「ぼくら党」のブログ

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破局に向かいつつあるのか。(イラン空爆計画について)

2006-04-11 16:59:07 | イラク・中東問題

■アメリカによるイランへの限定的空爆が計画されているという記事が目に飛び込んできた。この記事で特に衝撃的なのは、戦術核も使用するという部分だ。

ブッシュ大統領は「週末に記事を読んだが、でたらめな憶測に過ぎない」と否定しているが、本当だろうか?(だいたい、本当であっても「先制攻撃します。」と言うわけが無い。)

■記事によれば、空爆計画の中には深い地下壕に隠された標的を破壊するため、戦術核を使用するという案も立案されていると書かれている。 もし、ここに書かれているように「戦術核」を使用するようなことが行なわれたならば、今までの常識が覆ることになるだろう。

■現在、核攻撃は核攻撃を受けた場合に限定されるものであり、先制攻撃に核を使用することはタブーとされている。しかし、それが「場合によっては使用する」ということになれば、イランが核兵器を持つこと以上に世界の脅威になるだろう。

■核を所有しない国家に対しても、核を使用することを躊躇しないならば、核を保有していない国々が、核保有国になろうという動機付けを強めることとなり、核の拡散がいま以上に激しくなるだろうことは想像に難くない。ただでさえ空洞化が進むNPT核不拡散条約を脱退する国が次々と出てくる可能性がある。

それ以上に懸念されることはテロリストによる核兵器、核物質、及び生物・化学兵器の使用である。各国の核保有は核による先制攻撃をちらつかせれば抑えることが出来るかもしれないが、テロリストに対しては効果があるとは思えない。

■私はテロリストに対しても、ある程度の相互破壊保障はあると思っている。もし、テロリストが大量破壊兵器を使用したならば、アメリカが彼らに関わりのある地域や国を核攻撃する可能性は高い。又、テロリストも世論の支持(ある一定の地域だが)を得る必要から、アメリカを憎む者でさえ、眉をひそめるような大量破壊兵器による攻撃はタブーとして考えていると思う。

■しかし、アメリカが核による先制攻撃をしたならば、暗黙の了解として大量破壊兵器の使用をためらってきたレジスタンスやテロリストに、大量破壊兵器を使うためのきっかけを与えかねない。 核による先制攻撃をすれば、自爆まで辞さないテロリストやレジスタンスに相互破壊保障の論理は通用しなくなるだろう。

相互破壊保障の理論が通用するのは、合理的判断が可能な相手であって、それを持ち合わせていない相手に対して、核の抑止は通用しない。

■ニューヨークあたりで核爆発はもちろん、核物質や猛毒の細菌が撒かれたとしたら、大損害を受けることは間違いない。実際に炭素菌を使った犯罪があったことからも、完全に防ぐことは不可能だろう。イランの核開発防止と引き換えにニューヨークなどの大都市を破壊されれば、まったく割に合わない取引になる。


■核兵器は使用せずに、限定的な空爆を行なったとしても、現在のアメリカの状況では、事態を悪化させる事はあっても改善させることはできない。イラク戦争を早く終わらせたいというなかで、もう一つ戦争を始めることができるとは思えない。

もし、イランに攻撃を加えれば、当然イラクにいるシーア派を刺激することになるだろう。いま以上に内乱状態が進み、アメリカに対するゲリラ攻撃が激化するようなことがあれば、ますますイラク戦争解決は見込めなくなる。そうなればアメリカの国力は問題解決前に尽きてしまう。

■そもそも、イランは原子力発電のために、ウランの濃縮をしていると主張しているし(発電用の低濃縮ではなく、核兵器用の高濃縮ではあるが)、NPTにも加盟している。その一方でイスラエルやインドはNPTにも加盟していないし、核兵器を保有している。しかし、アメリカはその所有を実質的に認めている。このようなアメリカの思惑で物事が決まるような不平等がまかり通るからこそ、なおさらイランは核開発をやめないのだろう。

■イランのやり方は間違っていると思うが、彼らの主張が正論であることも確かだ。彼らの主張が正論に聞こえるのは、アメリカが恣意的に行動するからである。

■アメリカは自国の利益のみを行動の動機とせずに、世界全体の視点から行動することは出来ないのだろうか。本質的な問題解決法は、イスラエルに対しても公平に接することだろう。「世界の警察官」という自負があるなら、「警官の制服を着たならず者」であってはならない。





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- 以下引用文 -
http://www.asahi.com/international/update/0410/002.html
米で「イラン空爆を検討」説、相次ぐ
2006年04月10日10時55分 

米軍がイランの核関連施設を標的とした空爆作戦をひそかに検討していると、米メディアが8日から9日にかけて相次いで報じた。ブッシュ政権は「あくまで外交的解決を目指す」と否定しており、軍事作戦の実効性には疑問を示す専門家も多い。それでもこうした説が流れる背景には、外交交渉が行き詰まる中、武力行使カードをちらつかせ、イランに圧力をかける思惑がありそうだ。

調査報道専門のジャーナリスト、セイモア・ハーシュ氏が8日、ニューヨーカー誌(電子版)で複数の米軍・情報機関筋の話として報じたところによると、ブッシュ政権はイラン国内での秘密情報活動を強め、空爆作戦に向けた計画の立案作業に力を入れている。国防総省がこの冬ホワイトハウスに提示した選択肢の中には、深い地下壕(ごう)に隠された標的を破壊するため、戦術核を使用する案まで含まれ、これに対する抗議として辞職を口にする将校もいるという。

またワシントン・ポスト紙も9日付の1面で、ブッシュ政権が、イランへの圧力を強める大きな戦略の一環として、軍事攻撃の選択肢を検討していると伝えた。同紙によると、国防総省や、中央情報局(CIA)の計画立案担当者が、ナタンズのウラン濃縮関連施設などの標的を探っている。地上軍による侵攻は検討されていないが、核施設に限定しての空爆だけでなく、より標的を広げた長期間の空爆も考えられている。  しかし同紙は、空爆はイランの核開発を数年遅らせる程度しか効果がない上、イスラム世界での反米感情を燃え上がらせ、イラク駐留米軍を報復攻撃の対象とする危険がある、といった多くの専門家の見方も報じた。

一方、テヘラン発のロイター通信によると、こうした報道に対し、イラン外務省報道官は9日、「米国は心理戦争を仕掛けてきた」と非難し、「我々は核関連技術を保有する権利を堅持する。いかなるシナリオにも対応する用意がある」と述べた。

http://www.asahi.com/international/update/0411/006.html

米大統領、イラン空爆検討報道は「でたらめな憶測」
2006年04月11日10時10分 

ブッシュ米大統領は10日、米軍がイランの核施設を対象とした空爆を検討しているとの報道について「週末に記事を読んだが、でたらめな憶測に過ぎない」と否定し、外交的な解決策を追求する考えを改めて強調した。  

ワシントンでの講演後、学生たちとの質疑応答の中で述べた。 大統領は、「予防のドクトリン(戦略思想)が意図するのは、イランに核兵器を保有させないよう協力することだ。ワシントンでは予防というと武力の意味に取られがちだが、必ずしもそうではない。この場合は、外交を意味する」と述べ、欧州連合(EU)やロシア、中国と協力してイランに核開発を断念するよう要求していく方針には変わりがないとの考えを示した。

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