがあります。
戦術級以下のスケールは別ですが、それを超えると多くの場合ZOCの概念が出てきます。ヘクスとZOCというものが少し厄介で、他のスケールのゲームではかなりの上手でも、この系統には苦手意識があるという方も存在します。況や新兵の方においてをや。

過去も現在も、この系統の入門編としてはJWC#3「ドイツ戦車軍団」が定評で、ガイドブックも付いており多くのことが記載されています。
それでも全くの初心者がすぐに経験者と互角に戦えるわけではありません。
本当は複数回の対戦を通じて以下の技術?を自分自身で発見してもらうのが理想ですが、とてもそんな時間は無いという方々?に向けて、私ごとき永遠の中級者がなんですが、少し書いてみようと思います。

前提として、この系統の基本である、メイアタック、ZOCtoZOC移動禁止、戦闘後前進1ヘクスのみの場合。具体的には「エル・アラメイン」ですね。

以下に記述のテクニックは、現実?とは些か違い、あくまでゲーム上でしか通用しないものです。「シミュレーション」と云いつつも、釈然としない部分ではありますが、これらを常時意識してプレイできるなら十分初心者卒業でしょう。

どちらかというと防御側のテクニックです。

①2ヘクス間隔の戦線
ガイドブックにも戦線形成の重要性は記載がありましたが、具体的な図示は下のような1ヘクスおき戦線だったかと。

これだと9ヘクスの戦線維持に4ユニット必要です。


ここで、この形で2ヘクスおきに部隊を置けば、3ユニットですみます。但し敵の攻撃は3方向となるので、その点は注意。


2ヘクスおきでも、この形では包囲されるので要注意。


②ZOCを用いた一部間接包囲

包囲の基本は2ユニットで両側からですが。


駒数に余裕があるなら、直接隣接するのは1個のみにするのもアリ。弱い部隊でも接していなければ攻撃は受けません。


直接隣接する部隊が地形効果を利用できれば更に効果的。


③空城の計
勝利条件が関わるヘクスは大抵地形効果が存在し、そこに部隊を配置するのがセオリーですが、場合にてはあえて部隊を配置しないのが良い場合もあります。

「エル・アラメイン」で最終ターン、ドイツ軍攻撃前のイメージ。
アラム・ハルファ高地にイギリス軍がいないので、戦闘を仕掛けて占領することができません。
(当然ながら、2ヘクス以上の戦闘後前進が可能なら話はちがってきます。)


如何だったでしょうか。「エル・アラメイン」のイギリス軍、「ダンケルク」の連合軍で連敗脱出が目標・・・の方々には一助になると思います。