飛雄馬が自分の野球生命を投げていることを、牧場、花形らは知ってしまった。そして、試合中、左門のところに速達が届く。試合前に手紙をだしたのだ。その目的は、大リーグボール3号の秘密を伝えることと同時に、不良少女 京子との愛を成就してほしいという物だった。
「なぜ俺が自己の宣伝がましく、あえて自分の悲劇をうちあけたか?武士道に「諌死」という言葉がある。主君をいさめたい、しかし、封建時代の主従の道として言えん。そこで切腹する。切腹という絶対の滅亡とひきかえに、主君に一世一代の言い分を聞かせる。俺もまた、こんな要求を貴兄にする資格も権利もないが、滅び行く男の必死のたのみとして耳をかたむけてほしい。できるなら京子さんと結ばれてくれっ 彼女を幸福にしてやってくれ。」
「最後に繰り返すが、引っ込み思案をすて、京子さんと幸福になってください。初恋に殉ずるのだから、野球の魔球に殉じた男には、うらやましいかぎり・・・消えゆく男が祈る、ひたすら祈る!」
もはや野球漫画ではない。野球の技術も勝負も関係ない。飛雄馬の滅びの美学に向かって物語は突き進んでいく。