NiU「鳴滝塾」

産官学民が連携して地域課題の解決策を探ろうと
新見公立大学に設置されています

第32回鳴滝塾

2018-08-21 | ☆定期講座
 8月21日(火)午後1時、新見公立大学集合出発で、新見市上市の杠城(ゆずりはじょう=楪城)址に登り、本丸、二の丸、三の丸など(下図=楪城を守る会創立10周年記念誌「史跡・楪城址」所収)、中世の山城を視察研修しました。


 
 地元の「楪城を守る会」のメンバーに案内していただきました。きれいに整備されたつづら折りの登山道を登って、標高490mの本丸へ。

 

            本丸の史跡碑を背に記念撮影

             本丸でしばし休息と歓談
 本丸から二の丸、そして三の丸へ。堀切(ほりきり=敵の侵入を阻むため峰や尾根を切り取った窪み)や石垣がいくつも見られ、難攻不落といわれた要害がしのばれました。

            本丸や二の丸から周囲を俯瞰

              三の丸には井戸の跡が
 三の丸から少し引き返して下山。上りは矢谷から、下りは天叟寺のある小谷へ。楪城址のすべてを踏査し、さらに車で木戸へ行って城址の全貌を眺めました。
 ref. facebook鳴滝塾

第31回鳴滝塾

2018-07-14 | ☆定期講座

 
 【西日本豪雨災害】新見市は7月6日から7日にかけて大雨が降り、行方不明1人、住宅全壊5棟、床上浸水31棟、床下浸水75棟などの被害が発生しました。簡易水道施設が浸水して水の供給ができなくなったカルスト台地では復旧までに早くて1カ月かかるといわれています。また、鉄道はJR伯備線などが不通になり、これも復旧までに1カ月は必要と伝えられています。
 こうした事態を受け、今回の鳴滝塾はいったん中止し、11月以降あらためて企画することとしました。ご理解ください。

第30回鳴滝塾

2018-06-09 | ☆定期講座
 6月9日(土)~10日(日)、広島県庄原市総領町で開かれた第36回「逆手塾」に鳴滝塾として参加しました。
 逆手塾は和田芳治さん(第25回鳴滝塾講師)が主宰し、熊原保さん(第29回鳴滝塾講師)も主要スタッフとして活躍されています。
 今回の逆手塾のテーマは「食べ物 食べ事 拡命」。広島県はもとより、福岡、香川、東京、京都、石川、兵庫、熊本から72人がエントリーし、鳴滝塾からも5人が参加しました。会場の「ふるさとセンター田総(たぶさ)」は廃校を利活用した簡易宿泊・研修施設で、講演や食事は講堂で行われました。
 講堂のステージ隅には有名な「落書きだらけの白いピアノ」があり、遠来者をひときわ歓迎していました(落書きの中には永六輔さんのサインとメッセージもありました)。
 

     落書きだらけの白いピアノ         永六輔さんのサインとメッセージ
 ゲストスピーカーもそろい、メンバー数人がギター伴奏でオリジナル曲を披露。午後1時、熊原さんが「里山をキーワードに、この地に生きる喜びと幸せを実感できるよう、ネバーギブアップで」と開会あいさつ。宮崎文隆事務局長が施設のガイダンスを行いました。
 

   開会を待つゲストスピーカーたち   「ここは地球のど真ん中…」と歌う塾メンバー
 

    開会のあいさつを述べる熊原さん        ガイダンスする宮崎さん
 
 和田さんの長男・和田周大さん(中国地域創造研究センター)の司会進行で、リレー講演が始まりました。
 メインゲストは、「子どもが作る“弁当の日”」を提唱している竹下和男さん(香川県)。竹下さんは、共働き世帯の増加や教員の働き方改革などを背景に午前中だけの「時短」が進んでいる小学校の運動会の原因の一つに「弁当問題」があると指摘。「朝早く起きて弁当を作り、ましてや雨天中止にでもなれば翌日も作らなければならない」というわけです。
 
