紫苑の惑星

若柳菊のプチ日記や寿菊派若柳流からの日本舞踊公演会のお知らせなどを更新します。

【藤娘】

2004年10月06日 | 演目ガイドブック
12月の博多座公演までに、実際ご覧頂ける全演目を少しずつ解説して
いこう☆
と思っています

今回は、博多座ご案内に使用していた写真の【藤娘】を解説致します。
また少し長くなりますが、お好きな方はどうぞごゆっくりご覧下さい☆


【長唄 藤娘】本外題「歌へす歌へす余波大津絵」
1826年、四世杵屋六三郎作曲の長唄舞踊で五変化舞踊のひとつです。
大津絵の素材である「藤娘」「座頭」「天神」「奴」「船頭」を1人の
役者が踊り分ける趣向で、昔は絵の中から飛び出すような振りになって
いたらしいのですが、現在は1937年の六代目尾上菊五郎演出の舞台
が主流となり、今回の公演会でも、藤の精が娘姿になって現われ、夕暮
の鐘とともに消えていくという舞台をご覧頂きます。

みどころ
 幕が開いても舞台は真っ暗。「若紫に十返りの 花をあらわす 
松の藤波~」という〈地方〉さんの長唄が響きわたる中、チョンと
〈柝〉が入ると舞台は明るくなり、正面に太い幹の松の木、それにから
んだ藤の花々が目にとっても鮮やかです。 その中を、塗笠をかぶり藤
の枝をかついだ美しい娘が、まるで妖精のよう印象の華やかな舞台面で
始まります。

 見せ場の多い藤娘は、可愛らしい印象で小さな子供向きかな?と思われ
ますが、近江八景を詠み込んだ歌詞にあわせて、男心のつれなさを怨んだ
クドキを踊る場などは、近江=逢う身と詠んで恋を語るような気持ちで、
あどけなさだけではなく色っぽさも欲しいところです。

 藤音頭(岡鬼太郎作詞)という音頭に合わせて踊る場面も、酔うしぐさ
に嫉妬心を絡めて演じます。玉三郎さんが、この藤音頭から頬紅を少し
多めに付けていらっしゃった事があり、何とも言えない妖艶な印象が強く
残っています。

 このあと「松を植よなら有馬の里で~」から賑やかな旋律にのせて、
明るく踊りますが、歌詞は結構大胆で「まだ寝が足らぬ」「寝とうござる」
と、とってもストレートな愛情表現☆

最後はお寺の告げる夕暮の鐘を聴いて、藤の枝をかついで幕が下ります。

個人的な解釈だと、藤娘ちゃんは恋人になかなか構ってもらえない悲しい
寂しい恋心を踊っているのかなと思います。

〈用語〉
地方(じかた)
*舞踊において、地の音楽を担当する人の総称。踊手が立方と呼ばれ
それに対して、地は土台とか基本(下地)をさす。

「柝(き)」
*歌舞伎、日舞では舞台進行を柝で行う。

また歌詞を更新しますので、そちらも読みつつイメージトレーニング
をして、ぜひ実際の舞台をご覧頂けたらと思っています