野球根性漫画としてスタートした話は、漫画の中でまさにリアルタイムに、飛雄馬の成長とともに変化していった。
厳しい父親に鍛えられる子の話から、ライバルに刺激され父親の力を借りて強くなり、世間を知り野球人生自体に疑問を感じ始め、恋を知り自我に目覚め、最愛の人を失いどん底を味わう。そして、どん底から蘇るが、その前には情け容赦無く父親が敵として立ちふさがる。指導者から敵になった父との死闘を繰り広げ、何もかも失い自暴自棄となり、人生の裏まで落ちかける。そこから愛により救われるが、最後の戦いは命をけずるものだった。自分の弱点を乗り越え、幾多の葛藤を乗り越え、行き着いた先は完全試合と野球人生の終わりだった。栄光と絶望が同時に訪れた飛雄馬の明日はどうなるのか・・・。
当初は教訓的なセリフが多かったが、最後の方は、教訓的どころか、滅びの美学が全面にでてしまい、少年の役には立たない。同時代の青年には、どう頑張っても体制には勝てないという思いがただよっていた時代には、梶原の滅びの美学は何となくしっくりした。
頑張ればうまくいくというより、どんなに頑張ってもどうにもならないことがある、それでもあきらめずにやり抜くのだというテーマは、とても大切な意味があった。
物語の最後は、言葉は少なくなっていく。川崎のぼるの卓越した画力に物語は支えられていった。
何はともあれ、巨人の星シリーズは終わった。次からは、あしたのジョーにうつる。タイガーマスクは、少し低年齢の子供を対象にしていたので、あまり響くセリフはなく、ひたすらプロレスの話を中心に話が進むので、やめておくことにした。
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