 講演する竹下さん
 子どもが料理に関心を持ち始めるのは5歳がピーク=下図=で、台所に立ちたがる子どもに「料理を作って食べることが楽しい」と思う心を育てることが大切だと述べられ、映画やドラマになって感動を呼んだ「はなちゃんのみそ汁」(安武信吾著)の紹介もありました。
 

 
 続いて、日本で唯一の動物園用飼料生産販売会社を経営する西窪武・あけみ夫妻(京都府南山城村)が登場し、武さんは「自然環境に応じた食べ物の摂取が大切」と説かれ、「食べ物をエサのように食べている肥満のアメリカ人」と渡米見聞も話されました。あけみさんは4人の子育て体験を語られました。

     子育て体験を語るあけみさん=左=と食べ物とエサの違いを話す武さん
 次に、〝比婆のやまん婆〟〝ひばん婆お富〟の異名がある小林富子さん(庄原市東城町)が登場しました。
 
 講演する小林さん
 比婆郷土料理研究家でワニ料理の達人でもある小林さんは、「大地の恵みを食卓へ」をコンセプトに、知恵と技と経験で農村女性の起業をサポートしてこられた。「女性が頑張る8つの〝かあさん茶屋〟」=下図=の営みを紹介して、「女性の力を表に引き出す積極的な生き方」を、迫力ある「アイ・ラブ・ワニの歌」を交えて提唱されました。
 ワニとは広島県北の方言でサメのことで、広島県北の食文化にサメが登場したのは、海に遠い内陸部の地形に起因している。サメの身体組織には尿素が蓄積されていてサメは体液の浸透圧を調整するために尿素を用いている。そのために腐りにくく、海より遠い三次・庄原地域まで運ぶことができたといわれている。
 

 
 ※この日の夕食交歓会で、小林さんは新見市哲多町蚊家の出身、新見市内には多くの親類縁者があることがわかりました。
 
 さらに、NPO法人「いのちの応援舎」の創設者で助産師の山本文子さん(香川県高松市)が登場し、「食べることは命と同じように大切。食事は命とお乳の素」と力説されました。
 
 講演する山本さん
 締めくくりは、熊本大学名誉教授で(社)トクノスクール・農村研究所理事長の徳野貞雄さん(福岡県北九州市)。「<安くておいしい><安全で安い>を実現するために競争してくれというのはおかしい。<何を食べるか>よりも<誰と食べるか><どう食べるか>だ」などと食の根本を見据えた話を展開されました。
 
 講演する徳野さん
 午後5時、リレー講演が終了。「食べ物 食べ事 拡命」を満喫した4時間でした。夕食交歓会の準備が進められるなか、エコストーブの実演が行われました=写真。夕食に出されるご飯とスイーツピザが作られました。
 

 
 夕食交歓会は、逆手塾名物の〝おじさんフォーク〟でスタート。ずらり並んだ山里料理や各地の地酒を口にして参加者全員がスピーチを行い、鳴滝塾の郷木章コーディネーターも〝鬼サミット〟や〝鬼だらけの里〟などこれまでの営みを話し、来年の逆手塾(6月8日~9日)の新見での開催を確認、会場の別所アウトドアスポーツセンターを紹介しました。
 

 

 
 郷木コーディネーター

 
 一夜が明け、山里の新鮮な空気を吸って朝食。卵かけご飯のおいしいこと。
 参加者全員の「私の想いを聞いてください! 」がスタート。鳴滝塾の公文裕巳代表(新見公立大・短大学長)ら新見勢4人もマイクを持ち、来年の「逆手塾in新見」をアピールしました。
 午前11時過ぎ、佐渡島から駆けつけた藻谷浩介さん(日本総研)は、会場の講堂内を飛び交うツバメのつがいを見て、「これを都会の子どもたちに見せたら、夫婦仲のよさがよく分かる」とひとこと。佐渡市と東京23区の高齢化率と生活保護率を比較して、東京と地方の豊かさを論じられました=写真

