飛雄馬は試合に先立って、病院を受診していた。医者は、前腕の伸筋と屈筋がぼろぼろだと告げる。そして、野球ばかりが人生ではない、すぐにやめろと説得する。
しかし、すでに飛雄馬はただごとではないことは理解し、悲劇的結果は覚悟していた。このまま、野球を続けていても、自分の体格ではプロでは通用しないことはもはや明らかである。それならば、最後の最後には輝いて、前のめりに朽ち果てたいという滅びの美学であった。
医者はいう
「このうえ野球を続ければ、ピシッと音がして・・伸筋と屈筋が切れ、左手の指は永久に動かなくなる」
「ピシッと音がするのですかっ ピシッと音が・・・」
これが有名な破滅の音だ。これを漫画で見たときは、子供心にそんな馬鹿なと思ったものだ。
最近、日本ハムファイターズから野球を引退した新庄選手が引退後、自分の満身創痍な体について語り始めた。メジャーで活躍している時、走塁中に左大腿筋が切れたと言うのだ。部分断裂だったわかだが、ビシッと音がしたと言っていたような気がする。うわー本当だったんだと、あらためて驚いた。