紫苑の惑星

若柳菊のプチ日記や寿菊派若柳流からの日本舞踊公演会のお知らせなどを更新します。

【三社祭】

2004年10月08日 | 演目ガイドブック
【清元 三社祭】本名題「弥生の花浅草祭」
1832年の3月。 江戸中村座初演
善玉 四世坂東三津五郎(現在10代目板東三津五郎) 
悪玉 二世中村芝翫

あらすじ
 
幕が開いた舞台にもう一つの幕(浅黄幕[あさぎまく]浅葱色=みず
いろ)が張ってあり、チョンと云う柝(き)を合図にその幕が一気に
舞台に落とされます。(この演出法を“振り落とし”といいます。)
その浅黄幕が落とされると、船に乗った漁師が後姿でゆれています。
これは祭りの山車(だし)の上についている人形がゆれている様子を
表しています。それから漁師同志の、息の合った踊りの後に二人の
頭上に雲がおりて来ます。

 怪しんだ二人は、

「こんにゃく玉かかね玉か」
(やわらかいものだか、かたいものだか)
「何でも怪しい二つの玉」
(何かわからないけれど怪し気な二つの玉がみえる)
「こいつぁけうだわぇ」
(これは何とも不思議なものだなぁ)

と云ってこの雲を打ち落とそうと櫂(かい)をふり上げ切り
かかりますが、二人に善玉悪玉が取り憑き、善悪の面を付けて、
それぞれを象徴する踊りとなります。

源氏と平家や男と女になぞらえて軽妙でシャレのきいた踊りが続き、
「玉づくし」でさらに踊り狂います。

「早い手玉や品玉の 品よく結ぶ玉だすき
 かけて思いの玉くしげ あけてくやしき玉手箱
 かよう玉鉾 玉松風の もとはざざんざで
 うたえやうたえ うかれ烏のうば玉や
 うややれ やれやれ そうだぞそうだぞ~」

と「玉」を連ねてラップ顔負けのノリの良さ☆

「謡うも舞うも 法の奇特に善玉は
 ※法の奇特=仏法のききめ
 消えて跡なく失せにけり」

で、幕切には元の姿の漁師になり、舟に乗り込み幕が降ります。


「三社祭」は浅草神社の祭礼の事で、三社とは、宮戸川(浅草川、
隅田川の下流)で観世音像を網ですくい上げた士師中臣知と、その
家臣の檜熊浜成、武成の3人を祀っている事から由来しています。
【清元 三社祭】の主人公も浜成、武成の漁師が面白おかしく善悪
を踊り演じます。

美しい衣裳をまとい優雅なイメージの演目が多いなか、簡素な
扮装で跳んだりはねたりする動きの多い【三社祭】は、異色な
作品と言えます。またテンポが早く息を合わせる事や、砕け過ぎ
ないように心掛けるのが難しい演目です。

女性が演じる事は稀なのですが、今回は私も善玉を踊ります