 
 昼食は、ふるさとセンター田総から車で約30分のレストラン「コージーガーデン」(社会福祉法人優輝福祉会が運営する障害者就労支援施設)で、藻谷さんと一緒に野菜バイキングをいただきました=写真
 

 




第29回鳴滝塾

2018-05-26 | ☆定期講座

 
 5月26日(土)午後2時から新見公立大学学術交流センターで、「地域共生社会の実現に向けて―看護と保育と介護の統合―」をテーマに講演会とシンポジウムが開かれた。
 講演会の講師は、広島県の庄原市と三次市で福祉施設を多数運営する社会福祉法人・優輝福祉会の理事長・熊原保氏。熊原氏はまちづくりを共に考え実践する「過疎を逆手にとる会」、現在の「逆手塾」の中心スタッフとして、地域機能の統合をめざす「総領地域の明日を考える会」や福祉施設をポンプ役にしたまちづくりのための運営協議会「備北湖域生活活性化協議会」でも活躍している。
 
 講演する熊原保氏
 
 熊原氏は「地域共生社会」を「地域のあらゆる住民がそれぞれ役割を持ち、支え合いながら自分らしく活躍できる地域コミュニティ」などと定義し、地域共生社会を実現するためのスローガンとして、「我が事」(課題を自分の事ととらえて「互助」精神で解決に取り組むシステムの構築)と「丸ごと」(分野ごとに縦割りの仕組みを包括し、困りごとを「丸ごと」共助、協働すること)を掲げた。
 

 
 「地域を良くするかしないかは、相談支援専門員とか民生委員とかの問題じゃないんです。市民全員が相談を受ける、話を聞く人になるというのが〝地域共生社会〟ではないかと思っています。相談を受けて話を聞いて、それを専門家につなげる。いずれにしても聞くということが大事です」と語り、話の聞き方を実技を交えて伝授した。
 

 
 熊原氏のユーモアあふれる軽妙な語り口は、時を忘れさせ、多くの感銘を与えたようだ(下記、アンケート感想文参照)。
 このあと新見公立大・短大の上山和子教授(看護学科)、住本克彦教授(幼児教育学科)、松本百合美准教授(地域福祉学科)をシンポジストに、また熊原氏をアドバイザーとしてシンポジウムを開いた。司会は公文裕巳学長。シンポジストの3人は来年4月の完全四大化を見据えて各学科のプレゼンテーションを行った。
 






 
 <アンケート(感想文)>







第28回鳴滝塾

2018-04-24 | ☆定期講座
 4月24日(火)午後1時30分、新見公立大学本館駐車場集合、出発で、高梁市の「吹屋ふるさと村」を訪れた。ここでゲストハウスを営んでいる移住5年の田川寿一・美菜夫妻から移住生活の話を聞いた=写真
 

 
 雨でしっとりとしたベンガラの町並みを車で通り抜け、ラ・フォーレ吹屋(吹屋中学校跡地に建つ三セクのレストラン・宿泊研修施設)から旧吹屋小学校へ。明治期の校舎を解体修理中の同小学校は、敷地のほぼ全体がビニールシートで覆われていた。平成32年春に資料館として公開される予定だ。
 目的地の「ゲストハウスELEVEN VILLAGE(イレブン ヴィレッジ) 吹屋」は、ふるさと村の通りから吹屋小学校へ続く道を少し上った右手にある。ここはかつて外国人用の宿泊施設「国際交流ヴィラ」で、平成21年に閉鎖されてからは使用されていなかった。昔の醤油蔵を再現した建物は吹屋の町並みと調和していて、地元の人たちは「このまま朽ちさせてしまうのはもったいない」としながらも、だれも手立ては講じ得ないでいた。
 そのとき、大阪から高梁に移住し、吹屋でオーガニックな食堂を営んでいた田川寿一・美菜夫妻が地元民と「吹屋ふるさと村ゲストハウス運営委員会」を立ち上げ、平成27年にクラウドファンディングで250万円余を集めて建物内部を改装、平成28年3月に「ゲストハウスELEVEN VILLAGE 吹屋」をオープンさせた。
 ここは宿泊のみの素泊まりが基本だが、全部屋が個室で、共有のリビングと共同の調理場もある。また、事前に予約すると地産地消の野菜が中心のオーガニックな食事を美菜夫人が作って提供するそうだ。
 田川さんの理想は「人と人のつながりを大切にした自給自足の大きなあったかい〝家族〟」で、ELEVEN VILLAGE はゲストハウスだけにとどまらず、ふるさと村で毎月第二土曜日に「やまのうえのマルシェ(市場)」を開いて、「豊かなモノを求める人と豊かなモノをつくる人―その両者が出逢う場」を提供している。
 「みんなが助け合って家族みたいに過ごす村をつくりたい」と高梁へ移住した当初から様々な人の親切にあずかり、「信頼関係を築く前から当たり前のようにしてもらっている。『これだ』と思った。これから人口が減っていくなかで、田舎の人のつながりのあったかさを都会の人に伝えて呼び込みたい」などと熱く語った。

第27回鳴滝塾

2018-03-24 | ☆定期講座

 
 3月24日(土)午後2時から第27回鳴滝塾が、新見公立大学内の市学術交流センターで開かれた。㈲建築デザイン建匠(東京都)の浪崎文彰代表取締役(一級建築士)が「石灰(ライム)による新しいアート“ライムアート”の魅力」と題して講演した=写真
 また、平成29年度総会も開かれ、郷木章コーディネーターが1年間の事業を報告、公文裕巳代表が平成30年度の方針を示した。
 

 
 浪崎氏はまず「自然と共生する暮らし」について、これまで手がけた建築物を紹介。次いでライムアートポケットガーデン=写真=や珪藻土ポケットガーデンなど「暮らしを彩る小物たち」を紹介した。そして「ライムアート作品と制作工程」について述べた。
 
 
 

 
 ライムアート作品を幾つか紹介すると、
 




 
 浪崎氏は「今後は、絵画としてだけでなく、先鋭の左官職人らが技術を習得することによって、アトリエ製作でパネル状に仕上げたライムアートを漆喰(しっくい)などの壁面に組み入れ、一体化することを目指していきたい」と語った。
 この後、新見公立大学の岡本直行准教授が「石灰のもつアートの力」について話した。

第26回鳴滝塾

2018-02-23 | ☆定期講座

 
 2月23日(金)午後6時から第26回鳴滝塾が、新見市西方公民館(西方ふれあいセンター)で開かれた。今回のテーマは「学生による地域貢献活動」で、新見公立短期大学幼児教育学科の八尋ゼミ所属の2年生(37期生)が1年間の活動報告を行った=写真
 

 
 学生は「新見公立大学・短期大学には、私たちのように子どもや親を支援することを学ぶ幼児教育学科の他、患者さんを支援することを学ぶ看護学科と、お年寄りを支えることを学ぶ地域福祉学科があります。どの学科も“人に寄り添う”ことが根底にあって、授業や実習で学ぶ知識や技術は、この“人に寄り添う”という根本的な考え方の上に積み上げていくものだと学びました。私たち八尋ゼミは、その根本的なことの意味を肌で感じ、身につけられるような体験をしていくことをゼミ活動の方針としています」と活動の意義を述べた。
 新見ロータリークラブ主催の「親子たこあげ大会」、新見市市民環境会議主催の「キャンドルナイト」、福祉施設や地域での「納涼祭」、わくわく産業ランド2017での「にいみダムカレーブース」などへのボランティア参加したことによって、「新見市内外の親子と触れ合い、障がい者支援施設で暮らす人たちとの接点を持ったことは、貴重な経験となりました」などと語り、浴衣を着たことや打ち上げ花火を見たことで「思い出に残るボランティア活動となりました」などと喜びを話した。
 また、ボランティア以外にも、地域の人たちとの繋がりを深めるために、新見ふるさと塾21の定例会へ出席、備前焼の陶芸体験、新見もみじフェスタで雑貨屋模擬店を出店などを行い、「自分たちから地域に出ていき,住民の方々と積極的に接点を持つようになると、地域住民の方々から大変良くしていただく機会が自然と増えていき、自分たちがとても大切に扱っていただいていると感じるようになりました」と語った。
 八尋ゼミは哲多町萬歳地区との繋がりが深く、中山八幡神社夏祭りで駄菓子屋模擬店を出店、秋の萬歳ふれあい大運動会では競技や運営に加わり、中山八幡神社の秋祭りへボランティア参加、萬歳小学校の学習発表会を見学、矢戸の蛇神楽御戸(みと)開きを鑑賞、1月のとんど祭りへの参加などによって、「私たちは萬歳地区に特別な愛着を持つようになっていきました」と述べた。そして、「社会を構成する様々な人々を包み込み支え合う(ソーシャル・インクルージョン)」という理念を認識し、多くの人たちと理念を共有できるようなイベントを企画し、運営したいと思うようになり、2月に萬歳ゆめ広場で大人も子どもも楽しめるイベントを開いた。住民や各種団体の協力で科学実験、ネームプレート作り、書道体験、手鏡作り、クラフト、ボードゲームなどのブースを設け、昼にはダムカレーも提供した。大勢の参加があり、子どもたちから「新しく友達ができた」「いろいろなお店や人がいると思った」という声を聞くことができ、「イベントの目標である『ソーシャル・インクルージョン』の実現に向けて少しだけ前進した感じです」と話した。
 「私たちはまもなく新見を離れ、この4月から様々な場所で新しい生活を送ります。しかし、正直な気持ちを言うと、私たちは新見を離れたくありません。せっかく知り合った人たちと、もっともっと話をしたかったです。せめてあと1年あれば、これまで繋がってきた人たちとさらに交流ができたと思いますし、まだまだ知らない新見のことを知っていけるのにと、とても残念です。
 私たちはこの1年で、新見市のたくさんの人たちと出会い、たくさんの人たちに支えられてきました。そして、萬歳という大切な場所もできました。1年前までは『何もないつまらない町だ』と思っていた新見が大好きになりました。だから、私たちはまた必ず新見に戻ってきて、自分たちが歩いた場所や、出会った人たちと再会したいと思っています。
 この1年で出会った新見の人たちが私たちを笑顔にしてくださったように、これからは私たちが、それぞれの場所で出会っていく人たちを笑顔にしていけるよう、頑張っていきたいと思います」と語った。

 この後、ゲストの哲多町萬歳地区住民代表の羽場昭正さんと萬歳小学校の名越浩子教頭がそれぞれ感想を述べた=写真
 

 
 また、報告会に先立ち、被災地支援の駄菓子屋模擬店も開かれた=写真
 


第25回鳴滝塾

2018-01-20 | ☆定期講座

 
 1月20日(土)午後2時から第25回鳴滝塾が、新見公立大学内の市学術交流センターで開かれた。講師は逆手塾会長の和田芳治さん=広島県庄原市・元総領町教育長。和田さんは「里山人間主義~人間が大きくみえる地域づくり」と題して講演を行い=写真、このあと新見市内の集落代表者2人をシンポジストに迎え、和田さんをアドバイザーに過疎地域のコミュニティをめぐってシンポジウムを行った。
 

 
 〽打てば響く 君がいてさ
  話に花咲く この宴
 
 〽まちは舞台さ 主役は君さ
  スポットライトは お天道様
 
 〽丸い地球の ど真ん中は
  君が住んでる このまちさ
 
 〽ナイモノネダリを やめたら見える
  君とまちの オンリーワン
 
 〽有るもの探して 知恵と技と
  汗で咲かそう まちの華
 
 〽自然にゃいいも 悪いもないさ
  活かすも殺すも 君しだい
 
 〽名所名物は 名人が創る
  何はなくても 君がいる
 
 〽花を華に するのは君さ
  君が咲かせる 汗の華
   
 和田さんは冒頭、上記「まちづくり理論歌」(原作・岡田京子、変え詩・和田芳治)を参加者の手拍子で一緒に歌った。
 「〝主流の物差し〟に合わせていたら、いいことにならない」と述べ、経済至上主義を批判。「カネよりも大切なものがある」と〝人間関係〟を強調。「いい人間関係は〝打てば響くような人〟、物々交換ができるような人」と話し、自作の落書きカボチャや木製ペンダントを紹介。『里山資本主義』(藻谷浩介、NHK広島取材班・角川新書)で取り上げられたエコストーブも解説された。総領町役場で社会教育に携わるようになり、レクリエーションを通じて身につけた〝遊び半分〟というまちづくりの手法が、35年前、「過疎を逆手にとる会」の立ち上げにつながった。
 「新見でも過疎を逆手にとる会を開き、〝鬼サミット〟をやった。〝鬼だらけの里〟を謳い、高梁川の護岸に鬼の陶壁ができたり、当時のJCの人たちはすごかった」
 「ナイモノネダリをしたらダメ。あるものを探して、それを人間の知恵と技と汗で〝宝〟にするのがまちづくり。一番の〝宝〟は、知恵と技と汗を流すこと」
 「努力に努力を重ねて古里を捨てさせる教育をやった結果が〝過疎〟。いい大学へ行っていい会社に入ってというのは、東京へ行けということ。社会教育やまちづくりを担当して、ずっとやってきたのは〝ふるさと教育〟、古里で命輝かす教育。誇るものが何もない総領町でも、昔から人が生きてきている。人間が頑張っている」
 「過疎になったのは行政が悪い、国の政策が悪かったというのは分かる。でも、それを言ってみても始まらない。あなたにできること私にできること、私は里人(さともり)-里山で暮らす達人-になろうと、里川復活をやっています。江の川流域を再生していこう。自分の周りの川は、自分たちできれいにする。自分でできることは自分でする」
 「都会で定年を迎えた元田舎暮らしの人たちを二番手の里人にしたらどうでしょうか。田舎に帰ってきたら生活費は安く、役もすぐ手に入る。社会に役立つ〝志民〟になれる」
 「三番手の里人は、使い捨てのカネの奴隷はもういい、田舎に行って気楽に生きたい、自分の人生は自分で生きたいという人。田舎で困ったことを解決すれば仕事になる。起業になる。逆境をバネにして輝いていると、まさに〝感動商法〟。それを若者たちが来てやってくれるとかなりよくなる」
 ……和田さんは迫力ある口調で、体験を散りばめながら語りかけ、最後、総領町に自生しているセツブンソウにちなんだ「節分草」(詞・和田芳治、曲・竹川尚子)を歌った。

 シンポジウムは、大井野地域振興福祉協議会の高下瀧昇会長と三室観光組合の松浦清一組合長をシンポジスト、和田さんをアドバイザーに、公文裕巳代表(学長)の進行で行われた=写真
 

 
 プレゼンテーションで、高下さんは「大井野集落はヒメノモチの製造販売を中心にやっているが、平均年齢70.7歳、高齢化率69.5%。限界集落から崩壊集落になるのかなと心配している。しかし、空気はおいしいし水もきれい。元気で長生きができる。移住定住を受け入れていきたい」と述べ、松浦さんは「三室は人口72人、世帯数27。春はシャクナゲ、秋は紅葉という自然の美しさを見に来られる観光客が増えている。シャクナゲまつり、紅葉まつりを催してもてなしているが、携わるスタッフが足りない。今後どうやっていくか考えていかなければと思っている」と話した。
 これらに対し、和田さんは「(生産・加工・販売の)六次産業だけではうまくいかない。どんなに厳しい場所であろうと人に来てもらうことができる〝ロマンアップ作戦〟(感動商法)が必要。感動のドラマをつくるのは逆境で、本当に困ったということを見つけて、それをひっくり返してみせるというドラマづくりがいるんじゃないか。一番大切なのはIターンじゃなくてUターン。子や孫を帰してくる必要がある。それと、田舎の場合は変わった人間を嫌うが、変人といわれるような人を連れ込んで、それをヨイショする体制をとる必要がある。逆境をひっくり返すには、人間の元気がいる。元気すぎる年寄りは嫌われている場合が多い。しかし、嫌われている人を伸ばすシステムをつくらない限り、いいことにならんのじゃないか。一気にできることじゃない。自分ができることから始めればいい」などとアドバイスした。
 
 (参考資料)


第24回鳴滝塾

2018-01-11 | ☆定期講座
 1月11日(木)午前10時、新見公立大学集合・出発で、新見市神郷油野の三室地域を訪問。新雪がまばゆい三室総合案内所で、三室観光組合の松浦清一組合長から三室地域の現状やシャクナゲまつり、紅葉まつりなど観光への取り組みを聞いた=写真
 また、哲多町花木からの参加者は、春の野草観察、秋のモミジ植樹などで市内外から人を呼び込み、一口500円で会員を募って年4回新聞を発送、地域のようすを知らせていると話した。
 

 
 岡山市から参加した「ふるさと新見会」の二人は、シャクナゲやモミジの季節とは違った墨絵のような三室峡の雪景色=写真=に見とれていた。
 


第23回鳴滝塾

2017-11-25 | ☆定期講座

 
 第23回鳴滝塾が11月25日(土)午後2時から新見公立大学内の学術交流センターで、講師に国立長寿医療センター(愛知県)の大島伸一名誉総長を招いて開かれた。テーマは「これからの医療・介護・福祉と地域共生社会」で、大島先生の講演=写真=とシンポジウムが行われた。一般塾生や学生など約120人が熱心に耳を傾けた。

 
 大島先生は「本当に深刻なのはこれから40年、50年先。私たち高齢者は、これまで築き上げてきたものを使い尽くして死んでいく。20代~40代の人達が高齢者になる40年50年先には、何も残っていないだろう」と前置きし、
 「日本は1950年に高齢化率が5%だったが、高齢化が急速に進んで今では世界一の高齢化社会となった。超高齢化社会は急速に進んで2060年ごろまで続き、本当に深刻な事態は現在の40~50歳代の人達が高齢者になる20~30年後から始まる。
 高齢者を貴重な資産、資源とし、人生90歳代の人生設計を国民の責任として考えていき、無いものをねだるのではなく、今ある資源を有効に利用することを考えていき、それを次世代、次々世代につないでいく。その意識改革こそが、これからのまちづくり、地域づくりの最も重要な課題になっている」などと語った。
 最後に「日本が迎えているのは危機ではなく変化である。この変化を危機的状況にするかしないかは、20~40年後に高齢社会の当事者になる若者しだいである」とメッセージを送った。

 シンポジウムは大島先生をアドバイザーに、岡山県医療推進課の則安俊昭課長と渡辺病院の溝尾妙子外科医をシンポジストに、公文裕巳代表(学長)の司会で進められた。
 則安課長は「健康長寿のために大切なのは「Quality of Life(生活・人生の質)×時間」で、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される「地域包括ケアシステム」などについて話した。

 
           地域包括ケアシステムについて語る則安課長
 
 また、溝尾外科医は「新見の医療を守るために医療人が地域を守るのは当然で、そのためには信頼される医療機関として、安心安全な医療を提供し、医療体制の充実を図る努力をし続ける必要がある。
 そして、地域全体で医療を守るためには、医療機関、介護、在宅医療、高次医療機関、新見市、住民との連携が大切で、地域全体での次世代人材の育成(新見公立大学の学生や医学生の育成、地域の医療人の生涯学習など)も必要になる。人材育成は人材確保にもつながり、働きやすい環境、地元出身者へのアピール、そして情報発信などが不可欠で、住民同士の支え合う〝地域共生社会〟が求められている」などと述べた。

 
           医療と地域共生社会について話す溝尾医師